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『カオスノイズ:東京拠点化計画~拠点を東京に移し、自分を殺せる勇者の育成に励むことにしました~』  作者: 猫寿司
第11章 エゴだよそれは

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第五話:焦土の隠蔽、勇者たちの証拠隠滅

荒れ果てた戦場の中心で、ユウサク一行は魂が抜けたような顔で立ち尽くしていた。

 視線の先にあるのは、地平線の彼方まで続く巨大な抉れ跡と、赤々と燃え盛る森、そして「ぺっちゃんこ」になったかつての英雄の愛機だった。


ユウサク:「あー……あ……あー……」


ネネ:「……やっちゃったわね。これ、完全にやっちゃったわね」


 ユウサクは震える指先で、地形が変わってしまった大地を指差した。


ユウサク:「この惨状、どうするんだよ……。もはや、僕らが『魔王軍』じゃないか。森は燃えてるし、地面はえぐれているし……これ、地球の形が変わっちゃったんじゃないか……?」


マカロニ:「ああ、そうですねぇ。間違いなく地軸が数ミリはズレた感覚がありますぅ……」


 遠くからは、里の鐘がけたたましく鳴り響く音が聞こえてくる。空を焦がす煙に気づいた里の住人たちが、大騒ぎでこちらへ向かってきているようだった。


ユウサク:「あー……困った。村が大騒ぎだ。ほら、ネネ! 消火活動して! 雨を降らせて、今すぐに!」


ネネ:「わ、分かったわよ! ――天に漂う水の精霊よ、慈悲の涙をもってこの焔を鎮めなさい! 『大豪雨グレイト・レインスターム』!!」


 ネネが死に物狂いで放った広域魔法により、上空に巨大な雨雲が形成され、滝のような雨が降り注ぎ始めた。これで火災の延焼は食い止められそうだが、それでも破壊の爪痕は隠しようがない。


ユウサク:「ヴァレリア! お前はその……ホワイトグレイブを綺麗に洗って、ガレージに戻して! 誰が見ても、僕たちがやったと思えないくらい元通りにするんだよ! ほら、急いで!」


ヴァレリア:「……承知した。……」


 ヴァレリアはドラゴンの力が抜けて虚脱気味ながらも、ひしゃげたホワイトグレイブを軽々と肩に担ぎ上げた。彼女はコクピットの隙間にへばりついた「元ショウゴだった肉」を、手近な雑草で必死にこそぎ落とし、雨水で洗い流しながらガレージへと運んでいく。


ユウサク:「マカロニ! お前は隠蔽工作だ! 魔法の痕跡とか、僕たちの足跡とか、ありとあらゆる形跡を消して! お前の『化かし』の見せ所だぞ!」


マカロニ:「お任せくださいぃ……. こういう後ろ暗い仕事こそ、忍びの本領発揮ですぅ……。幻覚と偽装の重ねがけで、ここには最初から何もなかったことにしてみせますよぉ」


 マカロニは泥をこね、お札をばら撒きながら、地形の抉れ跡を「ただの少し深い溝」に見せるための大規模な認識阻害魔法を展開し始めた。


ガレージの反省会


 数時間後、一行はガレージの奥に身を潜めていた。

 外では「突然の豪雨で山火事が消えた!」「奇跡だ!」と喜ぶ里の人々の声が遠くに聞こえる。

 そんな中、マカロニだけは鼻歌まじりに、ヴァレリアが運び込んだ「ぺっちゃんこのホワイトグレイブ」を丁寧に、かつ迅速に分解していた。


 その横で、重苦しい沈黙に耐えかねたユウサクが口を開く。


ユウサク:「……なあ。どうしてこうなったんだ。ただ里に来て、修行するはずだっただろ?」


ネネ:「知らないわよ! あいつが……あのショウゴって男が、本気で殺そうとしてきたんじゃない! 正当防衛よ、正当防衛!」


ヴァレリア:「……私なんて……私なんて……剣を、切られてしまったんだぞ……!!」


 ヴァレリアは、飴細工のように無惨に溶け落ちたドラゴンスレイヤーの残骸を抱きしめ、子供のように泣き崩れた。


ヴァレリア:「修行の日々も、血の滲むような努力も……あんな光の刃一本で、すべて台無しだ……! 私の、私の鉄塊がぁぁぁ!!」


 彼女の絶叫がガレージに空虚に響く中、マカロニはホワイトグレイブの残骸から使えるパーツを仕分けながら、不気味な鼻歌を歌い続けていた。


マカロニ:「きかーい……まりょくー……ピンクのおみせー……. えろえろで気分リフレッシュ、たのしいなー♪」


 マカロニは突如として、何かに取り憑かれたようにパッと顔を上げた。


マカロニ:「――はっ! 決めました。この村、買っちゃいますぅ!!」


ユウサク:「は!? 何言ってるんだお前!」


マカロニ:「この旧時代の機械技術と、ピンクな社交文化の融合……これこそが隠れ里に足りなかった『癒やし』のフロンティアですぅ!」


 マカロニは懐から新しいお札を取り出すと、何やら怪しげな命令をサラサラと書き込み、宙に投げた。お札は空中でパタパタと形を変え、一羽の鳥へと姿を変えると、夕闇に紛れて「コードガクレ」の方角へと消えていった。


マカロニ:「ふふふ……資金調達と買収工作の開始ですぅ。さよならショウゴ様、あなたの遺志(利権)は、私が美味しく再利用してあげますよぉ……」


 ぺっちゃんこの機械の横で、救いようのないタヌキの野望が、ショウゴの肉の臭いと共にガレージの中に充満していた。


翌朝:タヌキの夜明けと影の支配者


 ガレージの冷たい床の上で、ユウサク一行は不安な夜を明かした。

 翌朝、差し込む朝日で目を覚ました彼らが、恐る恐るガレージの重い扉を開けると、そこには昨日とは全く異なる、異様な光景が広がっていた。


 ガレージを開けると、そこには里のタヌキたちが溢れかえっていた。

 道にも、屋根の上にも、広場にも。昨晩マカロニが飛ばした鳥に応じ、コードガクレから送り込まれた無数のタヌキたちが、里の隅々を音もなく占拠していたのである。


 里の中心では、元の指導者がうつろな表情で壇上に立っていた。しかし、そのすぐ背後、長い影の中に立っていたのは――隠れ里のタヌキ、マカロニであった。


 マカロニは直接表舞台には立たず、指導者の背後から操り糸を引く「影の支配者」として君臨していた。指導者はマカロニの微かな合図に従い、生気のない声でタヌキたちの支配を受け入れる宣言を繰り返している。


 その様子を見た里の住人たちは、逆らう術もなく一斉にその場に平伏し、深く頭を下げていた。昨日までショウゴの下で華やかに働いていた者たちも、今はただタヌキの軍勢が支配する静寂の中で震えている。


ユウサク:「……おい、一晩で完全に傀儡化されてるじゃないか」


 ユウサクの呆然とした呟きなど届かぬ位置で、マカロニは指導者の背後に隠れるように立ちながら、朝日に目を細めて「ふふふ」と満足げに微笑んでいた。

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