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私の反応の薄さに雄真は怪訝そうにする。
「なんだよ、知らないのか?時空のおっさん」
私を誰だと思っているのか。異世界に精通している私は当然その存在だって知っている。しかし世間一般的に真っ当と言われる職に就いている人がそんな冗談を言う訳がない。小野だって目を向ければやはりやれやれというように頭を振っている。きっと雄真が私を騙そうと本題の前にアドリブでも入れたのだろう。
「マスター、おっさんはよしてよ」
「ああ、すみません」
「そこ!?」
雄真の言った冗談にではなく‘おっさん’の表現に頭を振っていたらしい。まあ確かにこざっぱりとして清潔感のある小野に対しておっさんは失礼だと思う。年齢も私達とそう変わらない見た目だし。しかし某掲示板に投稿される遭遇体験では誰もがそのように表記するから仕方がないが。しかしこの反応、雄真の言ってるのは冗談じゃない?
「待って、小野さんって刑事さんだってお聞きしたんですけど?」
「そうだよ。あ、年上だし敬語はもういいよね?二人も良かったらフランクにね」
「敬語とかは全然何でも大丈夫ですけど、刑事って、え?まさか時空のって事です?」
時空のおっさんはこの世界から異世界へ迷い込んだ人を帰してくれる存在とされている。いわば不法侵入や不正滞在者を強制的に送り返す役割をするのだから刑事だとこれまでは表現していたという事だろうか。
「ううん、本職が刑事なんだよ。たまに異世界に飛ばされてそこに迷い込んだ人を所定の場所に連れて行くってのをこの数年させられてるんだ」
「飛ばされるって、小野さんも異世界転移するって事?この世界に迷い込む人を帰すのじゃなくて?」
「そう。その世界の人がやれば良いのにっていつも思うよ。現にこの世界の住人である君たちはこれまでここに迷い込んだ者達を帰してきてるもんね?」
これまでにリオン、ユエ、シルヴィアという異世界転移者を雄真と共に保護し帰還までを見守ってきた。こんな事を実際に人に話して信じてもらえる訳もないし話す気もなかったから口外した事はない。雄真もそうだろうが小野の口振りではどうやらその事を知っているようだ。時空のおっさんと言うのを聞いて昨日雄真が話したのかもしれない。
「小野さんは最初から知ってたみたいなんだ」
話したのか確認したくて雄真に視線を向けるとそう言った。
「最初から?どう言う事?」
小野が時空のおっさんなのかもまだ完全に信用出来てないのに聞きたいことが多すぎる。説明を求めてみたが雄真は「飯まだだろう?」なんて聞いてきて質問には答えてくれなかった。
「小野さん、一から話してやってくれませんか?その間になんか食うもん用意するんで。飯はもう普通に食って大丈夫なんすよね?」
「うん、大丈夫だよ。もう今さら何も変わらないから」
そんな言葉を交わすと雄真は右手奥のキッチンの方へと消えて行った。
「さて、しょっぱなから訳の分からない話で申し訳なかったね」
小野は体をこちらへ向けながら言った。時空のおっさんである事の証拠やこれまでの転移者を知っている理由を彼がこれから語ってくれるのだろうから、私も体を少しだけそちらに傾けて聞く体制を示した。




