第三話:釈放、そして秘密のガレージ
勇者の里の衛兵所。その一角にある留置所の冷たい床の上で、ユウサクは膝を抱えて丸まっていた。
兵士:「おい、もう出ていいぞ。反省したか?」
鉄格子の向こうから、兵士が呆れたように声をかける。傍らには、ショウゴの店から回収されたユウサクのズボンが置かれていた。
兵士:「いいか、二度とあんな裸で里を歩くんじゃないぞ。もう誰にも迷惑かけるなよ」
ユウサク:「……もうおしり、襲われたくない……怖い。外、出たくない。僕のおしりが……」
ユウサクは完全に心を折られ、ガタガタと震えながら独房の隅へとさらに縮こまった。社会的な死と、背後から迫る「裏オプション」の恐怖という二重の傷跡は、魔王の呪いよりも残酷に彼の精神を蝕んでいた。
マカロニの慈悲と、謎の優しさ
留置場の隅っこで、頑なに牢獄から出ようとしないユウサクの無様な姿を見て、ネネは短く「ふん」と鼻を鳴らした。
ネネ:「ふっ……いつまでそこにいるつもりよ」
ヴァレリアも、鉄格子の向こうから静かに促す。
ヴァレリア:「はやく出てこい。そんなところにいないで、修行に戻るぞ」
二人が呆れたように見守る中、マカロニがひょいと前に躍り出た。その手には、どこからか調達してきた、ほかほかのおまんじゅうが握られている。
マカロニ:「ユウサク様、もう大丈夫ですよー。怖くないですよー。ほら、おまんじゅう持ってきましたよー」
いつになく優しいマカロニの声。マカロニは、開いた鉄格子の扉から躊躇なく独房の中へと入り込むと、隅で震えるユウサクの隣に腰を下ろした。そして、その頭を優しく、ゆっくりとなで始める。
ユウサク:「……マカロニ……怖くない……?」
マカロニ:「怖くない、怖くないですよぉ。さあ、一緒に帰りましょう?」
マカロニに「よしよし」と頭を撫でられながら、ユウサクは少しずつ心を開き、導かれるようにして独房から這い出してきた。マカロニに甘え、よしよしされながら、ようやく衛兵所をあとにする。
マカロニ:「これから、元勇者さんのお話が聞けますよー。みなさんで行きましょうねー」
なぜか急に聖母のように優しくなったマカロニに、ネネとヴァレリアは顔を見合わせたが、とりあえずユウサクが外に出たことに安堵し、彼女の後に続いた。
秘密のガレージと巨大な影
一行が案内されたのは、里の端にある古びた巨大なガレージだった。
埃っぽい空気の中に、オイルの匂いが重く立ち込めている。その中に、金髪の青い目をしたハンサムな男――ショウゴの姿があった。
ユウサク:「……っ、お、お前らぁぁ――――っ!!」
ガレージの奥に、あのピンク色の店主・ショウゴが待ち構えているのを見た瞬間、ユウサクの声が裏返った。
ユウサク:「だましたなああああ! よくも僕のズボンをぉ、僕のプライドをぉおおお!!」
ショウゴ:「昨日は帰っちゃうんだもの、とても寂しかったわ。今日は特別に、私が魔王と戦っていた時使っていた愛機を見せちゃおうと思って ♡」
彼はそう言って、軽やかにウインクを決めた。そのまま彼が巨大なレバーを引くと、ガシャリ、と重厚な機械音が鳴り響き、背後の頑丈な鉄の隔壁が、鈍い音を立ててゆっくりと左右に分かれていった。
ショウゴ:「おだまりなさい。あなたたちをここへ呼んだのは、私の本当の『力』を見せるためよ」
そこに立っていたのは、ユウサクたちの常識を遥かに超越した巨大な鉄の塊だった。
ネネ:「……な、何よこれ。ゴーレム……じゃないわよね?」
それは、全高三メートルを超える、純然たる機械製の人型兵器であった。
科学の粋を集めて造られた遺物であり、魔法とは一切関係がない。
現在はメンテナンス中のようで、外部の装甲パーツ(側)が左右に展開され、複雑に絡み合うケーブルや油圧シリンダー、電子的な精密演算回路、そして人が入り込むための内部コクピットが剥き出しになっていた。
かつてショウゴがこれに乗り込み、魔王軍を圧倒した最強の「旧時代の機械」――その名は、ホワイトグレイブ。剥き出しの内部機構を晒しながらも、魔法を超越した冷徹な機能美と圧倒的な威圧感を放っていた。




