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仕事を終え地元に帰り着く頃はすっかり日が落ちている時間だった。乾いた風は冷たく頬を突き刺してきて、明日はマフラーも付けて来ようと心に決めさせる。「珈琲屋」はすでに看板の灯りが落ちているが、窓からは柔らかく光が漏れていた。
入り口のドアを開けて中に入ると暖かい空気にホッとする。しかし昨日の今日でなんとなく顔を合わせずらい。
「お疲れさん」
雄真の声に仕方なく応じようと意を決して顔を上げるとすぐに後から客が入って来た。看板の灯りが落ちていたから客も普通なら店は終わりだと気づくはずだが私が入っていくから大丈夫と思ったのかもしれない。
「こんばんは」
「あ、こ、こんばんは」
後から入って来たのはよく見かける常連客の男性だ。なぜ振り返った私が挨拶をされるのか。顔はよく知っているが言葉を交わす事は今までなかったものだから戸惑ってしまう。
「突っ立ってないでこっち来いよ」
「ああ、うん」
店内を進み常連客とは数席空けてカウンターの椅子に腰を下ろす。
「お呼びだてしてすみません」
「え?えっと、、」
常連客は私に向けてそう声をかけてきた。呼び出したのは雄真のはず。私は訳が分からず雄真に視線を向ける。
「常連の小野優吾さんだ。俺たちに頼みたい事があるらしいんだけど、顔は知ってるだろう?」
「うん」
なんなら顔だけじゃなくて職業だって知っている。目付きの悪い雄真と類友な客層だった開店当時、この店は何かあると刑事に見張られていたと以前雄真から聞いていた。たまたま同じタイミングで店に居合わせた際、彼が帰ると今のがその刑事だと教えられたことがあるのだから。
「昨日は早く店閉めただろ?店の前通ったら閉まった店から残念そうに引き上げていく小野さんを見つけてさ、店で珈琲淹れてあげたんだよ」
「いつもならまだ空いてる時間でしたから」
昨日は日没に合わせてシルヴィアの世界が鏡に映される予定だったから雄真に無理を言って店閉めを早めて来てもらったのだった。少し申し訳ない気もしたが丁度私の部屋から追い出された雄真と鉢合わせたようで何よりだ。しかしそのことが今日私がここに呼ばれる事になった事とどう関係するのだろう。頼みたい事があるというが、まさか「珈琲屋」の営業時間に口出しするなとか苦情を言われる訳じゃないでしょうね。
「で、俺も一緒に珈琲飲みながら世間話してたんだけど、他の奴に聞かれる心配もないからって小野さんすごい秘密を打ち明けてさ」
「秘密?」
得意そうに雄真は語っているが雄真にだけ打ち明けた秘密だ。私が聞いていいのか躊躇われたが言ってしまいそうな雄真を小野も止める様子はない。
「小野さんはな、実は時空のおっさんなんだってよ!」
「は?」
事もあろうに一般人の前でとんでもない発言をする雄真に私はそれ以上言葉が出なかった。




