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私達はカップを片手に再び元のテーブルへと戻った。雄真と小野のカップには珈琲が、睡眠の質を気にする私のカップにはホットミルクが注がれている。
「本当は帰るための協力じゃなくて転移者の捜索に協力してもらおうと思ってたんだ」
「捜索?転移者には気付けるって言ってましたよね?」
「うん。そうなんだけど、取り敢えず順を追って話すね」
珈琲を一口飲み込むと小野は続けた。
「僕が黄泉竈食ひをしてしまってからは何の指示も直接届かなくなった。さっき言った、頭に響く声が聞こえなくなったんだ。ここで珈琲を初めて飲んだ時、転移者そっちのけにしたって言ったでしょ?そんな事して珈琲も飲んじゃって、これから自分はどうなるのかなとか、時空のおっさん業からもお役ごめんなのかなとか、ここの会計どうしようとか考えてた」
小野は自分が黄泉竈食ひをしてまず不安に感じた話をした。自分の今後について不安に思うのは当然だけど、それと同時に異世界での会計を気にするのは人の思考や良心の面白い所だとも思った。
自分の持ち物は一切持たされないと言っていたから現金も持って無かったはず。持っていたとしても同じ通貨であるかも分からない。でもいつも普通に会計は出来ているように見えた。一体どうしていたのだろうか。
「珈琲を飲み終わるとこいつが鳴ったんだよ」
そう言ってあのガラケーをテーブルに置く。
「画面に何か表示される事なんて今まで無かったんだけどその時から文字が表示されるようになってね。その時はこいつで会計を済ませて早く転移者を帰せって表示されてた。その文字は全然知らないんだけど何故か書いてある内容は理解出来たんだよね」
これまでのリオンを始めとした転移者の知り合い達もこちらの文字は読めていた。小野と同じように読めると言うよりも内容が分かると言っていたから異世界転移する者は皆そうなのかもしれない。
「この機械で支払いが出来るってのも謎だったんだけど、雄真君にレジでこれ見せたら別の端末にかざしてって言われたんだよね。そんで支払いが済んだみたいだから本当に不思議」
「待って、見た目ガラケーのこれ見て何で普通に決済作業出来たのよ?」
「ガラホだと思ったんだよ。常連の爺さんも使ってるからてっきり同じかと思って。小野さんも何か良く分かって無い感じだったからおサイフケータイで出来る決済方法取り敢えずいくつか試せばいっかってやってみたら普通に出来たから」
形や操作方法はガラケーで性能はスマホに近い端末のガラホはお年寄りなどのガラケー操作に慣れた人に重宝されているらしい。私の店では客層的に使用している人は見た事が無いが「珈琲屋」は住宅街に店を構えてるだけあって年配客も多く雄真はガラホでの決済に覚えがあったから戸惑わなかったと言うわけか。
「でも、その資金源って何処なのかしら?」
「毎回ちゃんと振り込まれてるけど、よっぽどじゃなきゃ合計額しか照らし合わせないからな。しかもうちの場合細かい決済が多いから誰の決済がどの金融機関からとかいちいち確認しないし」
私と雄真が小野に疑問の視線を向けると「さあー?」と笑顔を浮かべている。
「俺もう小野さんから金もらうのよそう」
「得体の知れないお金は怖いものね」
「えー、気にしなくて良いんじゃ無い?」
何処から出てるお金か知りもしないで小野はよく平気でいられるものだ。いつか何処かから大きな請求が来たらとか思わないのだろうか。




