4-7
小野は先程までの無表情から元の柔らかい表情に戻っていた。
「ここからはマスター、あー、雄真君って呼んでいいかな」
「え、ああ別にいっすけど」
「うんじゃあそうするね。で、雄真君と千歳ちゃんに揃って聞いて欲しいお願いがあってこの席を設けてもらったんだけど」
そこまで言うと小野は居住いを正して私達を見据え頭を下げた。
「僕の帰還に協力して下さい」
帰れなくても良かったんじゃなかったのか。まさか私の説得が響いたわけじゃあるまい。だって昨日の時点で相談があると雄真に言っていたのだからそもそもこの話をするつもりだったはずだ。何か泣いた事が恥ずかしくなってきた。
「帰れなくても良いと思っていたんじゃ無いんすか?」
雄真が私と同じ疑問を投げかける。小野は少し困ったように笑った。
「うん。さっきまではね。でも自分のためじゃなくて、あっちに眠る皆んなのために帰ろうって千歳ちゃんの涙見たら思えたよ」
「でも、昨日の時点で相談があるって言ってたっすよね?もう帰ろうとは思ってたんじゃ」
「うん、別の理由でだけど。また長い話になるからまずは食事を終わらせようか。せっかくの美味しい料理が冷めきっちゃうのは勿体無いし」
話の続きが気にはなるがそう言われてしまえば仕方なく私達は止まっていた箸を進め始めた。各々の皿が空になると私と小野で食器洗いを担当し、雄真は食器を片付けて歩くとこの後の長い話に備えて珈琲を落とし始めた。




