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6話 王立魔術学院セフィーラ

学園編突入です。

学園と楽園って似てるのに天と地ほど違ってすごいと思いました。ちなみにもちろん学園が地です。地獄も兼ねた。

 鶴城 悠にとって、学校は憧憬の対象だった。

 幼い頃から研究機関で育った彼には自由がなく、同年代の子供と触れ合う機会もない。

 ただ日々の検査と、頭脳テストをこなすだけの生活。

 人として生きているのかも分からない。しかしそれに辛さを感じられるほど、彼の脳は発達していなかった。


 しかしそんな彼にも、いつしか感情が宿っていた。人並みの知識と、価値観が宿っていた。

 なにかに憧れを持てるほどの。

 そのキッカケを与えたある少女の話は、またいつか。

 

――



 「で、でけぇ……」


 王都・セフィー。

 ヴァハロア王国で最も栄える城下町であり、貿易の重要な拠点ともなっている。

 城と対をなすように建てられた王立魔術学院・セフィーラの存在が、このセフィーが『学問の都』とたとえられる所以だ。

 王立魔術学院セフィーラ。抱える生徒は今や1000人にも及ぶ、世界でもトップランクに位置する魔術学院。

 魔術学院と銘打たれてはいるものの、その科目は多岐にわたる。基本から上級までの魔術をはじめ、剣術、拳術などの格闘技術、掃除や裁縫などの家庭術など、技術的なもの。そして座学に関しても、その道で一流の講師が招かれる。

 最早この学校に入ること自体が名誉であり、この学校を卒業したとなれば、王宮からも引く手あまたのエリート生活が保証される。

 その王立魔術学院の前で、登校中の生徒たちの好奇の視線を背に、鶴城 悠は立っていた。

 感激しながらセフィーラを見上げる彼を見、となりに立つルミは呆れたような視線を向ける。


 「ちょっと、恥ずかしいからやめてよ。これでもあたしは成績優秀者で通ってるんだから、あまり恥をかかせないで。それに、今日は試験だのも含めた手続きだけで、登校は明日からで……」

 「て、言っても。ワクワクしちゃうんだから仕方ないだろ」 

 「はぁ……なんであたしがこんなヤツの案内を……。学校用の口調も疲れるけど、こいつといると更に疲れそう……」


 ため息をつきながら校門を抜けたルミに、悠は慌ててついていく。

 足早に進みながら、ルミは悠に目もくれず説明を始めた。


 「この学校は専攻する分野によって、学館と寮が別れているの。魔術専攻なら本館である『光輝館』。剣術、拳術なんかの格闘系専攻なら『黒鉄館』。家庭術、エンチャント術なんかの生産系は『緑華館』。行った学館によって、それぞれの更に専門的な授業が受けられるわ。ちなみにあたしは光輝館よ。……そう云えば、何を専攻するのかは決まってるの?」

 「そうだなぁ……まだ決まってないけど、俺としては魔法がいいかな」


 やっぱり異世界に来たからには、魔法を使いたいのが人間のサガだろう。

 悠は目を輝かせ、炎や水を手から噴出する自分を想像する。やっぱり格好良い、と、悠は素直に思った。

 受付にたどり着くと、ルミが書類を受け取る。そしてそこに『ユウ・ツルギ』と書き込んだ。

 書類を書きすすめながら、ルミは悠に言う。


 「あんた、剣に関してはアルミールさんにえらく才能を認められてたじゃん。そっちを目指せば?」

 「いや、男なら多分、誰だって魔法は使ってみたいしさ。それに……」

 「言っておくけど、どの学館にもそれぞれ入館試験があるわよ。しかも名門なだけあって、どれも高水準な素質が求められるし」


 悠は固まった。

 

 (……え? 推薦なのに試験あんの?)


 悠、装備がビキニアーマーだったこと以来の想定外。

 悠は悩んだ。いやそんなまさか、ありえない、だって推薦って何のためにあんの、もし魔力とかがなかったら問答無用で武術になっちゃうんじゃないの、そんなまさか……。

 思考がぐるぐると回る。しかし、書類を書き終えたルミが発したのは無慈悲な言葉だった。


 「確か魔術専攻の推薦での入館試験は、筆記と合わせて、ある程度の魔力量があるかどうかと、中級魔法を1つ使うこと、だったわね。武術専攻の場合は筆記が免除、Aランク冒険者の試験官との模擬戦で合否が決まるわ。いくら騎士団の推薦と云えど、名門に特例の中途入学となれば、当然ハードルは高いわよ」

 「魔力……ま、マジかぁ……」


 魔力というものがあることに興奮しつつ、悠は項垂れる。

 やっぱりそういう系だった。筆記は別に苦じゃないが、魔力を持っていることが条件となると話が違ってくる。

 悠はいわゆる、この世界にとってのイレギュラー。別世界から来た、本来なら存在するはずがない存在だ。 

 となれば、魔力という概念が彼に通用するかも怪しいのだ。魔力が一切ない、なんてことも普通にありうる。

 落ち込む悠にルミは少し息をつまらせ、繕うように言った。


 「ま、まあでも、別に専攻に対した意味はないわよ? 専攻以外のカリキュラムもちゃんとあるし、たとえ武術専攻に行ったとしても、魔術が学べない訳じゃないし。何なら先輩の顔面偏差値で決めてる人だっているぐらいだし? そんなわけで、気に病む必要はないわよ」


 ルミはそう言い、立ち上がった。

 そして書類を丁寧にバッグにしまうと、それを持って座ったままの悠に笑みを向ける。

 

 「――さて。それじゃあ、黒鉄館に向かいましょう。武器は支給されるけど、ポーションやらは自分で揃えて……」

 「……魔術専攻の試験だけど。どこで受けられるんだ?」


 悠の言葉に、ルミは手を止める。


 「……光輝館の測定室。でも、本気? こう言っちゃ何だけど、何年も訓練を重ねてきた一流魔道士たちが集まる魔術専攻は、田舎から出てきたあんたには厳しいと思うよ?」

 「知ってるよ。でも、受けてみたいんだ」


 悠は強い意思を持って、ルミにそう言った。

 本気を感じ取ったのかもしれない。ルミは悠の表情をしばらく見つめた後、ため息をついて言った。


 「まあ、受けるだけならいいか。着いてきて」

 「ああ」

 

 悠とルミは、光輝館に向けて歩み始めた。

 その先に何が待っているのか。彼らはまだ、知る由もない。

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