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『カオスノイズ:東京拠点化計画~拠点を東京に移し、自分を殺せる勇者の育成に励むことにしました~』  作者: 猫寿司
第11章 エゴだよそれは

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第六話:泥濘の行軍、超振動の重圧

勇者の里をタヌキの支配下に置き、ショウゴという「肉のへばりついた遺物」を整理したユウサク一行は、次なる目的地を求めて広大な沼地へと足を踏み入れていた。


「……最悪。これ、一歩進むたびに靴が脱げそうなんだけど」


 ネネが泥だらけのローブの裾をまくり上げ、不快そうに顔をしかめる。沼地はどこまでも深く、湿った熱気と腐敗した草木の匂いが立ち込めていた。


ユウサク:「まあ、隠蔽工作が終わっただけマシだろ。里にいたら、いつ『ショウゴの肉片』が発見されるかヒヤヒヤして生きた心地がしなかったよ」


 ユウサクは泥に足を取られながらも、隣を歩くヴァレリアを見た。彼女は今、背中にこれまでの「鉄塊」ではなく、一本の奇妙な金属の「筒」を背負っている。

 ずぶり、とヴァレリアが泥を踏みしめるたび、他の三人とは明らかに異なる、地響きのような重い音が沼地に響いていた。


ネネ:「……ねえヴァレリア。あんた、さっきからよくそんな涼しい顔で歩けるわね。その筒、相当重いんでしょう?」


 ネネの言葉に、ユウサクの脳裏には出発前、ガレージの片隅で繰り広げられたマカロニとヴァレリアの不毛なやり取りが、鮮明な回想として蘇ってきた。


回想:矛盾する重さ、技術者の苦悩


 それは、マカロニがホワイトグレイブの残骸を分解し、そのビーム発生装置を強引に小型化して組み上げた代物――『ヒートサーベル・プロトタイプ』を披露した時のことだった。


 マカロニが誇らしげにスイッチを入れると、重厚な低周波の振動音と共に、筒の先から眩いばかりの光の刃が伸び、目の前の鉄材を飴のように切り裂いた。ユウサクが「映画で見たあれだ」と興奮する傍らで、しかし、ヴァレリアは満足した顔をするどころか、不服そうに眉を寄せた。


ヴァレリア:「……マカロニ。これは『軽すぎる』」


マカロニ:「えええっ!? 何を言ってるんですか! 質量のない光の刃なんですから、軽くて当然ですよぉ!」


ヴァレリア:「軽すぎる剣は、私の筋肉に対する冒涜だ。振っている実感が湧かん。もっとこう、肉体を苛め抜くような……絶望的な『重み』が欲しい」


 技術的に見れば、光の刃に重さを持たせるなど不条理の極みであった。だが、ヴァレリアの「重くないと修行にならない」という理不尽な要求に屈したマカロニは、半狂乱になりながら徹夜でその筒に「重力操作チップ」と「超高密度合金」をこれでもかと詰め込んだのである。


マカロニ:「……もう、意味不明ですよぉ。全長二メートル、総重量二百キロ。しかもこれ、常時発動型にしてありますから、持っているだけで常に二百キロの負荷がかかりますぅ。技術的にどれだけ大変だったか分かりますかぁ!?」


 マカロニが探目で訴えたそのスペックを聞いて、ヴァレリアは初めて口角を上げた。


ヴァレリア:「ほう、二百キロか。……悪くない。腕にズシリとくるこの不自由さ……これこそが真理だ」


泥濘の行軍、そして夜の訪問者


 回想から現実に戻ると、ヴァレリアは二百キロの質量を伴った「光の刃」の筒を肩に担ぎ、悦びに満ちた表情で泥濘を突き進んでいた。


ユウサク:「……改めて見ると、剥き出しの光の刃が二百キロの重さで移動してるとか、危なすぎて近寄れないんだけど」


ネネ:「本当よ。一歩間違えたら地面ごと私たちも消滅しそうじゃない……」


 あまりの危険性に、マカロニは「切らない時は出力を抑える安全装置」を搭載することでなんとか妥協させたが、それでもその重量と隠された熱量は、周囲の泥水をじわじわと蒸発させていた。


 問題は、夜だった。

 どこまで行っても深い泥。腰を下ろせる乾いた地面など一箇所もなく、とてもではないがビバーク(野営)などできる状況ではない。


ユウサク:「あー……もう足が限界だ。この泥沼、一体どこまで続くんだよ……」


 絶望的な闇が沼地を包み込む中、ふと、前方にぼんやりとした光が見えた。

 ひとつ、ふたつ。光は次第に増えていき、ゆらゆらと不気味に揺れながら一行へと近づいてくる。


マカロニ:「……何かいますねぇ。マズいですよ、これは」


 ユウサクが意を決して明かりを灯すと、そこには恐るべき異形の姿が浮かび上がった。

 頑丈な鱗に覆われた巨躯、突き出した鋭い顎。それは、この沼地の真の主――「ワニ男」の群れであった。


「……ッ、構えろ!!」


 ヴァレリアが二百キロの「筒」を抜き放ち、臨戦態勢を整える。マカロニとお札を構え、ネネが魔力を練り上げたその時、群れの中心にいた一際巨大なワニ男が、地響きのような声で口を開いた。


ワニ男:「……勝手に人の店に入ってきては、ダメじゃないか。礼儀を知らんのか、貴様ら」


 殺気立つ一行に対し、ワニ男は意外にも理知的な、しかし底冷えするような言葉を投げかけた。

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