表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/39

第三巻 第六章 (国家の指導者に必須の知識)(「一事が万事」)

 第三巻 第六章 (国家の指導者に必須の知識)(「一事が万事」)(知識外についての言動は危険)


 アリストンの息子であるグラウコンは、国家の指導者の地位を獲得したいという情熱をとても抱いてしまっていたので、何ものもグラウコンを妨げる事ができない始末であった。

 実に、グラウコンは、未だ二十歳に成っていないにもかかわらず、公に演説を行いたがってしまった。

 グラウコンは笑いものにされて演壇から引きずり降ろされていたが、グラウコンの友人達や血縁者達がグラウコンを止めようと試みても無駄だった。

 (グラウコンの叔父であるカルミデス、)グラウコンの祖父である同名のグラウコンの息子であるカルミデスと、グラウコンの弟であるプラトンのおかげで、若者グラウコンに好意的な興味を持っていた、ソクラテスだけが、グラウコンの制止に成功した。

 次のようにソクラテスはグラウコンを制止した。

 ソクラテスは、グラウコンに同調して、まず、話をグラウコンに聞いてもらうために、いくつかの次のような言葉で、グラウコンを引き留めた。

 (ソクラテスは、グラウコンに同調して、まず、グラウコンが聞く事しか選べない次のような言葉で、グラウコンに話しかけて、グラウコンを引き留めた。※別の版)

 (次のようにソクラテスは大きな声で話しかけた。)

「ああっ、グラウコンよ、それでは、国家の指導者に成る事を決意したのですか?」

 次のようにグラウコンは話した。

「ええ、ソクラテスよ、私グラウコンは決意しました」

 次のようにソクラテスは話した。

「また、何と気高い目標だ!」

「そもそも、何か、もし人が『気高い』と呼ばれるのに値するのであれば」

「なぜなら、」

「もし、あなたグラウコンが目的を成就すれば、結果として、」

「あなたグラウコンは、昼が夜のように成るように自分の全ての望みを満足させる事ができるだけではなく、友人達に利益をもたらせる地位にいる事に成るであろう」

「あなたグラウコンは、あなたの父の家(の栄光)を高めるであろう」

「あなたグラウコンは、祖国アテナイの栄光を高めるであろう」

「最初は都市アテナイで高名に成るであろうし、次にギリシャ人が『ヘラス』と呼んでいる『ギリシャ人の地』で高名に成るであろうし、最後に多分テミストクレスのようにギリシャ人以外の間ですら有名に成るであろう、というように、三度、あなたグラウコンは有名に成るであろう」

「実に、ここでも、あそこでも、あなたグラウコンは、どこにいても、全ての人に注目されるであろう」

 グラウコンはソクラテスのその言葉に聞きほれて、グラウコンの心は思い上がりで膨らみ、グラウコンは喜んでソクラテスの話を聞くために留まった。

 すぐに、次のようにソクラテスは話を続けた。

「では、グラウコンよ、あなたは、都市国家アテナイから栄光を受け取りたいと熱望しているのだから、都市国家アテナイに利益をもたらす必要が有るのは、明らかですよね? そうではありませんか?」

 次のようにグラウコンは話した。

「疑い無く、そうですね」

 (次のようにソクラテスは話を続けた。)

「では、全ての神聖であるものにかけて! あなたグラウコンは、秘密にせず、『第一に、国家に利益をもたらす、どんな方法を提案するのか?』を教えてください。あなたグラウコンの(政策の)起点は、どういった物ですか?」

(「では、全ての神聖であるものにかけて! あなたグラウコンは、秘密にせず、『国家に利益をもたらす方法の起点は、どういった物であるのか?』を教えてください」※別の版)

 グラウコンが、まるで今、初めて「(政策の)起点は、どういった物であるべきか?」を熟慮しているかのように、口を堅く閉ざしたままでいると、次のようにソクラテスは話を続けた。

「多分、もし、あなたグラウコンが友人の財産を増やしてあげたいと望んだら、友人の財産を増やしてあげようと試みますよね? そうではありませんか?」

「そのため、多分、あなたグラウコンは、国家(自体)の財産を増やしてあげようと試みるつもりなのですよね?」

 (次のようにグラウコンは答えた。)

「確かに、そうです」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、『国家の収入が増えるのに比例して、より豊かに国家は発展する』と思って良いですよね?」

 次のようにグラウコンは話した。

「少なくとも、十中八九、そうだと思います」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、どうか、『どのような収入源から国家の収入は現在、得られているのか?』、また、『国家の収入の現在の規模は、どれくらいか?』を教えてください」

「疑い無く、あなたグラウコンは、もし国家の収入のうち何かが不足したら不足額を補充できるように、また、もし何らかの理由で無視されていた国家の収入が有れば何らかの新しい法律の条項を作(って課税す)る事ができるように、国家の収入という問題を用心深く調べましたよね」

(「疑い無く、あなたグラウコンは、もし国家の収入のうち何かが不足したら不足額を補充できるように、また、もし課税の対象から抜けていた不注意で見落とされていた他のものが有れば新しい法律へ交代させて課税する事ができるように、国家の収入という問題を用心深く調べましたよね」※別の版)

 次のようにグラウコンは話した。

「いえ、正直に話すと、私グラウコンは、これらの国家の収入の問題について、全く調べた事がありません」

 (次のようにソクラテスは話した。)

「もし、この国家の収入という点について忘れていても、心配しないでください(。なぜなら、)」

「国家の支出項目を調べているならば人々の期待に応える事ができます」

「当然、不要である全ての支出を撤廃するように提案できますよね?」

 次のようにグラウコンは話した。

「ええと……。いいえ」

「(神に)誓って、私グラウコンは、国家という問題のうち、(一方の収入だけではなく、)他方の支出も、どちらも未だ調べた事がありません」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、国家をより富ませるという問題を当分の間は延期しましょう(。なぜなら、)」

「収入と支出について知らずに、国家をより富ませるという問題に本気で対処する事は、当然、不可能だからです」

 (次のようにグラウコンは話した。)

「ですが、ソクラテスよ、敵の金銭によって国家を富ませる事は可能ですよね!」

 (次のようにソクラテスは答えた。)

「ええ、確かに、万が一、敵を圧倒した場合には(可能です)」

「しかし、(敵に)負けた場合には、(自国が)所有していたものを喪失する事も有り得るのです」

 (次のようにグラウコンは応えた。)

「あなたソクラテスの意見は正しいです」

 (次のようにソクラテスは話を続けた。)

「そのため、政治家は、どの敵と戦うか決める前に、自国側が優勢の場合には戦争に着手する情勢へ変えるために助言による権力を振りかざす事ができるように、自国と敵国の相対的な力を知るべきなのです」

「また、逆の場合には(、自国が劣勢の場合には)慎重さを発揮する事を選んで主張できるように(、同じく、自国と敵国の相対的な力を知るべきなのです)」

 (次のようにグラウコンは答えた。)

「あなたソクラテスは正しいです」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、私ソクラテスと、あなたグラウコン自身のために、まずアテナイの陸軍と海軍の軍事力を、そして諸々の敵国の陸軍と海軍の軍事力を挙げていってください」

 次のようにグラウコンは話した。

「神よ!」

「準備無しでは、すぐには、話す事ができません」

 (次のようにソクラテスは言い加えた。)

「または、もし、あなたグラウコンが自国と諸々の敵国の陸軍と海軍の軍事力の数値を紙に書いて学んでいたのであれば、その数値を書いた紙を提出しても良いです」

「私ソクラテスは、あなたグラウコンが提出するかもしれない紙の内容が分かると、とても安心できるはずです」

 次のようにグラウコンは話した。

「いいえ、(神に)誓って、私グラウコンは紙に書いて自国と諸々の敵国の陸軍と海軍の軍事力について学んだ事は未だ全く無いのです」

 次のようにソクラテスは話した。

「ええ、では、とにかく、『処女演説』、『初当選者による最初の演説』で、平和や戦争という話題についての助言を営むのを延期しましょう」

「戦争という問題は大きいので、あなたグラウコンという国家の指導者には時期尚早で、あなたは、戦争や平和という問題について未だ調べた事が全く無いんですよね」

「しかし、ねえ、きっと『あなたグラウコンは、とにかく、国防について学んでいる』、また、『あなたは、有用な砦や前哨基地の数と、不要な砦や前哨基地の数を、正確に知っている』と私ソクラテスは思っています」

(「しかし、ねえ、きっと『あなたグラウコンは、とにかく、国防について学んでいる』、また、『あなたは、有利な位置に在る砦や前哨基地の数と、不利な位置に在る砦や前哨基地の数を正確に知っている』と私ソクラテスは思っています」※別の版)

「あなたグラウコンは、どの砦の守備隊が十分に強く、どの砦の守備隊が不完全であるかを教える事ができるはずです」

「また、あなたグラウコンは、有用な守備隊の増員と、不要な守備隊の一掃を支持して、あなたの助言という権力を振りかざす用意をしてありますよね?」

 次のようにグラウコンは話した。

「ええ、『守備隊を全て一掃しなさい』というのが私グラウコンの助言です」

「実に! 守備隊がもたらす可能性が有る善いもののために! 諸々の農業地域の財産が(敵国の軍隊に)簡単に盗まれてしまう程度にしか(守備隊の)防衛力は維持されていないのです」

 (次のようにソクラテスは尋ねた。)

「ですが、『仮に、あなたグラウコンが守備隊を一掃してしまったら、結果は、より悪く成ってしまうのではないだろうか?』と、あなたは考えませんか?」

「全ての悪人が思い通りに自由に完全に(アテナイの財産を)盗んでしまいませんか……?」

「しかし、『こんな意見は、(あなたグラウコンが、)個人的な視察から得た結果なのですか?』と私ソクラテスは尋ねても良いでしょうか?」

「あなたグラウコンは自ら赴いて守備隊について調べた事が有るのですか?」

「さもなければ、あなたグラウコンの言った通りに『(自国の財産が簡単に盗まれてしまう程度にしか)守備隊は全て、維持されていない』と、あなたは、どのようにして知ったのですか?」

 次のようにグラウコンは話した。

「私グラウコンは、『そうである』と推測しているのです」

 次のようにソクラテスは話した。

「ええ、では、推測の域を出ない間は、国防という問題について、助言する事を延期しましょう」

(「事実、真実を知るための時間は十分に有るだろう」)

 (次のようにグラウコンは応えた。)

「多分、その時まで待つのが、より良いでしょう」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、(アテナイには)諸々の鉱山が有りますが、『あなたグラウコンは、なぜ(アテナイ所有の)諸々の鉱山が以前よりも(鉱物資源の)産出量が少ないのか話す事ができるほど(アテナイ所有の)諸々の鉱山を直接、訪ねた事が無い』と私ソクラテスは当然、知っています」

 (次のようにグラウコンは答えた。)

「ええ、いいえ。私グラウコンは自ら、そこ(、アテナイ所有の諸々の鉱山)にいた事が有りません」

 次のようにソクラテスは話した。

「神よ!」

「皆の話によると、(鉱山は)健康に悪い地域です」

「そのため、アテナイの諸々の鉱山の鉱物資源の産出量の減少という話題についての助言を求められる機会が来たら、あなたグラウコンには、(『アテナイの諸々の鉱山を視察した事が無い』という、)お手軽な口実が有る事に成りますね」

 (次のようにグラウコンは答えた。)

「あなたソクラテスが私グラウコンを馬鹿にしているのを私は理解していますよ」

 次のようにソクラテスは話した。

「ええ、では、次の点を、『あなたグラウコンは怠った事が無い』と私ソクラテスは思っています」

「いえ、(それどころか、)あなたグラウコンは徹底的に調べた事が有って我々アテナイ人に教える事ができるだろう」

「農業地域からの穀物の供給、備蓄は、どのくらいの期間、都市国家アテナイを支える事ができますか?」

「『都市国家アテナイで、この(食料という穀物という)最重要な必需品が不足しないためには、一年間で、どのくらいの量が必要か?』というのを今までに、あなたグラウコンは十分に知っているはずですが」

「それどころか、あなたグラウコンは、完全な知識によって、自国アテナイを助けたり救ったりする事ができる、(食料という)非常に命に関わる問題についての助言を与える地位にいるだろう」

 (次のようにグラウコンは答えた。)

「もし前述の全ての、細部にまで注意を払う義務が有るならば、これ(、国家の指導者)には、膨大な務めが有るのですね」

 次のようにソクラテスは話した。

「他方、第一に、必要なものについて知らなければ、そして、第二に、必要なものを一つずつ徐々に補充するために労苦しなければ、人は、自分の家や自分の財産すら十分に管理できないのである」

「なぜなら、この都市国家アテナイは一万を超える多数の家庭(という小さい社会集団)で構成されてい(る国家という大きい社会集団であ)る」

「そのため、多数の家庭の全てに同時に細部にまで注意を払う事は簡単ではない」(国家の指導者の務めは簡単ではない。)

「なぜ、あなたは、これらの(一万を超える家庭の)うち、少なくとも一家庭の財産を増やす試みを自ら実践しないのか? その『一家庭』とは、あなたグラウコンの叔父の家を指しています」

「(あなたは、)務めを放棄しています」

「さらに、もし一つの事で、あなたの力が十分であれば、あなたは、より多数の事を引き受ける事ができる事に成るのである」(「一事が万事」である。)

「もし、あなたが一つの事を改善できなければ、どうして多数の事で、あなたは成功できると期待なんかできるのか? いいえ! 期待できない!」(「一事が万事」である。)

「もし、ある重さのものを運ぶ事ができない人が、二倍の重さのものを運ぼうと試みたら、何と愚かな人である事か!」

 次のようにグラウコンは話した。

「いえ、私グラウコンとしては、もし私の助言を聞き入れるように(ソクラテスか、誰かが)私の叔父を説得しさえしてくれたら、私は自発的に十分に私の叔父の家を助けます」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、あなたは、自分の叔父を説得できない場合、『叔父などの全アテナイ人を自分に従わせる事ができるだろう』と思うのですか?」

 (次のようにソクラテスは言い加えた。)

「名誉、名声を熱望して、逆に、不名誉な人、評判が悪い人に成らないように気をつけなさい、グラウコンよ」

「『人にとって、自分の知識の範疇を超えて話したり行動したりしてしまうのは、何と危険な事であるか』分からないのですか?」

(「『人にとって、知らないものについて話したり、知らないものに手を出したりしてしまうのは、何と危険な事であるか』分からないのですか?」※別の版)

「明らかに自分の知識の範疇を超えて話したり行動したりする者どもについて、知られている事実、真実を挙げると、」

「その『自分の知識外のものについて話したり行動したりする』という理由で、自分の知識外のものについて話したり行動したりする者どもは、『称賛を得ている』と言うべきですか? それとも、『非難を受けている』と言うべきですか? 非難を受けている!」

「(人は、)自分の知識外のものについて話したり行動したりする者どもをとても、ほめますか? それとも、軽蔑して嫌いますか? 軽蔑して嫌う!」

「また、さらに、自分が話したり行動したりしている物事について知っている人達について考えてみてください」

「そうすると、私ソクラテスは大胆にも言いますが、『全ての種類の事業において名声と称賛を享受する人達は、(神から)無上の知恵を授かっている者達の位階に属している』と発見するでしょう」

「一方、逆に、評判が悪い者ども、劣悪な者ども、軽蔑に値する劣悪な者どもは、無知、愚鈍さから生じる」

「そのため、もし、あなたが熱望しているものが、政治家としての名声と称賛であるならば、一つの事の達成を確実にするように試みてください」

「言ってみれば、あなたの中に有る知識、あなたの範疇に有る知識は、あなたがしたいと望むものについての知識なのです」

(「言ってみれば、一つの事を達成しようと可能な限り試みてください。そうすると、その試みは、成し遂げるつもりである務めについて知る事、学ぶ事に成るのです」※別の版)

「実に、知識によって、都市国家アテナイという世界の他の全ての人達より自分を有名にしてから、もし大胆に自ら国政に関われば、あなたの大志の目的へ簡単に到達できても、私ソクラテスは驚かないだろう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ