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第二巻 第七章 (怠惰は駄目)(羊と犬の例え話)

 第二巻 第七章 (怠惰は駄目)(羊と犬の例え話)


 ソクラテスには、友人達の困難に対処する二つの方法が有りました。

 無知が原因である場合は、良識という薬によって、ソクラテスは、その(友人達の)困難に対処しようと試みました。

 また、貧困が原因である場合は、「自分の力に応じて、相互に助け合うべきである」と教える事によって(、ソクラテスは、友人達の困難に対処しようと試みました)。

 そして、ここで、私クセノフォンは、私が知っている、実際に起こった、いくつかの出来事を話しても良いだろう。

 例えば、ソクラテスは、「不機嫌」という気まぐれをわずらっている様子をしているアリスタルコスを偶然、見かけて、次のように、声をかけた。

「心に何らかの苦悩を抱えているようですね、アリスタルコスよ」

「もし、そうなら、その苦悩を友人と共有するべきです」

「多分、共有すれば、その苦悩の重さを軽くできるかもしれません」

 次のようにアリスタルコスは答えた。

「ええ、ソクラテスよ、私アリスタルコスは本当に深刻な苦境にいるのです」

「都市アテナイで党派抗争が宣言され、港湾都市ペイライエウスへ人々が殺到し、大規模な国外追放が起こってからずっと、私アリスタルコスは、捨てられてしまった貧しい女性の血縁者達の、かなり言いなりに成ってしまっているのです」

「姉達や妹達、姪達、従姉妹達が皆、保護を求めて、私アリスタルコスへ群がって来ました」

「本当に、私アリスタルコスには一つ屋根の下に十四人の自由民がいて、どう生きれば良いのか?」

「土地から(利益を)得る事はできません」

「土地は敵の(党派の)手中に有るのです」

「(賃貸用の)家を所有していても(貸し賃を)得る事はできません」

「なぜなら、アテナイ市内に残って暮らしている人はほとんどいないからです」

「家具?」

「買ってくれる人がいません」

「金銭(をとりあえず借りる)?」

「借りる事ができる相手がいません」

「あなたソクラテスでも、銀行、両替商から金銭を借りるよりも、路上で金銭を探して見つけるほうが可能性が良いだろう(ほどの国難なのです)」

「ええ、ソクラテスよ、何もしないで傍観して、血縁者達が餓死するのを目にするのは、実に、辛いですが、とても多数の人達を養うのは、こんな苦難では、不可能なのです」

 ソクラテスは、この話を聴いた後で、次のように、尋ねました。

「ケラモンは、養う必要が有る、とても多数の人達と共にいても、生活必需品を自分と、とても多数の人達に、どうにかして、もたらすだけではなく、かなりの金銭をどうにかして残せています」

「一方、あなたアリスタルコスは、(ケラモンと)同様の苦境にいて、『生活必需品の不足で、皆、餓死するだろう』と心配しているのですか?」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「神よ! ケラモンには奴隷しかいないが、私アリスタルコスには養う必要が有る自由民がいるのをあなたソクラテスは、なぜ理解してくれないのですか?」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、あなたアリスタルコスは、アリスタルコスの家の者である自由民達と、ケラモンの奴隷達の、どちらが、『より上位の人である』と、言うでしょうか?」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「疑問の余地無く、私アリスタルコスの家の一つ屋根の下にいる自由民達です」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、ケラモンは、ケラモンを支えてくれる下位の人達と共に、何不自由無い生活をしているはずであるが、あなたアリスタルコスと、上位であるアリスタルコスの家の者達が、苦境にいるのは、恥ずかしくないですか?」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「確かに、そうですね。ケラモンには養う必要が有る一群の手工業者しかいないのに、私アリスタルコスと、私の家の者は、(奴隷ではなく)自由で、高い教養が有ります」

 次のようにソクラテスは話した。

「手工業者とは、どのような者でしょうか?」

「『手工業者』という名前は、全ての種類の役に立つ商品を作る事ができる人の全てに当てはまりませんか?」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「確かに」

 次のようにソクラテスは話した。

「大麦の粗引き粉は、役に立つ商品です。そうではありませんか?」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「抜群に、そうです」

 次のようにソクラテスは話した。

「また、パンも(役に立つ商品)ですね?」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「劣らず、そうです」

 次のようにソクラテスは話した。

「ええ、では、男性用や女性用のマント、上着、肌着は、どう思いますか?」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「ええ、マント、上着、肌着は、大いに役に立つ商品です」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、あなたアリスタルコスの家の者は、これらの商品の全ての作り方を知らないのでしょうか?」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「逆に、私アリスタルコスは、『私の家の者達は、これらの商品の全てを作る事ができる』と思います」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、これらの商品のうち一つだけである、大麦の粗引き粉の店によって、ナウシキュデスは、自身と召使い達を養っているだけではなく、さらに多数の豚と牛を養い、頻繁に慈善行為で国に寄付するほど大きな利益を出しているのを、あなたアリスタルコスは知らないのですね」

「一方、パン工場によって、家の全ての人を養えるよりも多くの利益を出して、何不自由無く暮らしている、キュレボスという人もいます」

「また、コリュトスのデメアスは、マントの商売によって、生計を立てています」

「また、メノンは、上着屋として、生計を立てています」

「そして、また、メガラ人の大半は、肌着を作って、生計を立てています」

 次のようにアリスタルコスは話した。

「神よ! ええ! (知っています!)」

「メガラ人は、働く事を強制してメガラ人が気に入っている物を何でも作らせるために、一群の外国人を購入して雇いました」

「(しかし、)言うまでも無いが、私アリスタルコスの女性の血縁者達は、自由民なのです」

 次のようにソクラテスは話した。

「では、『あなたアリスタルコスの家の者である女性達は自由民で血縁者である』という理由で、『あなたアリスタルコスの女性の血縁者達は、食べて寝る以外の事をするべきではない』と思うのですか?」

「または、『時間と関心を生活の役に立つ熟達しているわざに払う人達よりも、私ソクラテスは一般的な自由民について話しますが、食べて寝るだけして生きる(一般的な自由民の)人々は、より幸せに生きて、(神から、)より多くほめられるべきである』というのが、あなたアリスタルコスの意見なのでしょうか?」

「この世界で、あなたアリスタルコスが理解(、誤解)したのは、『十分に知るべき事を学ぶために、そして、教わった知恵を思い出すために、または、肉体の健康と強さのために、または、人生の魅力を人生にもたらす全てのものを獲得して保持するために、怠惰は役に立つが、労苦と学習は全く役に立たない』という事なのでしょうか?」

「あなたアリスタルコスは私ソクラテスに『アリスタルコスの女性の血縁者達は、商品の作り方を知っている』と言いましたが、商品の作り方をアリスタルコスの女性の血縁者達が教わった時、アリスタルコスの女性の血縁者達は、商品の作り方を、現実の利益に変える事ができない、無益な情報として学んだのでしょうか? または、正反対に、商品の作り方について、いつか真剣に扱うつもりである何物かとして、また、それから利益を獲得する何物かとして、学んだのでしょうか?」

「一般的に、人は、怠惰という方針によって、善い気質の人に到達しますか? それとも、人は、役に立つだろう物事に用心深く関心を向ける事によって、善い気質の人に到達しますか?」

「立って行動する事か、生存する手段に思いを巡らして腕を組んで何もしないで傍観して座る事の、どちらが、より多く、人が正義と正直において成長するのを助けるであろうか?」

「現状のままでは、私ソクラテスが間違っていなければ、あなた達、アリスタルコスと、アリスタルコスの女性の血縁者達の間で愛情、思いやりが失われて無く成るだろう」

「あなたアリスタルコスは『女性の血縁者達が重荷である』と感じずにはいられなく成ってしまいますし、そして、アリスタルコスの女性の血縁者達は『アリスタルコスは女性の血縁者達を重荷であると感じている』と理解してしまうに違いありません」

「諸々の状況のうち、これは危険な状況であり、この状況では、(双方共に他方への)憎悪と反感を増してしまう可能性が十分に有りますし、(双方共に)愛の既存の絆を断ち切ってしまう可能性が有ります」

(「諸々の状況のうち、これは危険な状況であり、この状況では、双方共に他方への憎悪と反感を増してしまう可能性が十分に有りますし、最初の思いやりの蓄えを使い尽くしてしまう羽目に成るだろう」※別の版)

「しかし、あなたアリスタルコスが女性の血縁者達の力のはけ口を与えるだけさえすれば、そうすれば、あなたは女性の血縁者達が、どんなに役に立つ事ができるか理解するし、あなたは女性の血縁者達が完全に好ましいと思うように成るだろうし、そして、女性の血縁者達は『女性の血縁者達はアリスタルコスを喜ばせる事ができる』と理解すると、恩人であるアリスタルコスを熱烈に抱きしめるだろう」

「このようにすれば、以前からの思いやりの記憶は、より甘美に成るし、あなたアリスタルコスは、思いやりから湧き出す恩恵を桁違いに増やせるだろう」

「結果、あなた達、アリスタルコスと、アリスタルコスの女性の血縁者達は、より親密で家庭的な愛の絆で結ばれるだろう」

「実に、アリスタルコスの女性の血縁者達は、もし(売春といった)全ての恥ずべき仕事をするように求められたら、(売春といった)恥ずべき仕事をするよりも、むしろ死を選ぶようにさせなさい」

「しかし、アリスタルコスの女性の血縁者達は、『女性にとって、最も愛されるし、最も適している』と見なされる真の技術と知識を知っている、ように思われます」

「言ってみれば、誰でも、我々、人は、知っている事を、実際、簡単に速く最も善く十分に成し遂げる事ができる」

「喜んで行える事は、美しい結果をもたらす」

(「喜んで行える事は、結果を簡単に速く喜ばしく効果的にもたらす」※別の版)

「そのため、あなたアリスタルコスと、アリスタルコスの女性の血縁者達に同様に利益をもたらすであろう事を、アリスタルコスの女性の血縁者達に教える事をためらうなかれ」

「十中八九、アリスタルコスの女性の血縁者達は、あなたアリスタルコスの求めに、喜んで応じてくれるだろう」

 (次のようにアリスタルコスは答えた。)

「ええ、(神に)誓って、私アリスタルコスは、あなたの、その話をとても気に入りました、ソクラテスよ」

「私アリスタルコスは、『(借りて)得た金銭を使い果たしたら、(金銭を借りても)返す事ができる(経済)状況ではないだろう』と分かっていたので、(金銭を)借りる気は今まで無かったのです。しかし、」

「今、私アリスタルコスは、(女性の血縁者達の)仕事用の資金を募るために、金銭を借りる気に成りました」


 その後すぐに、(アリスタルコスは、アリスタルコスの女性の血縁者達の仕事用の)資金を用意しました。

 (そして、アリスタルコスは、アリスタルコスの女性の血縁者達の仕事用の)羊毛を買いました。

 善良な人アリスタルコスの女性の血縁者達は働き始めました。

 そして、アリスタルコスの女性の血縁者達は、朝食ですら食べながら働き、(その日の)仕事が終わり切るまで延々と働いて、そうしてから、夕食を食べました。

 皆、笑顔が、不機嫌な顔に取って代わりました。(皆、不機嫌な顔から笑顔へ変わりました。)

 アリスタルコスの女性の血縁者達は、(アリスタルコスを)もはや疑いの目で見る事は無く、双方の目は幸せで満ちました。

 アリスタルコスの女性の血縁者達は、アリスタルコスが思いやってくれるので、アリスタルコスを敬愛するように成りました。

 アリスタルコスは、女性の血縁者達に協力者としての愛情を感じるように成りました。


 そして、ついに、アリスタルコスは、ソクラテスの所へ来て、大喜びで、どのように物事が(上手く)運んだか話した。

 次のようにアリスタルコスは言い加えました。

「今では、女性の血縁者達は、『アリスタルコスは、家の中で唯一の怠け者で、座ってパンを得るために何もしていないのにパンを食べている』と私アリスタルコスを非難してくるんですよ」

 次のように、ソクラテスは、アリスタルコスの話に応えた。

「犬の例え話を女性の血縁者達に教えては、どうですか?」


 昔々、伝説によると、動物達が(人と)話す事ができた時代に、次のように、ある羊が主人に話した。

「我々、あなたが所有している羊、あなたに羊毛と子羊とチーズを与える羊に、あなたは、羊が大地の表面からかじり取る草しか与えてくれないのは、何とも驚くべき事です、主人よ。しかし、こちらの、あなたの犬は、あなたに何も決して与えないが、あなたは、あなたが食べる分から(人の)食べ物を分けてあげます」

 その犬は、羊の、これらの言葉を聞いて、すぐに、次のように、答えました。

「ああっ、本当に、あなた達、羊を安全に健全に守っているのは、私、犬ではないか? あなた達、羊よ。私、犬が守っている、そのために、あなた達、羊は、盗人に盗まれもしないし、狼達に攻撃されもしないのである。なぜなら、もし私、犬が、あなた達、羊を警備しなければ、あなた達、羊は、殺される事を恐れて、野原で草を食べる事すらできなく成るだろう」

 「そうして、その羊は、(犬に)敬意を表して、羊よりも、犬に優先権を当然、与える事を認めなければならなく成った」と、この例え話では言われている。


「そのため、あなたアリスタルコスは、『例え話の犬のように、アリスタルコスは、女性の血縁者達の守護者であり監督者で、アリスタルコスのおかげで、女性の血縁者達は、悪事、悪事を行う者どもから守られているし、アリスタルコスに守られている、そのために、幸せに安全に、女性の血縁者達は働けるし、生きられるのである』と、かの羊の群れ(に例える事ができる、女性の血縁者達)に話しなさい」(羊毛製品を作るアリスタルコスの女性の血縁者達を羊に例えている。)

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