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鈴木はすっかり力を無くして椅子に沈み込むように座っている。その様子を心配したのか「パパ?」と声を掛ける晴翔君には微かに笑みを向ける事は出来ていたが話は進めてくれそうになかった。
「この人と別れて一人で晴翔を育てる事にしたんです」
川村が再び口を開く。今度は止めたりせず鈴木も大人しくしている。
「惣菜屋でパートを始めて。大変だったけど晴翔が居たから、晴翔のためならって頑張れました。この人も晴翔との面会の時だけは必ず仕事の都合をつけて来てくれたし、お金もね、ちゃんとしてくれたから」
川村は量が減って飲みづらそうにしてる晴翔君のコップを持って飲みやすい位置に調整してやる。どう見ても普通の親子のようだ。
「そんな生活にも慣れて来た頃だったのに」
そこで川村は言葉を詰まらせる。鈴木も何かに耐えるようにテーブルの上で拳を握り締めた。
「預け先の保育園に、飲酒運転のトラックが突っ込んで。たまたまそこに居た晴翔が、、」
堪えられず川村の目からは涙がこぼれ落ちた。確かに少し前、そんな悲惨な事故のニュースがあった。その続報を目にしたのはついこの前だ。
「あの、これ良かったら」
私は自分のハンカチを川村に差し出す。礼を言ってハンカチを受け取ると涙を拭って川村は話を再開した。
「もう何もかもどうでも良くなりました。晴翔のために生きていたのに、働く気力も生きる気力も失くしました。お葬式も終わるか終わらないかって時にこの人ってば仕事に行っちゃうし、もう私も晴翔の所に行こうかなって、、」
大事な者が何の前触れもなく消える。それを想像しただけでさっきはあんなに辛かった。川村はまさにそれを体験してそれを受け入れられなかったのだ。その気持ちは少しだけ理解出来るが、何て言ってあげれば良いのか分からない。
「そのままボーとしてたらいつの間にか夜になっていて、インターホンが鳴っているのに気がついたんです。放っておこうかとも思ったんですけどしつこくて、イライラして外も確認せずにドアを開けたらこの人が立ってたんです。晴翔を抱えて」
川村は晴翔君に視線を向けると頭を撫でてやる。晴翔君は嫌がる事もなくそうされるのが当然のようにジュースを飲んでいた。
「最初は何が何だか分からなかった。この人が何で子供を連れてやって来たのか。それも凄く晴翔に似てて。晴翔をあの世から連れて帰ったぞって。そん訳ない、そんな冗談やめてって追い返そうとしたんです。したんです、けど、その時、ママって、、」
晴翔君の頭を撫でながら川村は再び堪えきれずに涙を流す。そこからはもう話が出来そうになかった。




