第2話:一と義理の妹
「起きて!!お義兄ちゃん!!」
一は意識が覚めると同時に腹あたりに重みを感じた。
提供ありがとうございますって感じだ。
……起きる理由が、なくなった。
「むぅぅーなかなか起きないよ。」
可愛げのある、聞いてて癒やされる声だ。
腹辺の重みが消えた。
代わりに右腕あたりに柔らかい何かがアタリ、右耳に湿った生暖かい吐息が当たる。
声の主は一の布団に入り、一に体をピッタリと密着させていた。
一の顔は一瞬にして熱を帯びた。
「お義兄ちゃん、起きて...」
今度は囁くように語りかけてきた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」
一はまともに声を出せない。
声の主はため息をつき、最終兵器を使おうとする。
あたりを見渡し、より一層口を一の耳に近づけ、
「はあ、しょうがないなぁ...」
数秒の沈黙の後、
「ン゙ア゙ァ゙ッ!!」
汚い声を出した。
「ごめんちょっとなにやってるのか聞いて良い?」
一は耐えきれず、声を出した。
***
「えっと、名前がわからない相手に布団に潜り込まれてたんだけど、」
「それはもしかしなくても私のこと?」
「他に誰がいるのかな?」
一と少女は話していた。
一はもちろん、眼の前にいる少女に心当たりがない。
彼の家族構成は、父母そして一という一人っ子なのだが、妹なんてできた覚えがない。
「私は私だよ?」
「名前だけでも教えてくれない?」
「佐々木 マオだよ?」
苗字が同じことに一瞬違和感を覚えるが、佐々木なんて苗字は珍しくもないので、一はスルーする。
「そうか、じゃあどうして俺の布団の中に潜り込んでたの?」
当然の疑問だ。
「私だからッ!!」
自信満々に答えられた。
「私だからというのは?」
「私だから!!」
意味を聞くと、マオは変なルビを振って答えた。
一は諦めた。
「えーっと、記憶がないんだけど、僕と君との関係は何だ?」
「夫婦ね、」
関係性について質問した結果、馬鹿げた回答がされた。
「……あー、うん。分かった。分からんけど分かった。」
***
一は1階に降りると、いつもの位置に両親が座っていた。
一は意を決して声をかけた。
「あの、俺とマオの関係性ってなんだ?」
一とマオとの関係性。大事だ。回答によって関わり方が変わる。
「どうした、お前が家族の中で一番溺愛していたじゃないか、」
「えっと...?」
「義理の妹よ、貴方が捨て子の彼女を見つけて拾ってきたでしょ?『放っておけない』っていってたじゃない。」
「俺そんな事を言ってたの?!」
転移のショックで忘れていたのか?
いや、義理の妹ができたら俺は忘れない。断言できる。
じゃあなんで?
「お義兄ちゃん、ちょっときて♡」
背後から声をかけられる。後ろを見ると、マオが手を後ろに組み微笑んでいた。
***
マオに言われるがまま自室に入ると、マオは俺のベッドに腰を下ろし、語りかけてきた。
「それじゃ、話をしようか♡」
「ハートを多用するな」
「良いじゃない、私のお義兄ちゃんへの愛は抑えられないのよ♡」
「.......で、どしたの」
「いやー、多分戸惑ってるだろうからわかりやすーく説明してあげるよ。手取り足取りね?♡」
一瞬の沈黙、
先に口を開いたのは一だ。
「何を、説明するんだ?」
「色々。異世界についてとか、」
マオの声色が急に真面目になり、一もマオに真面目な顔に変わった。
「どうして異世界について知っているんだ?」
一瞬の沈黙の後、マオは口を開く.
「私が魔王だから♡」
一は顎が外れんばかりにあんぐりと口を開けた。
***
あのあと、マオは語った。それはもう誇張しているのではないかといったレベルで大層な話だった。
まとめるとこうだ。
勇者として魔王城に乗り込んできた男性、佐々木 一を見て恋に落ちたそうだ。
魔王だった頃のマオは男性だった。本人曰く、男でも女でもイケるとのことだったが、一はそうではないので一旦、一を日本に帰して自分も彼の義理の兄妹として転移すれば関係ないと考えたそうだ。
アホくさいことこの上ないが、異世界のことを知っているだけで信憑性が増す。
一は信じることにした。
「つまり魔王はホモだったってこと?」
そして、思ったことを要約して質問した。
「違うわよ」
一拍置いて、
「――両刀よ♡」




