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休みの前日という事で食後は皆でお酒を片手にまったりと翌日の行き先の打ち合わせをする。
「これまでに転移者と巡った地って秋保の何処らへん?」
「観光地がメインでしたよ。夏と秋の二回行ってるんですけどどっちも千歳は仕事で行けなかったんで改めて行こうってことになったんです」
「大滝と、恋愛のパワースポットよね」
少し前に帰還を果たしたシルヴィアは恋愛に悩めるご令嬢だった。婚約者と拗れた仲を応援しようとこの世界の恋愛のパワースポットの力を借りてみることにしたのだった。その話をすると小野も楽しそうに自身の思い出を語り出す。
「へえ。懐かしいなハート岩とか。こっちの世界にもあるんだね」
「小野さんの世界にも有ったんすか?」
「恋人を連れて行ってたりしてー」
「あったけど行ったのは親友達とだよー」
私はほろ酔いなのを良いことに小野の恋バナでも聞けるんじゃないかと期待したがそうはいかなかった。
「車買ってすぐ無理やり連れて行ったんだよね。慣れないマニュアル車買って、速攻でエンストさせて見せたもんだから親友達にとっちゃ恐怖のドライブだっただろうなー」
「行ったのはやっぱり観光名所ですか?」
「君達と一緒だよ。僕らの中でさ、好きあってるのはバレバレなのになかなかくっつかないのがいてさー、ハート岩とか滝見堂の鯉とかのご利益にあやからせようと思って」
私達がシルヴィア達にしたように小野も友人カップルのために一肌脱いだようだ。
「それからお蕎麦も食べに行ったよ。日帰り温泉と庭園の散策が楽しめる所があったんだけど」
「天守閣自然公園っすか?」
「そうそう!こっちにもあるんだ!」
「今日まで庭園内のライトアップイベントをやってる所よね?」
迫力のある岩肌を見上げる広い庭園には四季折々の植物が植えられ秋には紅葉のライトアップも行われる場所だ。その年毎にテーマが異なり独創的でアートなライトアップは毎年多くの人が楽しみにしている。
「そっかあ。あるんだねえ。庭園内ではぐれたフリしてさ、煮え切らないそいつらを二人きりにしてやったり、楽しかったなあ」
懐かしそうに語る小野の顔は幸せそうだが切なそうでもあった。以前親友を震災で亡くしてるって言ってたからその人やその彼女さんとの思い出なのかもしれない。
「ねえ、お昼休憩はそこにしない?」
「べつにいいぞ」
「いやいや、千歳ちゃんが行けなかった所を巡るのが目的なんでしょ?僕の話は気にしないでほしいな」
「大瀧見て、ハート岩を見られれば達成みたいなものだし」
他にも何ヶ所かあるが実際いつだって行ける場所だ。小野も元の世界ではいつでも行けるだろうが亡き友人達との思い出の地、一人ではなかなか足を運び辛いかもしれない。現に懐かしむ彼は友人亡き後行ってなさそうだし、それでいて思いは馳せているのだから連れて行ってあげたいと思ってしまう。
「観光して蕎麦食って、秋の温泉って最高だろうな」
雄真も小野さんが気を遣わないようにかノリノリで明日の行動を想像してみせる。本心からそうしたいと思っている可能性もあるが。
「ね!小野さん、温泉行きましょうよ!」
「まったく、君達は」
私や雄真の魂胆は小野にはお見通しのようだが嬉しそうだった。
「楽しみにしてるよ」
明日は少しの遠出、二日酔いなんかで台無しには出来ないと行動予定が立つと私達は解散して明日に備えた。




