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13話 作戦実行、前代未聞

今日は2話投稿。

 光輝館の図書館は、他の館の図書館とは一風変わっている。

 魔術専攻の学館だけあり、知識が重要視される光輝館には、様々なジャンルの本があるのだ。それこそ子供向けの絵本から、大賢者が執筆した秘蔵の魔術指南書まで、この図書館にない本など存在しないレベルで。

 国家機密にあたるものは無いものの、生徒が殆ど読まない専門書のエリアには、大昔の魔術に関する研究記録までもが存在する。


 「光輝図書館へようこそ、転入生さん。私は総司書の、フェルム・アプローです」


 図書館に足を踏み入れた悠に、黒い髪を腰まで伸ばした眼鏡の女性が微笑みながら言った。

 泣きぼくろが印象的な顔は色気に満ち、見上げるだけで破壊力を有する。紫色のセーターはその豊満な胸をより強調し、その上に色気を増していた。 

 

 「あの……昔の魔術研究記録を探しているんですけど。できれば、魔術が発見された時ぐらいのものを」

 「あら、珍しい。図書館に来る人があまりいないのに、その上に専門書をお探しなんて! これは、張り切って探してあげなくてはなりませんね」


 手を高く挙げ、えいえいおー! と、笑顔で言うフェルム。豊満な胸が、本に当たって揺れる。

 悠は垂れそうになった鼻血を瞬速で拭った。

 フェルムはカウンターから腰を上げ、図書館の奥へと向かう。広い図書館の中で本を探し歩く黒服のフェルムの姿は、悠から見ても画になる。


 「うーん、うーんしょ……」

 「……すみません、俺が」

 

 高い部分にある蔵書を背伸びで取ろうとするフェルムを見、悠は素早くフェルムが取ろうとしていた本を取った。

 フェルムは笑みを浮かべる。


 「あら、ありがとう」

 「いえ……」


 (かわいいいいいいいいいいいいいい)


 ちなみに悠の脳内は、現在大混乱だった。


 やがて、フェルムが取ろうとする本を悠が背伸びで取ったり、フェルムが転ぶのを予期して悠が下敷きになったり、フェルムが倒しそうな本棚の位置を微調整して転倒を防いだり……と、中々に大変な図書館探検を終え。

 悠とフェルムは、ひととおり探し当てた本を机に並べていた。


 「本当にありがとうね、助かったわユウくん」

 「いえいえ……本当に、フェルムさんにケガがなくて良かったですよ……」


 この短時間でいやにげっそりした悠が、苦笑しながらか細い声で言った。

 ……悠が余りにもげっそりしているが、その成果はちゃんと出ている。

 悠たちが探し当てた本は、どれも悠にとって有益な本ばかりだ。

 魔術の起源。そして魔術の変化の歴史や、魔術全てを網羅し、現在も見つけられた古代魔術が自動的に書き込まれている図鑑まで。

 フェルムが出したお茶を飲みながら、悠は本に目を通し始める。


 (全てを読んでいたら、とてもじゃないが終わらないな)


 悠は数が多い本を、置かれていた場所、そして表紙や裏表紙から、ある程度内容を予測。そして分類分けし、必要なものだけを並べていく。

 悠が今欲しいのは、具体的に言えば、魔術の起源に関するもの。彼が考えた『シャル強化大作戦』のために、魔術のでき方は非常に重要なのだ。

 やがて、見つけ出したのは一冊の本。

 その本は、かつて魔術を初めて創った科学者の日記だった。表紙は擦れてほとんど文字が見えないが、中はちゃんと読めるようになっている。

 初めて作られた魔術は、初級魔術の『ファイアボール』だったこと。魔術を使う時の注意点など、作者側からできるアドバイスを読み飛ばした後、悠の目当ての部分が見つかった。


 「魔術の()()()……これだ」


 そう。

 悠が探していたのは、魔術の創り方についての文献である。

 悠はシャルの為に、1から魔術を創るつもりなのだ。

 悠が持つ本に書いてある魔術の創り方は、魔術の創始者である科学者が魔術の作成に成功した経緯だ。厳密にはそれは正しい方法ではない。もっと簡単で、強力な魔術を創る方法も当然存在する。得てして初めというものは、後から超えられるものであるからだ。

 だが、今の悠には他の文献を探している時間がない。今ここにあるこの文献を参考に、やるしかないのだ。


 「やってやるさ……」


 悠はニヤリと笑むと、全ての解決のカギを持ってカウンターへ向かった。


――


 「リズ先生。創った魔術の試し撃ちをしたいんで、異空間開いてくれます?」

 「あのねえ。異空間魔術はこれでも使い手が少ないんだ。あまり下らない事に多用させないでほし……。……今、なんて?」

 

 悠が図書館で本を探し当ててから3日。

 職員室で、リズはそう言って咥えようとしたタバコを落とした。

 呆けた顔のリズに、悠は当然のように。


 「だから、()()()()()の試し撃ちを……」

 「はあああああああああああああああああああああああああっ!? ……あ、ゴメンナサイ……」

 

 リズが、職員室どころか学校中に響き渡る叫びを見せた。

 迷惑そうにする教師に、リズはペコペコ頭を下げる。ドン引きする悠に、鼻息を荒くしたリズが詰め寄る。その鬼気迫る表情に、悠は思わず後ずさった。

 いくらか声を落とし、リズはまくしたてる。

 

 「魔術を()()()!? 幾ら君だってそんな事は不可能だッ! 試算は? 演算は!? 魔術が使えない君に出来るのか!? 魔術は何よりも高度な計算式だ、はい作りましたなんて勢いで出来るもんじゃない! 天才科学者が何人か集まっても、完璧な形で1つの魔術を完成させるのに、少なくとも10年は下らないんだぞ! それを1週間もかからず成功させるなんて、馬鹿げてる!」

 「いや、でも出来ちゃったもんは出来ちゃったし……確かに理論上ではありますけど……」


 余程お怒りなのか、ツバを飛ばしまくってまくし立てるリズ。

 幾らキレイなお姉さんでも、それはちょっと興奮しないっつーか……と悠がバカなことを考えていると、リズがプンプン怒りながら魔術を発動する。

 すると、異空間への扉が現れた。


 「まあいいさ。君には、試験での実績があるからね。いくらふざけた事を言っていても、一応協力はしてやる。……失望させるなよ?」


 悠は礼を言うと、シャルとルミを呼びに行った。

  

 ……扉を前に、リズが思考を続ける。

 ぐるぐると歩き回るその姿は、いつもの知性を感じさせない。


 「ウソだ……僕でも不可能な事を、あんな子供が……ウソに決まって……あああ……」


 うわ言のように呟くリズを、同僚たちはお化けを見る目で見ていた。

明日は悠の創った魔術をお披露目!

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