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『カオスノイズ:東京拠点化計画~拠点を東京に移し、自分を殺せる勇者の育成に励むことにしました~』  作者: 猫寿司
第10章 欲望の守護天使

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第九話:ガマの里、種族の境界線

トカゲ族の切実な願いに応じ、一行が降り立ったのは、敵の本拠地「ガマの里」であった。

 辺りには粘つく霧が立ち込め、巨大な両生類たちの不気味な鳴き声が響き渡る。


 その異様な光景を前に、ユウサク一行は言いようのない「種」としての壁を感じていた。


「……ヴァレリアさん、これって本当に『勇者の務め』なんですかね?」

 ユウサクは、巨大なガマたちが蠢く里の深部を見つめ、虚しそうに呟いた。


「これ、もう生存本能からして僕ら哺乳類とは全然違うんじゃないですか。卵を産むだの、苗床にするだの……」


「住む世界もことわりも違いすぎる。だとすれば、僕たちがこれ以上肩入れする意味なんて、ないんじゃないかな……」


 その言葉に、ボロ雑巾のようになりながらも一行に付き従っていたトカゲのリーダーが、必死の形相で縋り付いた。


「そ、そんなこと言わないでください……! 繁殖できないなら、我々は生きる意味を失うのです! 卵を繋ぐことこそが、我々の世界のすべてなのです!」


 だが、その悲痛な叫びを遮ったのは、ヴァレリアから放たれた、人のものとは思えぬ低く冷徹な声だった。


「……意味など、どうでもいい」


 ヴァレリアが振り返る。

 その肌はいまだに「補給」による妖しい艶を放ち、手にする大剣からは黒い思念がどろりと溢れ出していた。


「争いが、私を求めるのだ。もはや理屈ではない。そこに戦場があるならば、私はただ往き、蹂躙する。それだけだ」


 戦うためだけに存在する獣のようなその言葉に、ユウサクはあっけにとられ、背筋に寒いものを感じた。


「……ヴァレリアさん……」


 これ以上、この狂戦士を野放しにはできない。ユウサクは隣のネネに視線を送った。


「ユウサク……ネネ、なんとかしてくれ!」


「ええ、そうね……。少し休んでもらいましょうか」


 ネネが指先で魔法を編み、短い呪文を唱える。


 ――ドサリ。


 凄まじい闘気を放っていたヴァレリアが、糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。


「ZZZZ……」


 地面を揺らすような寝息を立て始めるヴァレリア。

 狂戦士の思念ごと、深い眠りに落とされたようだった。


「……ああ、やっぱり最初から荷車を用意しておけばよかった……」


 動かなくなった「鋼鉄の肉塊」を見下ろし、ユウサクは後の祭りの後悔に肩を落とした。


妥協の解決と撤収


 里の奥からは、トカゲとカエルの特徴が入り混じった不気味なハーフたちが這い出し、一行を物珍しそうに眺めている。


 ユウサクは溜息を吐きながら、ガマ族に掛け合って荷車と牽引役の牛を買い取った。

 そして、意識を失ったままのヴァレリアとあの大剣を、数人がかりで無理やり荷台へと積み込んだ。


 出発の際、ユウサクはまだ呆然としているトカゲに向き直った。


「いいか。もう無理やり襲うなんて不毛な真似はやめろ」


「ちゃんと話し合って、産まれた卵に『かけて』させてもらえ。それが一番平和的な解決法だぞ」


 ユウサクはそれだけ言い残すと、ドナドナと揺られる荷車と共に、生物的な困惑を残したままの里をあとにするのであった。


オアシスへの一時帰還


 一行は、里をあとにすると再びオアシスへと向かった。


 そこで一行は、オアシスの退廃的な様子を再度目にすることになった。

 ネネはマカロニにその有様をわざと見せつけ、「おまえ、よく街を観察して反省しろ」と厳しく言っていた。

 マカロニはいたたまれなさそうに縮こまるしかなかった。


 オアシスがあるドワーフ族の村に一時的にまいもどったのは、他でもない、剣の黒い呪いの相談だった。


 ユウサクは「大剣を捨てようか」とみんなで相談したが、ヴァレリアが剣を失ったときの反動をかんがえると、捨てることもできなかった。


 一行は名工ゴロの元を訪れ、剣を改めて鑑定してもらうことにした。


 ゴロは神妙な面持ちで剣を見つめると、こう切り出した。


「……黒いのを追い出す? そんなことしたら著作け……じゃなくて、追い出された黒いなにかが、やっと住まいをみつけたのに、きっとあばれるぞ」


「使用者をのろいころすかもしれない」


 その言葉に、マカロニが自信ありげに答える。


「のろいはまかせて。化かしのプロとして、その黒いのとやらを上手く手懐けてみせますよぉ」

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