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バックヤードからテーブルを持ち出して受付のソファの前にセッティングすると雄真達が買ってきてくれた惣菜や弁当を広げた。二人は凶悪な事件を目の当たりにしたと言うのに食欲旺盛で弁当におにぎりまで開けている。私は申し訳ないが食欲が湧かず取り敢えずおにぎりを一つ手にして説明を求めた。
「閉店後に小野さんを店に寄らせて珈琲出してやったって話したろ?」
「うん」
私が小野が時空のおっさんだと聞かされる前日の話だ。もちろん覚えている。
「実はその時、閉まった店から去っていく奴を見かけてね。何だろうって思って入り口に近づいたらコレが貼ってあったんだよ」
小野が言うと雄真がスマホで写真を表示させる。張り紙は証拠品として提出したらしく、その前にスマホに収めていたらしい。
(これ以上俺の千歳に近づくな)
「何、コレ。気持ち悪い」
私が不快そうにすると雄真はすぐに画像を伏せる。
「店の前で小野さんと会って俺もすぐにそれ見せられてさ。どうしたもんかなって、小野さん刑事だし店ん中で相談乗って貰ったんだよ」
「どうしてすぐ教えてくれなかったの!?」
「お前が恐がるだろうと思って。言うにしても慎重にしたかったんだよ」
まあまあ、と言って小野が話の続きを引き受けた。
「相談を受けながら雄真君も心当たりは無いっていうし、犯人が強硬手段にすぐ出るとも思えなかったから取り敢えず僕が千歳ちゃんの行き帰りの護衛を当面してみるよって提案したんだ」
「心強いと思ったけどその時は小野さんがここの普通の刑事だと思ってたから、仕事もあるだろうしって一旦は断ったんだよ。適当に理由つけて俺が車出してやっても良かったんだし」
「でも僕は君達に協力を仰ごうかなって思い始めてた時だったからかえって丁度いいかなって。それで実は異世界人だって話をしたんだよね。こっそり守られるよりちゃんと身元を明かして側にいた方が千歳ちゃんにとっても良いかなって思ったし。それで、時空のお、お、おっさん、、業で協力して欲しい事があるから取り敢えず三人で話がしたいって持ち掛けたんだよ。僕は協力を得られる、君達は僕の護衛を得られる事になるなら問題ないでしょ?って。雄真君にその気があったら千歳ちゃんを呼んでおいてって頼んだんだ」
自分でおっさんと言った小野は何かへの敗北感を味わっているようだった。
「それであの夜、珈琲屋に集まったって訳だったんですね」
まさか知らない所で守られていたなんて。だから昨日小野は私にあんな注意をしたんだ。それなのに自分の事を過信して、なんて情け無い。
「でも当の千歳ちゃんは全然自覚がない。それに張り紙は珈琲屋にされたのであって、僕としては攻撃されるなら雄真君の方じゃないかなって思ったんだよ。何度か昼過ぎに見かける客に、あの夜去っていた人影と特徴の似た奴がいたからね。現れそうな時間には珈琲屋に居てみようとは思っていたんだ」
「それで今日、妙に苛立ってる客が帰ると小野さんもすぐ店出て行って。そうかと思ったらすぐそいつを取り押さえて帰って来たんだよ」
刑事の話では店内で暴れたって言っていたのに。それに雄真が取り押さえたって。
「昨日も同じ時間に居た奴で、食事も終わってるのにずっと席を立たないでいた。まるで人気が無くなるのを待っているみたいだったからね。発破かけてみたんだ」
「発破?」
「千歳ちゃんと凄く仲良いアピールしたの。恋敵と思ってた雄真君は気にもせずに僕の相手してたからその瞬間奴の標的は僕に変わったんだよ。張り紙の後すぐで、連日の来店だったからこれはもう行動に移す機を狙ってるなと思ったんだよね。店を出ると案の定待ち伏せして襲い掛かって来たんだけど、現役の刑事を舐めてもらっちゃ困るよね」
いとも簡単に身柄を拘束した様子を小野は語った。子供の腕を捻るほど容易く拘束して見せたようだ。もちろん誰にも見られてはいないのだが。
「身分証も持ってない僕が関与したら何かと厄介でしょ?だから刑事には都合よく雄真君から話をしてもらったんだ。ほんのちょーっとだけナイフが当たったんだけど、傷害の罪は被らずに済むんだからって犯人にも僕の事は言わないように良い含めてね」
逆らえないように十分怖がらせたと得意そうに小野が言っているが私はそれどころではなかった。
「小野さん!怪我を!?」
それで朝と服が違ったんだ。雄真のトレーナーを着る小野は私を安心させようとヘラヘラと笑っている。
「だーいじょうぶ、大丈夫!服が切れちゃってみっともないから服は雄真君のを借りたけど、傷なんて本当に擦り傷だから。絆創膏貼って済む程度だったし」
ね?と同意を求められると雄真も頷いている。そうだとしても私のせいで負った傷なのは確かだ。
「何度も言うけど、自分のせいだなんて思わないように!僕はさ、自業自得とは言え自分の職も全うできない状況でしょ?そんな僕が君たちを守れて本当に嬉しいんだ」
「俺も小野さんに守られた立場だ。なあ千歳、ごめんとかじゃなくてさ俺らを守ってくれた刑事さんにちゃんとお礼言おうぜ」
二人の言葉に私は姿勢を正した。自分を情けなく思う気持ちや自責がなくなる訳じゃないがそれを私を守ってくれた人達は望んでない。雄真の言う通り大事な事を忘れていた。
「そうよね。小野さん、守って頂いて有難うございました」
「俺も、有難うございました」
揃って頭を下げる私達に小野はいつもの感じで「いーえー」と軽く返した。そして表情を少し落ち着けてから私にこれから先一人で思い悩まないようにと優しく言ってくれた。




