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昼過ぎ、ランチ利用の客が落ち着いた頃に小野が「珈琲屋」に立ち寄った。店内に人はいるがカウンターを利用する者は丁度なく、そこに腰掛ける小野とは言葉を選べば問題なく会話をする事が出来る。
「問題はなかったっすか?」
「うん。あ、コーヒー貰えるかな?」
「うっす。あ、支払いはいいっすからね」
「だから気にしなくていいのに」
「いやいやいや」
資金源が定かじゃない物は受け取る事は出来ない。楽観的な小野に俺は苦笑う。
「それに千歳が世話になるんで」
「それこそ気にしなくて良いのに」
その時残っていたランチ客がテーブル席から立ち上がった。会計だろうと小野との会話を打ち切ってレジへと向かう。会計を済ませるとキッチンエリアに立ち寄ってからカウンターへと戻った。
「珈琲すぐ淹れますね。その前にこれ、良かったら」
俺はキッチンに用意してて今取って来た物を小野に渡す。不思議そうにしながら小野は受け取った物を広げた。
「コート?」
「小野さんの格好寒そうだったんで。サイズも近そうだし、俺の良かったら使って下さい。不要になったら返してくれていいんで」
「本当、君達は、、」
そう言うと小野は空席に置いていたマフラーを手に取った。朝は持ってなかったと思ったんだが流石に寒くて途中で買って来たのだろうか?
「こっちは千歳ちゃんから。雄真君と同じで寒そうで見てられないってさ。僕が気にするもんだから貸すだけだって言って買ってくれたんだよ」
「そうだったんすね」
「もうずっと人からの優しさなんて触れてなかったから、君達の思いやりが嬉しすぎて僕泣いちゃいそうだよ」
「野郎にはハンカチ貸さねぇっすよ」
えー、と不満をこぼしてから小野は柔らかく笑う。
「ありがとう」
「うっす。客も居ないし珈琲、自分でやります?」
「いいの!?やるやる!ご指導願います、師匠!」
さっそく張り切った小野はカウンターの内側に回ってドリップの準備にとりかかる。本当に珈琲が好きなんだなとその様子を眺め、俺は帰った客のテーブルを片付けに向かった。




