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さて、まさかの異世界にクトゥルフ神話が参戦しているという衝撃の事実が判明したのだが、本当に勘弁してほしいと思った。あの神話はダメだよ。ハワードさんとお仲間の狂気が襲ってくると考えるとガクブルものだよ。
しかしハスターという有名な一柱との出会いを考えると、それ程強い影響力があるとは考え難いのが救いだ。警戒は怠らないが。それでもSAN値チェックとか絶望ものだから。
ただ、クトゥルフと聞けば架空神話だ。それがこの世界に存在しているという事は、他の神話が存在する可能性は大いにある。
まぁ、その辺は今後に投げやって。
リアは帰りに祭壇を作る為の木材やら石材、粘土に工具に金具を買って、風で浮かべて持ち帰る。それから、庭に置いておき、設計図を描く。素人だが、これでもエルフの村で過ごしてきた経験がある。ある程度、木材を用いた建築物は作れるのだ。
そんな訳でガシャガシャと喧しくしていると、玄関からはクロエとアルエが出てくる。
「リアー、何してるの?」
側に置かれた木材やらを見てアルエは「小屋でも作るの?」と問いかける。
「違うよー、祭壇を作るんだ」
「祭壇?」
アルエが首を傾げる。帝国にはあまり宗教的な文化はなかったのだろうか? 一方元孤児院兼教会暮らしのクロエは「もしかして、宗教にでもハマった?」と恐る恐る聞いてくる。
「ねぇ、今すぐやめよ? 変な宗教にハマるリアなんて見たくないよ」
「え、リアが宗教に!? 騙されてるよリア、神様なんて気分屋なんだから祈るだけ無駄だよ。確かに私には幸運をくれたけど……」
アルエはリアとの出会いを最大の幸運だと考えているようで。それを嬉しく思うと思わず口元がニヤけてしまう。
「2人とも勘違いしてるぜ。ローゼライア様は知ってるだろ?」
「アルテイラじゃポピュラーな神様だよね。孤児院の隣にある教会もローゼライア様に毎日祈ってるし」
「帝国は宗教文化が薄いから、私はあんまり知らない」
「帝国だと知名度低いのか。まぁ、そのローゼライア様は全人類が尊敬してもいい程の偉大な神様だと判明してなー。折角だから御利益を願おうかと思って祭壇を作る事にしたんだ」
「そんなに凄い神様なの?」
「あぁ、迷宮で文献が見つかってな。一般公開はされないけど、もう世界を救ったと言っても過言ではない神話だった」
嘘ではあるが、ハスターからの情報と考えれば強ち間違いでもない。
クロエは元々、孤児院で暮らしていたので、お祈りの文化は身に染みている。そんなに凄い神様だったのか、もうちょっと真面目にお祈りしとけばよかったかなと思う。一方で話を聞いたアルエは思案顔で頷いた。
「そんなに凄い神様なら、リアの無事を祈る時とかにいいかも。私も手伝う」
「祈願祈祷するだけでも心持ちは変わるもんね。私も手伝う」
アルエには負けない。そんな気概でクロエも手伝いを申し出る。
「じゃ、今日はのんびりDIYといきますか」
子供達に釘打ちなど危ない事はさせられないが、まぁ外見の感想や意見を貰う分には良いだろう。そうして、3人は祭壇作りへと没頭していった。
……時に、リアはこの世界に来て50年程である。つまり、ぶっちゃけそこまで前世の記憶が抜けた訳ではないのだ。
だから、祭壇と言われれば自ずとこうなる。
「社だなこれ」
木で形作られた、前世の寺を小型にした見た目の木造建築。屋根には風で切ったり削ったりした瓦を粘土でペタリ、御神体を飾る空間へは小さな扉は両開きでアクセス可能であり、中にはローゼライアの銅像が飾られている。
手前には2.5メートル程の高さの鳥居。両端には石材を削って作った狐が鎮座していた。
社の至る所には、クロエとアルエが作った木製の小さな飾りが施されている。
「満足だ……」
やはり元が日本人だからか。この静謐さ落ち着くわとリアは思った。腕を組み頷くリアを見て、クロエとアルエも真似をしながら頷いた。
…………
携帯端末のカメラでパシャリ。SNSに『祭壇完成!!』と写真と一緒に投稿すると。
なんで祭壇?
見た事ないタイプの建造物。
なんかヤバいもの封印してそう。
壊したら呪われそう。
お前あの祭壇壊したんか!?
↑やめろやめろ
などの感想が来て。あぁ社のデザイン見て思う事は異世界人も変わらないのかと、元日本人としてはちょっとだけ嬉しく思った。
さて、ではさっそくお祈りを。この世界らしく膝をつき正座の体勢。そして胸の辺りで両手を握り合わせて祈る。
(大切な人達が厄介な事に巻き込まれませんように。大切な人達を護りきれますように)
ローゼライアに祈るリアを見て、クロエは(リアと恋仲になれますように)。アルエは(リアと既成事実が作れますように)と祈った。2人はまだ小学生なのに欲望マシマシである。アルエに至っては思考回路がやばい方向にいっている。
何度でも言うが、この世界では女の子同士でも子供が作れてしまう。アルテイラはかなり技術の発達した国なのだ。
故に変な知識が増えたアルエの欲望は天元突破している。リアがパソコンを貸してしまった弊害である。しかし他人の思考など読めない3人は静かに祈りを捧げた。




