ゴブリンは敵に入りますか?⑥
夜が明け、樹々の隙間から光が射し、目覚める。
俺はまた岩に立てかけられていた
って寝てるじゃねーか!
「今度はこっちが寝れねぇよ」とか言っといてご覧の有様だよ!
また寝てしまった、不眠症を知りたい…
見渡すがシャルルはいない。おいていかれた事はないだろう。流石に、多分、きっと
とか考えている内に
たったっ、とシャルルが駆けて来る。
ほら心配いらないだろ?
「おはようございます!」
な…何故俺が起きてるのがわかったし…
小声で喋ってましたよ?
ふふ、と笑うシャルル
やだ、恥ずかしい
「昨日いっぱい汗かいたから、気持ち悪くって…近くに川があったので水浴びをしてきたんです。」
少し離れた場所に川が見える
シャルルの肌は所々水に濡れ、髪の毛や服の張り付いた肌がいやらしい。
しかし丁度悪いタイミングで寝ていたんだな俺は…
自分の寝覚めの悪さが憎い…食欲はないが性欲と睡眠欲はきちんとあるらしい。
森を抜けて、教会に戻る俺たち
ゴブリンから逃げる際、必死だったので方角がわからなくなっていたのだが、シャルルが方位磁石のようなものを持ち出した。
「ここでも磁石は使えるんだな」
「帰還石という物で四属性の魔力を帯びた針がマーキングした場所へのほうか針が指すそうです」
帰還石という位だから使うとセーブした場所にひゅーん、と飛ぶのかと思ったが、そんな便利な物ではないらしい。
属性には強弱があり、例えば蒼属性は緋属性に強く、その方向へ針を示す。
針はより強い属性に反応するため、力場次第で役に立たなくなることも多い。
だから町などのマーキングポイントは計画して建てられているとか
ただの劣化磁石じゃん。不便だ
帰還石に導かれ森から出ると、一面に大草原。来る時は気にしなかったが鬱屈した森の中から出た直後だと素晴らしい解放感だ。
野を越え、丘を越えれば元来た教会がある。見下ろす景色はきっと素晴らしいものだろう。自然と足取りも軽くなる。
しかし丘を越え、目に入った景色はイケメン二人が草原に佇むという、なんとも絵になる風景だった。ちっ
「お疲れ様です。シャルル様」
「よくお戻りになられました。心配しましたよ?」
――違和感。
迎えなど教会に戻ってからでよいだろうに、何故こんなところで?
嫌な予感がする。
俺はイケメン運がないんだよ。
こいつらに関わると昔からろくな事がない。
「はいっ!ゴブリンを倒して、カードもゲットしてきましたよ!」
俺の心配をよそに、元気いっぱいイケメンに返事するシャルル
カードを見せるとイケメンの顔が驚き、歪む。
そして
シャルルが違和感を感じ取り、後ろに飛び退く。服の切れ端が宙に舞い、白い胸元からうっすらと紅が滲む
「エルンスト!何をしている!?」
「ルーザー、何を驚く?君も共犯者だろう?」
成る程、よくわかったよ。
イケメンは悪。はっきりわかんだね。
「確かに副団長の座は欲しい。だが殺すのはやりすぎだ!」
「アレを放った時点で覚悟は出来ていただろう。それにこんな物をゴリアテ様に見られてみろ。カード管理部である我々が疑われるのは必然!」
「もうあとには引けないんですよ…シャルル様」
イケメンは悪。はっきりわかんだね。
どうやらこの二人、シャルル(本物)が神官騎士になるのが気に入らないらしい。昨日のゴブリンは、恐らくこいつらが放った他のモンスター。
俺達が討伐を果たせず逃げ帰って来たと思ったら倒していたのでビックリ、というわけだ。
おまけにカードという証拠付きで
バレれば当然ただでは済まない。なにせあのゴリラの妹なのだ。
足を持たれて剣の素振りの練習台にされてもおかしくはない。俺のように
だからと言って斬りかかって来るか?普通
シャルルに剣を人に向ける事など出来ようはずがない。ひどく狼狽えている…当然だ。
ならば俺が人肌脱ぐしかないだろう
『おいガキ共…』
腹のそこから声をひねり出す。
出来るだけドスの聞いた声で。
『お前ら俺を殺す気でいるみてぇだが…俺も舐められたもんだな。』
しょぼいチンピラみたいだが、続ける。
自分の語呂の少なさが憎い
しかしシャルルは俺の意図を理解してくれた様で、剣の鍔で口元を隠す。目元を細め、身体を弛緩させ、『キャラを切り替える』
『お前らは俺の事を簡単に殺せる小娘だと思ってるようだが、実際はどうかな?俺は教会では猫を被ってるからな。』
そう。『シャルル』はゴリラの妹で、あの化け物を倒したんだ。
そしてこいつらは知らない。
『なんなら見せてやろうか?俺の力、疲れるから余りやりたくはないんだがな…』
くく、と付け加える。
小物臭やばいな、と思いつつも相手は警戒しているようだ。白い目で見られてなくて良かった。
『いいだろう見せてやる、我の力を』
シャルルが右手を振り上げ、横に振り下ろす。
一瞬、大丈夫ですか?と不安な目で俺を見るが大丈夫だ。多分
昨日は自らの意志をのせることで、あの攻撃を生み出した。
シャルルの素振りに俺の意志をのせる。
ここで引いてくれなければ戦いになる。シャルルに人殺しなんて、絶対にさせられない。
軽い素振りと共に、振り下ろされた刃は地面を走り、その先の岩を粉々にする。
ほっ、ちゃんと出てくれたか…
二人は驚き、声も出ないようだ。中々に気分がよい。
どっと力が抜けるが、まだ倒れるわけにはいかない。
『大人しく引け。二度と俺の前に姿を見せねば、水に流す…が向かって来るなら二度目はない』
というかもう撃ちたくない。予想以上に疲れるなこれは
「…成る程、確かにあの魔物はまぐれで倒せるほど甘くはない…だが!」
おいやめとけって
「もう後には引けぬのだ!!」
言うなり剣を抜き放ち、向かって来る。くそ、やばいな…逃げるか?
「そこまで!!」
野太い声が平原に響く、声の聞こえた方、丘の上から白馬に乗ったゴリ…アテがあらわれる。
「貴様らの企み、よ〜く聞かせてもらった。教会に戻り、沙汰を待て」
完全に絶望顔で戦意喪失の二人、俺の攻撃よりゴリラのが怖いのかよ。どんだけだよあのゴリラ…




