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18話 勝負の決着

昨日は更新できずすみません。

 今現在の状況。依然、悠たちが不利のままだ。

 と、云うのも、悠たちがガランたち相手に勝っている部分が殆どないのだ。全体的な火力、とれる手段の豊富さ、2人とも高水準の魔術使いであるガラン達は、最も重要なその2つで悠たちに勝っている。

 強いて言うなら悠の自己流魔術(オリジナル)である『マリオネット』の存在だが、作成期間の短さからほぼ即席とも言えるマリオネットは、頼り切るには少し厳しい。

 故に自然の流れで、悠は近接が少し弱いアリシア、遠距離型のシャルは近接主体のガランを相手にする構図ができあがっていた。

 

 「まさかあたしの魔術を全避けしてくるとはねー……。ま、そんぐらい普通だけど」

 「ふ、お前の遅い魔術なんか避けなくても当たんねえよ。手加減してるんじゃねえの?」


 悠の必死の挑発にも、アリシアは笑みで返す。

 あれ、こいつこんな余裕ある感じの奴だったっけ、と偏見の塊のような思考をしつつ、悠はアリシアに向けて飛んだ。

 木の剣を抜き、魔術を使うため構えられた手を狙って斬りつける。そこまでスピードはないものの一切の隙なく出されたその攻撃は、避けることのないアリシアの手にヒットした。


 「ふーん……中々やるじゃん」

 「なっ……!?」


 確かに、ヒットした。 


 アリシアの手は、悠の剣を軽々と受け止めていたのだから。


 素手で、しかもついさっきまで魔術を唱えていた人間が、思い切り振り下ろされた剣を受け止める。さすがにこれは、悠も予想外だった。故に、少し硬直する。

 その一瞬の隙を狙って、アリシアの魔術が飛んだ。炎の球が悠の頭目掛けて勢いよく飛び込むが、悠はギリギリのところで回避する。

 

 (女の方も近接出来んのか……!? あんなアホで、休日には毎週違う彼氏とデートしてそうな奴が……!)


 さっきから悠の偏見が酷いが、アリシアの攻撃はそれ程に強烈だ。

 ほぼノータイムで放たれる初級魔術に、その僅かな弱点を克服するかのような格闘術。ほぼ悠に何もさせる事無く、一方的に精神を削っていく。

 一応悠も先を読み、全て回避してはいるが、アリシアの連撃に、攻勢に転じる暇がない。格闘術に加え無詠唱魔術を使えるアリシアと、剣しか持たない悠が戦うのは中々にキツかった。

 アリシアの正拳が悠の顔面に放たれるが、悠は後方へと飛んで回避。だがその間に魔術を完成させていたアリシアが、水球を飛ばした。悠は剣で水球を叩き割り、更に後退する。

 

 「剣、使わないの? あたしばっかり攻撃してるけど?」

 「使わねえんじゃねえ、使えねえんだろうが。全く隙がねえから」


 悠が悪態をつくと、アリシアは笑う。


 「そうね。でも、あなたならもっと追い詰められるはずだけど」


 まただ。 

 悠の背筋を悪寒が走る。この世の全てを見透かしたようなアリシアの瞳のせいだろうか、それとも何か別の原因か。

 悠はアリシアの再度の攻撃を警戒しつつ、後方で戦うシャルに目をやった。


 (……! シャル……!)


 シャルもシャルで、ガランを相手に追い詰められている。

 否、悠はまだ互角に戦えている以上、そこまで追い詰められているとは言えないかも知れない。しかしシャルの方は、正真正銘のピンチだった。

 

 「オラ、どうしたぁ!? 来ねえのかよ!」

 「う、うぅ……!」


 涙をぽろぽろと流しながらも、なんとかぬいぐるみを操作してガランに特攻するシャル。 

 しかし、その爪による斬撃はいとも簡単に防がれた。

 シャルの表情が絶望に染まり、ガランはニヤリと笑む。


 「下んねーなぁ。お前、それでも魔術使いか? やっぱ出ねえ方が良かったんじゃねえか?」

 「……っ」


 まずい。

 悠は自身の判断を悔やんだ。アリシアが格闘術にも秀でている事を見抜けなかっただけでなく、相性の問題すらも間違えるとは。唯一の取り柄である頭脳を活かせなくてどうする、と、悠は自身を叱咤した。

 シャルは恐怖によるストレスで、もはや正常な判断が出来ない状態だ。となれば、元々薄かった勝ち筋が更に薄くなってしまう。

 悠とて解決したわけではない。アリシアの攻撃は依然続いているが、なんとか躱しきっているだけだ。もしガランとアリシアの攻撃を同時に捌かなければならない状況が、最悪の状況である。


 「そろそろ攻めてきたら!?」


 悠を狙って放たれた火球。悠は身を捻って避け、次の一撃を警戒する。

 

 「お前なあ、遠距離主体は嫌われるって知らないのか!?」

 「あたしは持てる力を使ってるだけさ。何も悪いことは……」

 「あっつぅ!?」


 後方にて、男の野太い声が聞こえる。 

 悠は振り返った。そこに立っていたのは、こちらに背を向けたガラン。

 背中側から放たれた攻撃には、流石に反応出来なかったようだ。


 「おいアリシア、何やってる!? 俺に当たったら意味ねえだろうがッ」

 「ご、ごめんガラン! 大丈夫!?」

 「大丈夫な訳あるかッ! 次やったら分かってんだろうなァ!?」


 ガランが荒々しくアリシアに吠え、再びシャルと対峙する。

 

 (連携が取れてない……?)


 まあ元々表面上だけの仲には見えていたが、それにしてもアリシアが、避けられたら仲間に当たる場所にわざわざ魔術を撃った事に、悠は疑問を抱いた。

 それに、先ほどから彼女が使用しているのは初級魔術だけ。まあこれは仕方のないことなのだが。

 この2人の間には、見えない大きな溝がある。悠はそう睨んだ。

 つまり、そこを利用することが打開へのキッカケとなる。


 「シャル! そのまま走れッ!! 後ろに向かってだ! 後……()()()()()()()()()()()使()()()

 「……はっ、はい!」


 悠の叫びに、涙を流して錯乱する寸前だったシャルは、正常な意識を取り戻す。

 そして迷うこと無く、ぬいぐるみを置いて、悠の云うとおりに走り出した。信頼関係の賜物だ。

 

 (なんだ……? 女だけ逃がそうとしてる、ってのか? ……フン、雑魚が一丁前に)


 「オイアリシア。お前はあの女を追え。そんで仕留めろ。分かったな」

 「あ、ああ! 分かった!」


 逃げるシャルに向けて魔術を放ちつつ、アリシアが彼女を追って走り出す。

 これで、悠の計画通りの構図が出来上がった。

 アリシアとシャル。そしてガランと悠。先ほどまでとは全く逆の相手と戦うわけだ。加えシャルが距離をとってくれている以上、無限の広さを持つ異空間において2つの戦いが干渉し合うことはない。

 ガランはアリシアを見送ると、剣を構え、悠に向き直って下卑た笑みを浮かべる。

 

 「悪いが、そろそろ飽きてきたんで終わりにするわ。どうせ負けんだから、避けんなよ雑魚」

 「……まあ、俺も勝てるヴィジョンが見えないし。別に良いよ」


 悠はため息をつき、仕方ない、という風にそう言った。

 思ったよりも簡単に引き下がった悠に、ガランは少し拍子抜けだった。しかし、それ以上に、自分を虚仮にした男が自分に負けを認めているのが愉しくて仕方がなかった。

 この戦いが終わった後どうするか、と考え、笑みが止まらない。


 「よし。……じゃぁ、死ね!」



 ガランが自身に身体強化魔術を掛け、思い切り跳躍する。先ほどの比にもならない程の速度、高所へ到達した。剣を抜き、悠を笑顔で見下しながら。

 画面外の生徒たちが見る中で、ユウ・ツルギの公開処刑を行うために。

 勿論殺しては反則なので、殺しはしない。メチャクチャ痛いし、恐らくもう一生動けなくなるだけだ。

 だが、あんなにも堂々とガランに喧嘩を売った悠が敗北すれば、生徒達もガランの実力をより一層恐れ、逆に悠を虐げるようになるだろう。

 そのために、全力で悠を痛めつける。

 愉しくて仕方がない。ガランの目には狂気が宿っていた。

 そして当然、もう既に下など見ていない。あまりに高所にい過ぎ、下の声など当然聞こえるはずもない。

 




 「ガランっ! ダメだ、あの女は手に負えない!」


 そう言いながら走ってきたのは、アリシアだ。

 悠が見れば、彼の予想通りに、シャルは大きな水球を作り出している。

 シャルは、魔術を放てはしない。しかし確認した通り、溜めることは出来るのだ。そうなれば、相手への牽制に使うことも出来る、というわけである。 

 悠はシャルを呼ぶように手招きした。水球は霧散し、悠のもとへとシャルが走ってくる。

 何もかも、彼の予想通りだ。


 もう既に、ガラン達は負けている。


 「あんたじゃなきゃ倒せない……どこ、ガラン!」

 「ガランは俺が倒したよ。今はもうここにはいない」


 悠が当然の様に言った。 

 アリシアはそんなはずない、嘘をつくなと叫ぶが、悠は答えず、機会を伺った。

 1メートル。また1メートル。どんどん、ガランと地面の距離が縮まっていく。

 着々と進む。悠の思惑通りに。


 「……ッ……真逆あんた、禁術を……! ……先生に聞いてくるっ」


 アリシアが、遠くから見守るリズの方へ走り出した。






 「――シャル!! ()()()()()!()!()

 「はいっ!! ユウさん!」


 シャルが、手を振り抜く。

 すると、走るアリシアに向けてクマが目にも留まらぬ速度で飛んでいった。

 そして、ガッチリと彼女の身体に抱きつく。

 重さはそこまででもないが、地面に固定されるように動かないクマのせいで、アリシアの動きが止まる。

 


 「なんっ……動けない!?」

 「……ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!? 避けろアリシア!!」



 ガランの叫びが響いた。

 アリシアは上を見た。

 相当の勢いをもって地面へ落下するガランの身体が、今更方向転換できるはずもない。















 どがあああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!


 轟音が響いた。

 見ていた生徒たちも、もはやどちらが勝利か確信していた。


 「……負けよ、負け。降参」

 「……そう言ってくれないと困る」


 そこにあったのは、倒れ伏すガランと、所々にキズを負ったアリシアの姿。

 そして、彼女の首筋に剣を突きつける、悠の姿だった。

 

 「――勝者、ユウ・ツルギ、シャル・ホワイト!!」




 リズの叫びが、異空間へと響く。

 またもや予想が当たってしまった事を、彼女は恍惚の表情で歓んでいた。

色々とお願いします。

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