7-3
そこから小野は鈴木の方に視線を変えた。
「鈴木さん、あなたがこの子を連れ去って来たんですね?」
「…」
「その時この子は誰かに連れられていませんでしたか?」
「…」
小野の問いかけに鈴木は答えない。小野は反応を返さない鈴木に一つため息を吐くと構わずに話始めた。
「奇妙な駅に降りたんでしょう?少し怖くはなかったですかね?僕はあの雰囲気少し苦手なんですよね」
「…」
「あれはまあ、世界と世界の境界って思って下さい。そんな所にね、一人閉じ込められてる男がいます」
返事はしないが小野の言葉に少しだけ鈴木の表情が動いたように見えた。
「あなたは運良く自分の世界に帰って来られた。こうして自分の世界の時の中で元奥さんや息子のような存在と一緒にいられてる」
「晴翔は俺の息子だ!」
語気は強めだが先程のように注目を集めない程度の声量で鈴木は反論する。
「そうなんでしょうね。でもそれはこの子じゃない」
拳を更に強く握り締めて鈴木は小野を睨みつけるが、小野は静かにそれを見返していた。
「あの異様な駅で、家族にもう二度と会えないかもしれないと怯える男がいるんです。この子をあなたが奪ったから。その男の家族は、その存在を失った事にも気づかないでいるんですよ。誰も彼がいない事を悲しまない。そして、この子も!この晴翔君のいるべき世界はこの子が居ない事にさえ気づいていないんだよ!」
鈴木の目が少し泳ぐ。小野の言ってる事はきっと殆ど理解出来ていないと思うが、奇妙な駅に取り残されている人や、晴翔君がいるべき場所を失っていると言う言葉は鈴木の心に少しだけ焦りを与えたのかもしれない。
「俺はただ、晴翔を連れ帰りたくて、、。だって、晴翔は俺の、俺達の子供だ!連れ帰って何が悪い。男と確かに一緒だった。でも、それがどうした?そもそもそいつが晴翔を俺達から奪ったんじゃないのか!?そうだよ、あれは死神なんだ。きっとそうだ、、俺は!そんな怖い奴から晴翔を守ったんだよ!」
そこまで言うと鈴木は晴翔君を抱えて立ち上がる。
「晴翔は俺達の子だ。帰すも何も俺達といるべきなんだ。話は終わりだ。夏菜子もう行くぞ」
「でも、、」
「ちょっと待ってください!」
あまりにも身勝手な鈴木に私はもう黙っていられなかった。




