第四巻 第四章 (正しさを行動で表しなさい)(法に従う人が正しい人である)
第四巻 第四章 (正しさを行動で表しなさい)(法に従う人が正しい人である)(国家や家庭では法に従って全員一致しなさい)(不文律の法は神が創造した)(親子の近親相姦は奇形児という罰を受ける)(全盛期の肉体同士で性交しなさい)(思いやりを返すのは神による不文律の法である)
実に、ソクラテスは、正義について抱いていた意見を秘密にしなかっただけではなく、個人的には法に従う事と全ての人に対して役に立つ行動によって、公的には都市国家での生活においても軍務においても法が命じている全ての物事においては公職の人達に従う事によって、公私の両方で、正義を実践して見せた。
(実に、ソクラテスは、正義について抱いていた意見を秘密にしなかっただけではなく、個人的には全ての人に対しての法と不文律の法である慣習の観点で清浄である行動だけではなく実際に役に立つ行動によって、公的には都市国家での生活においても軍務においても法が命じている全ての物事においては公職の人達に従う事によって、公私の両方で、正義を実践して見せた。※別の版)
そのため、ソクラテスは、他の全ての人々に対して(法への)忠実(、法に従う事)の見本と成った。
そのため、次のような、三つの時のそれぞれにおいては、特に(、ソクラテスは、他の全ての人々に対して法に従う見本と成った)。
最初に、ソクラテスは、議会の議長の時に、主権者である民衆が法に違反している投票によって多数決するのを許さず、法の味方をして、私クセノフォンが思うにソクラテス以外の全ての人の心をくじくのに十分なほど強い、民衆の感情の流れに、危険を覚悟で対抗した。
また、例えば、「三十人僭主」どもが若者との会話をソクラテスに禁止した時のように、「三十人僭主」どもが、法に違反して、いくつかの禁止命令をソクラテスに課そうと試みた時に、ソクラテスは従う事を拒否した。
その上、「三十人僭主」どもが、ある人を処刑するために捕まえるようにソクラテスと都市国家アテナイ市民の何人かに命令した時に、「ソクラテスに課された命令は法に違反している」という理由で、ソクラテスは、独りだけ不屈に抵抗した。
最後に、メレトスが起こした訴訟で、ソクラテスが被告として現れた時に、法廷で原告や被告が(裁判官に)こびへつらった主張と法に違反している嘆願を行う上で裁判官の機嫌を取るのは慣習的であったにもかかわらず、また、法廷で被告が同様に裁判官の機嫌を取るという手段を採用して無罪に成る慣習的な事が有ったにもかかわらず、ソクラテスは、法廷で、どんなに慣習的であっても、厳密には法に違反している事は一様に拒否した。
そうして、ソクラテスは、厳しい正道から、わずかに外れるだけで簡単に裁判官によって無罪にされたかもしれないのに、法に違反して生きるよりもむしろ、法に従って死ぬ事を選んだ。
ソクラテスは、色々な時の色々な相手との会話の中で、前述のような考え方を頻繁に支持した。
また、私クセノフォンは、正義という話題についての、エリスのヒッピアスと(ソクラテス)の、ある独特な議論を聞いた事が有る。
ヒッピアスは、久しぶりにアテナイに来た直後、ソクラテスが何人かの人達に「もし人が、靴屋や大工や銅細工師や騎手に成れるように、ある人を教えたかったら、その目的のために、その人を送り出すべき場所を迷わないであろう事は、何とも驚くべき事なのである! (なぜなら、)」と話している所に、偶々居合わせた。
次のようにソクラテスは言い加えた。
「『もし人が、馬や牛を正しく調教したかったら、世界は教師で満ちあふれている』と人々は話している。しかし、もし人が、自身や息子や奴隷に正道、正義を教えたくても、正義の教えが見つかる所を教える事ができないのである」
ヒッピアスは、そのソクラテスの話を聞くと、冗談を言うような口調で大きな声で、次のように話した。
「何と!」
「ソクラテスよ、私ヒッピアスが大昔によく、あなたから聞いたのと同じ話を未だくり返しているのですか?」
(次のようにソクラテスは答えた。)
「ええ、ヒッピアスよ、さらに意外であるのは、昔と同じ話である事だけではなく、昔と同じ問題についての話である事なのです」
「さて、多分、あなたヒッピアスは、多才な知識によって、同じ問題について同じ事を二度も決して話さないのですね?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「確かに、その通りです。毎回、新しい事を言うように私ヒッピアスは努めています」
(次のようにソクラテスは尋ねた。)
「例えば、『つづり』、『文字の並び』の場合のように、あなたヒッピアスが知っている物事について、もし誰かが『ソクラテス、という名前には、何文字有って、文字の順序は、どのようですか?』と、あなたに尋ねたら、『あなたは、今日は、ある一連の文字群を、明日は、別の一連の文字群を書き上げようと試みる』と私ソクラテスは考えても良いですか?」
「または、『五の二倍は十に成りますか?』という計算の問題に対して、あなたヒッピアスは、今日は昨日とは違う答えをするつもりなのですか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「いいえ」
「ソクラテスよ、それらのような話題については、あなたがしているように、私ヒッピアスも自ら同じ話をくり返します」
「しかし、正義についてへ話を戻すと、『私ヒッピアスは、今、あなたソクラテスも他の全ての人も反論できない(正義についての、)いくつかの言葉をあなたに話す事ができる』と私は自画自賛します」
(次のようにソクラテスは大きな声で話した。)
「(家の女主人である、女神の女王である、)女神ヘラにかけて!」
「正義についての知恵を発見できたとは、何と幸運なのか!」
(「何と、正義についての知恵という万能薬を発見できたのか!」※別の版)
「もう、我々、人には、正義という問題についての意見の分裂は無く成るであろう」
「裁判官達は、全員一致して決定できるであろう」
「都市国家の市民達は、論争をやめるであろう」
「もう、訴訟は、無く成るであろう」
「もう、党派争いは、無く成るであろう」
「諸国は和解して、諸々の戦争は終わるであろう」
「私ソクラテスとしては、あなたヒッピアスが成した偉大な(正義の知恵の)発見についての全てをあなた自身の口から聞くまで、どうしたら、あなたから離れる事ができるのか分かりません」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「あなたソクラテスは、適切な時機に(正義についての知恵の)全てを聞けるであろうが、あなた自身の(正義についての知恵についての)確信をあなたが明確な言葉にして話すまで、聞かせません」
「正義とは、何ですか?」
「あなたソクラテスが、最初に(相手へ)質問してから、(相手に答えさせて、相手の答えを)問い詰めて、ソクラテス以外の全ての人達を笑いものにするのは、もうたくさんです(。もう飽き飽きしました)」
「しかし、あなたソクラテスは、誰かへ(最初に)自ら答えたり、話題についての明確な意見を(相手へ最初に)話したりする事は、決して少しも一度も無いのです」
(次のようにソクラテスは返した。)
「ヒッピアスよ、何と、私ソクラテスが『正義とは何か?』という私の考えを常に習慣として(行動で)明らかにしているのに、あなたは気づいた事が無いのですか?!」
次のようにヒッピアスは話した。
「では、どうぞ(答えてください)。正義という話題についての、あなたソクラテスの自説は何ですか?」
「『正義とは何か?』を言葉で話しましょう」
次のようにソクラテスは話した。
「私ソクラテスは、言葉で明らかにしなくても、いずれにせよ、行動で明らかにしていますし、事実で明らかにしています」
「それとも、『証拠として、言葉よりも、(行動という)事実は、より価値が有る』と、あなたヒッピアスは思わないのですか?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「『言葉よりも、行動という事実は、遥かに価値が有る』と私ヒッピアスは思います」
「なぜなら、多数の者どもが正義を口にしながら悪事を犯します」
「しかし、善行を行う者が、悪事を犯す者どもであった事はかつて無いですし、また、多分、悪事を犯す者どもに成り下がる事は有り得ないでしょう」
次のようにソクラテスは話した。
「では、私ソクラテスは尋ねますが、私が、虚偽の証言、証拠をもたらしたり、悪意の有る情報をもたらしたり、友人達の間に不和を引き起こしたり、都市国家アテナイの中に政治的な不和を引き起こしたり、その他の何らかの悪事を犯したりしたのを、あなたヒッピアスは、かつて、聞いたり、見たり、その他の方法で知覚したりした事が有りましたか?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「いいえ。私ヒッピアスが『かつて見聞きした』と言う事は不可能です」
次のようにソクラテスは話した。
「では、『悪事をしない事は、正義である』と、あなたヒッピアスは考えませんか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「ソクラテスよ、今あなたが明らかに明確に話すのを避けようと試みているのに、(私ヒッピアスは)気づいていますよ」
「あなたソクラテスは、『正義とは何であると、あなたは確信しているのか?』と質問されると、『正しい人は何をするか?』ではなく、『正しい人は何をしないか?』を私達に教え続けますよね」
(次のようにソクラテスは答えた。)
「ああ、私ソクラテスが考えるに、『悪事を犯す事への拒絶は、正義である』と十分に保証されているのです」
「しかし、もし、あなたヒッピアスが同意しないのであれば、この(『悪事を犯す事への拒絶は、正義である』という)考えが、あなたをより善く満足させるかどうか確認してください」
「『法に従う事は、正義である』と、私ソクラテスは断言します」
(次のようにヒッピアスは尋ねた。)
「『法に従う事と、正義は、意味が同じ言葉である』と、あなたソクラテスは断言するつもりですか?」
次のようにソクラテスは話した。
「はい、断言します」
(次のようにヒッピアスは言い加えた。)
「あなたソクラテスが、『法に従う事』という言葉で何を示しているのか? また、『正義』という言葉で何を示しているのか? 私ヒッピアスは、分からないので、質問します」
次のようにソクラテスは話した。
「『都市国家、国家の法が何を示しているのか?』をあなたヒッピアスは理解していますよね?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「はい」
次のようにソクラテスは話した。
「あなたヒッピアスは、『国家の法とは何である』と思いますか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「(国家の法とは、)都市国家の市民達か、国家の国民が『するべき事』や『しないままでいるべき事』について合意して作った法律です」
(次のようにソクラテスは話を続けた。)
「では、私ソクラテスが思うに、国家の法に従って自分の生活を規則正しくしている国民は『法に従っている事』に成りますし、一方、国家の法に違反している者どもは『法に違反している事』に成りますよね?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「確かに」
次のようにソクラテスは話した。
「では、私ソクラテスが思うに、『法に従っている』都市国家の市民は善行を行いますし、一方、『法に違反している』者どもは悪事を犯しますよね?」
次のようにヒッピアスは話した。
「確かに」
次のようにソクラテスは話した。
「では、私ソクラテスが思うに、善行を行う人は正しい人ですし、悪事を犯す者は悪人ですよね?」
次のようにヒッピアスは話した。
「もちろん」
次のようにソクラテスは話した。
「では、『法に従っている』人は正しい人ですし、『法に違反している』者は悪人ですよね?」
すると、次のようにヒッピアスは話した。
「ええと、しかし、ソクラテスよ、法に従っている当人達や、法を作った当人達が絶えず否定して廃棄したり変更したりしている法を、どうしたら、誰が、『重要な物である』と思えるというのか?」
(次のようにソクラテスは応えた。)
「それは、戦争にも当てはまります」
「都市国家同士は、絶えず、戦争してから和解しています」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「最も、そうですね」
次のようにソクラテスは話した。
「そうであれば、『法は撤回されるかもしれないからと、法に従うのを軽視する事』と、『いつか和解するかもしれないからと、戦時中の善い規則を軽視する事』は、何が違うというのですか?」
「しかし、戦時中に自分の家庭や祖国を守るために発揮された熱意に対して、もしかして、あなたヒッピアスは反対するのですか?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「いいえ! 実に、私ヒッピアスは反対しません! 私は心から認可します」
次のようにソクラテスは話した。
「では、立法者リュクルゴスがラケダイモン人と自称しているスパルタ人に教えた教えを、あなたヒッピアスは熟考した事が有りますか?」
「そうしていたら、立法者リュクルゴスが都市国家スパルタを他の諸国家よりも優れさせる事に成功したのであれば、他の全てよりも、(都市国家スパルタが他の諸国家よりも優れるように成ったのは、立法者リュクルゴスが)法に従う精神を都市国家スパルタに教え込んだ事だけによる物ですよね?」
「また、色々な諸国家における公職の人達や統治者達のうち、同胞の都市国家市民達を法に従わせる事に最も貢献した人達の優秀さへの栄光を、あなたヒッピアスは、きっと拒絶しないですよね?」
「また、『法に従っている事が都市国家市民達の最大の特徴である、全ての特別な国家は、平時には最も栄えるし、戦時中には圧倒的である』と、あなたヒッピアスは認めますよね?」
「実に、国家が享受できる全ての恩恵のうち、全員一致という恩恵は最高である」
「『都市国家市民達の一致』は、『長老会』と社会の選ばれた人達が重視して奨励している不変の話題です」
「常に、全ての場所で、ギリシャ人が『ヘラス』と呼んでいる『ギリシャ人の地』の全てで、都市国家市民達は、一致の誓いを共にする義務が有るのが、法として確立されています」
「全ての場所で、都市国家市民達は、実際に、この一致の誓いを誓っています」
「もちろん、(ギリシャ人の一致の誓いは、)都市国家市民達が皆、同一の合唱隊だけに投票したり、同一のフルート奏者だけをほめたり、同一の詩人だけを選んだり、同一の快楽だけに制限したりするのではなく、ただ法に従う事を意味しています」
「なぜなら、最終的に、都市国家市民達が法に従っている国家は、最強である事と最も栄える事を証明するからです」
「一致が無いと、国家を十分に統治できないし、家族を十分に統治できないのである」
「また、私生活に目を向けても、人に有る庇護のうち、何が、法に従うよりも優れているというのか? いいえ! 法に従う事は最高の庇護と成る!」
「法に従う事は、人にとって、罰に対する予防策である」
「法に従う事は、人にとって、社会の手によって与えられる、栄光を保証してくれる」
「法に従う事は、人にとって、迷わずに法廷という迷路を通過できる道の道しるべであるし、敗訴に対する安全であるし、勝訴を保証してくれる」
「財産であれ、息子や娘であれ、最も尊重している預けものの守護者を探している場合に、人々が信頼して目を向けるのは、法に従っている都市国家市民である」
「国家の全ての人々の目から見て、法に従っている国民だけが、信頼に値する」
「法に従っている国民だけが、両親、血族達、従者達、友人達、同胞の都市国家市民達、外国人達といった全ての人を公平に扱うと信頼できる」
「一時的な停戦や平和条約を解決するために、敵が最速で信頼する相手は、法に従っている国民である」
「外国人達は、法に従っている国民の味方に成って、法に従っている国民の味方として戦いたいと思う」
「味方の諸外国が最も自信を持って(攻撃)軍の指揮や、守備隊の指揮や、国自体を任せる相手は、法に従っている国民である」
「また、『感謝して(自分からの)思いやりに報いてくれる』と信頼できる相手は、法に従っている国民である」
「そのため、感謝の気持ちに満ちているだけの他の人々よりも、法に従っている国民は、『思いやり深く扱ってもらえる』と確信できる」
「法に従っている国民は、最も望ましい友人である」
「法に従っている国民は、他の全ての人々にとっての敵ですら敵対を避ける相手である」
「明らかに、法に従っている国民は、外国が争う事を選ばない相手である」
「多数の友人達に囲まれて守られた、敵がいない、法に従っている国民の性格には友人や味方に成らざるを得ない魅力が有って、法に従っている国民の前では、憎悪や敵意が徐々に消えます」
「では、ヒッピアスよ、私ソクラテスは、自分の務めを果たしました」
「前述が、『法に従う事と、正義は、意味が同じ言葉である』という私ソクラテスによる立証です」
「もし反対の意見を持っているなら、教えてください」
すると、次のようにヒッピアスは話した。
「いいえ。神に誓って! ソクラテスよ、私ヒッピアスには、正義についての、あなたの話に対して、反対の意見を持つつもりは有りません」
次のようにソクラテスは話した。
「では、ヒッピアスよ、あなたは、いくつかの不文律の法に、気づいていますか?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「ええ、世界の全部で、同一の意味で、(人は、)不文律の法を持っています」
(次のようにソクラテスは尋ねた。)
「では、不文律の法について、『人が不文律の法を作った』と主張できますか?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「いいえ。どうして人が不文律の法を作れたであろうか!? いいえ! 人が不文律の法を作ったのではない!」
「なぜなら、どうしたら、世界の果てからでも全ての人が集合できたというのか? いいえ! 世界の果てからでも全ての人が集合できる訳が無い!」
「もし全ての人が集合できても、全ての人が唯一の話に一致できませんよね? はい!」
(「もし全ての人が集合できても、全ての人が相互に理解し合うのは困難であろうし、全ての人が話す言語は唯一ではありませんよね? はい!」※別の版)
次のようにソクラテスは話した。
「では、何者が『不文律の法の創造者である』と、あなたヒッピアスは信じているのですか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「私ヒッピアスとしては、『神々が人のために不文律の法を創造した』と考えています」
「また、『全ての場所で、神々を畏敬する事は、第一の最重要な法であり慣習(、不文律の法)である事』が、『神々が人のために不文律の法を創造した』事の証拠であると考えています」
次のようにソクラテスは話した。
「では、私ソクラテスが思うに、両親を敬う事も、全ての場所で慣習的な不文律の法ですよね?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「はい。両親を敬う事も、不文律の法です」
次のようにソクラテスは話した。
「では、私ソクラテスが思うに、親子間の近親相姦の禁止も、不文律の法ですよね?」
次のようにヒッピアスは話した。
「いいえ」
「この問題で、私ヒッピアスは、あなたを止めます。ソクラテスよ」
「親子間の近親相姦の禁止は、神による不文律の法であるとは、私ヒッピアスには思えないのですが」
(次のようにソクラテスは尋ねた。)
「えっ! なぜですか?」
(次のようにヒッピアスは答えた。)
「なぜなら、親子間の近親相姦の禁止に違反している者どもが稀にいるのに、私ヒッピアスは気づいているからです」
次のようにソクラテスは話した。
「ええ。しかし、人々が違反している、その他の善い多数の法も存在しますよね」
「私ソクラテスが思うに、神による法への違反に対して罰が加えられるのは、確実である」
「人が正義の手を密かにすり抜けて罰を受けずに人による法を違反できる、のと同様には、神による法への違反者には逃げ場が無いのである」
次のようにヒッピアスは話した。
「では、親子の関係で性交する者どもが受ける不可避の罰とは、どういった物ですか?」
次のようにソクラテスは話した。
「全ての罰のうち、最大の罰である」
「なぜなら、出産で人が被り得る最悪の災いは奇形児ですよね?」
次のようにヒッピアスは話した。
「しかし、どうして、親子で近親相姦する者どもは、(男性が)良い血筋であったり、良い血筋(の女性)から産んだりして、妨げが何も無いのに、(最悪の)災い(である奇形児)を産んでしまうのですか?」
次のようにソクラテスは話した。
「実に、なぜなら、良い子を産むためには、両親が良い血筋で健康である事が必要であるだけではなく、両親の両方の肉体が全盛期である、と同時に、両親の両方の肉体の気力が必要だからである」
「『全盛期の肉体の精子は、未熟な肉体の精子や、全盛期を過ぎてしまった肉体の精子と、同じ品質である』などと、あなたヒッピアスは思うのですか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「いいえ。『全盛期の肉体の精子は違う』のが当然と考えるのが論理的です」
次のようにソクラテスは話した。
「では、どちらが、より良いですか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「明らかに、全盛期の肉体の精子のほうが、より良いです」
次のようにソクラテスは話した。
「『未熟な肉体の精子や、全盛期を過ぎてしまった肉体の精子は、劣っている』と思いますよね?」
次のようにヒッピアスは話した。
「『未熟な肉体の精子や、全盛期を過ぎてしまった肉体の精子が良いのは、最も有り得ない』と思います」
次のようにソクラテスは話した。
「では、未熟な肉体や、全盛期を過ぎてしまった肉体と性交する方法は、子を産むには悪い方法ですよね?」
次のようにヒッピアスは話した。
「はい。未熟な肉体や、全盛期を過ぎてしまった肉体と性交する方法は、子を産むには悪い方法です」
次のようにソクラテスは話した。
「では、奇形児は、するべき方法の通りに産み出されなかったのですよね?」
次のようにヒッピアスは話した。
「『そうである』と私ヒッピアスには思われます」
(次のようにソクラテスは尋ねた。)
「では、親子での近親相姦が、奇形児を産むのですよね?」
(次のようにヒッピアスは応えた。)
「私ヒッピアスも、そのソクラテスの意見に同意します」
次のようにソクラテスは話した。
「ええ。善い物事には善い物事を返し、思いやりには思いやりで返すのは、普遍的に守られている慣習(、不文律の法)です。そうではありませんか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「はい。慣習(、不文律の法)の一つです」
「しかし、この慣習(、不文律の法)も違反されやすいです」
次のようにソクラテスは話した。
「恩へ報いる法に違反している人は、自分が孤立して罰を受けます」
「恩へ報いる法に違反している人は、善友を失ってしまいますし、(友人に)求めた人が自分を思いやってくれない羽目に追いやられてしまいます」
「また、交流して自分を思いやってくれるような人が、自分の善友には成ってくれない羽目に成ってしまいます。そうではありませんか?」
「実に、自分が恩人に対して思いやりを返さなかったら、自分による恩知らずのせいで恩人が自分を憎悪してしまって、恩人との交流による多大な利益を目当てにして、それでも、自分は必要な者として(自分を憎悪している)恩人を追い求め、つきまとう必要が有ります。そうではありませんか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「はい。ソクラテスよ」
「前述の全ての場合において、『神の力の暗示が存在する』と私ヒッピアスは認めます」
「『(不文律の)法が違反への罰を備えているのは、(不文律の法の)立法者が、人という種類よりも上位の種類の者(である神)である事を暗示している』と私ヒッピアスは思います」
次のようにソクラテスは話した。
「では、ヒッピアスよ、あなたの意見では、神々による(不文律の)法は正しいのでしょうか? それとも、正義の逆である悪でしょうか?」
次のようにヒッピアスは話した。
「神よ! ソクラテスよ、正義の逆である悪の訳が有りません!」
「なぜなら、神ではない、その他の全ての者が法律を正しく作るのは、到底、不可能だからです」
次のようにソクラテスは話した。
「では、ヒッピアスよ、『法に従う事と、正義は、意味が同じ言葉である事は、良く神々御自身の意に適っている』と思いますよね?」
前述のように、ソクラテスは、言葉による教えと、行動による見本を、ソクラテスに近づいた人達をより正しくするために役立てた。




