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晴翔君を連れ去ったのは私が良く見かけていた社畜さんかもしれないことは仮説として既に立っていた。目撃された元同僚さんはブラック企業の社員というから同一人物と考えることも出来る。そして亡くなったはずの子供を連れていると言う怪談のような話も、異世界の晴翔君を攫ったのだとすればその状況は作られるだろう。
「それってどこの会社?社畜さんかもしれないなら問い合わせて会ってみましょうよ!」
「どこってそんなの分かんねーよ。有名なブラック企業ってしか言わなかったし」
「まあ、噂話なんだもんね」
確かに噂話なんて聞いてる時は何処の会社かなんて聞くより、起こっているらしい騒動なんかに集中してしまうものだ。それにこのご時世、個人を特定されないように固有名詞は避けて話されがちだし、仕方がないのかもしれない。
「噂と言えば私も、、」
そう言えば昨日聞いた都市伝説のような話があったと思い出し私は二人にそれを聞かせてみた。関係ないように思えるが二つの噂話には不思議と共通する事もあったから。
「子供の死、離婚と重なるキーワードは気になるね」
「女性の一人暮らしにしては大量の惣菜か。夫と子供が居たとすればそれも不思議じゃないんだよな」
「確かにそうね」
私達の頭の中にはきっと同じような仮説が組み立てられていると思う。私と雄真が聞いた噂話が同一家族の話であると仮定すればだが。
「晴翔君を攫った社畜さんは別れた奥さんの元に晴翔君を連れて行ったのよ」
「社畜さんは晴翔君と奥さんと居るために仕事を辞めるか休むかしてるのかもな」
「奥さんは職場に復帰して、家で待つ夫と子供のために大量の惣菜を持ち帰っているってところかな。ピーマンは社畜さんの好物か、異世界の晴翔君の好物かその両方かも」
仮説の上の仮説で晴翔君や社畜さんの今を想像する事は出来ても肝心の居場所が分からない。
「仕事を辞めるか休むかしてるとすれば電車で社畜さんを見かけなくなったのは納得出来るわね」
「居場所、例えば社畜さんの勤め先とか奥さんの勤め先とかが分かればね」
「また常連の爺さんが来たら、もう少し突っ込んで聞いてみるっす」
手掛かりが掴めたようで何も分かっておらずもどかしい。取り敢えず噂の会社員が社畜さんであると結論づけず、今後も私と小野で電車での遭遇は試みる事になった。




