手詰まりの中に希望を
皆の攻撃により身体を削られた七色の異神は、段々と削られない部分が増えてきた。つまり、あの部分が七色の異神の本体と言えるだろう。
その大きさは五メートル程。ここでもダメージを与えられないとかだったら、困るところだったけど、皆の攻撃でダメージが与えられている。
「ハク、もう行って大丈夫」
「だね。イノ、リリィルーナの傍に居てね」
『うん……』
私は空に上がり、七色の異神に向かって飛んで行く。この状況で私がやるべき事は一つだけ。赫夜刀を持って、七色の異神に突っ込んで行く。七色の異神の攻撃が私にも向かって来る。
それをアテナさんが防いでくれる。更に、皆の攻撃が殺到して私への攻撃密度が落ちていく。
私は一気に加速して、七色の異神に赫夜刀を突き刺す。同時に七色の異神からの攻撃が来るけど、【夜霧の執行者】による夜霧化で無効化する。回数制限があるから何度も使えるものじゃない。
でも、初撃を防げれば問題ない。血液や影を使って私の身体を七色の異神に私自身の身体を巻き付けていく。これが私のスタイル。ダメージがしっかりと通るなら、私の吸血も全て通る。
七色の異神の力を吸収していく。同時にナイアルラトホテプが、私の中から出て来た。私の中で身体を癒していたナイアルラトホテプは、七色の異神に鋭い攻撃を繰り返していく。
七色の異神もナイアルラトホテプを危険視しているのか、攻撃がナイアルラトホテプに集中する。
いや、攻撃のいくつかは、ソルさん達にも向いている。比率がナイアルラトホテプの方に向いているという感じだ。
七色の異神の力は、どんどんと私に流れ込む。力を失う事で色も失い、色を失った場所を攻撃されれば、身体も失っていく。地上に落下する身体は、リリィルーナとイノが消滅させていく。
七色の異神は、どんどんと身体を削られ、力を失っていく。理解出来ない言語で喚いていた。いや、ただの絶叫になるかな。
私に力を奪われ、皆に身体を削られる。恐らくクトゥルフもある程度干渉している。七色の異神の動きは、本来であればもっとヤバかったかもしれない。
私の他にも吸血系スキルを持っているプレイヤーが七色の異神に取りついて血を飲もうとしていたけど、HPを吸収するどころかHPが吹き飛んで破裂していた。
私みたいに相手の力を全て受け入れるスキルや耐えられる身体を持っていなかったら、ああなるという事だろう。怖……
そうして、七色の異神はどんどんと力を失う。そして、後少しというところで、七色の異神から強烈な波動が放たれた。私の血や影も全て引き千切れた事から、強制ノックバックだと思う。
私は、すぐに天使の羽を広げる。空中で身体を止めた私は真っ直ぐ七色の異神を見る。七色の異神は、身体を縮小させていき十センチくらいの球体になる。
力の密度が高まり、私達の攻撃が通らなくなっている。
どうしたものかと思っていたら、ソルさんが私の傍にやって来る。
「ハクちゃん、どうしようか? あれで撃退で終わりって可能性もあるけど」
確かに、ソルさんの言うとおり、これで七色の異神がここから去っていけば、これで終わりという可能性はある。でも、ここで倒しきれないと、また七色の異神が戻ってくる可能性がある。つまり、皇帝を倒せないという可能性もある訳だ。
「ハク様!」
どうしたものかと考えていたら、下からランスロットさんの声が聞こえてきた。
「皇帝を見つけたのかもしれないです。ひとまず、まだ様子見で。倒せる瞬間があったら、何も言わずに倒しちゃってください」
「うん。分かった」
ここをソルさんに任せて、私は地上に降りていく。そして、ランスロットさんに合流すると、ランスロットさんが掴んでいる縄の先に皇帝がいた。
「地上で地面に突き刺さっていました。この状態でもまだ生きているようです」
「放せ!! 我をだっ……!?」
喚く皇帝の顔面をモードレッドさんが蹴って黙らせていた。やり過ぎだと思ったけど、皇帝はダメージを負っている様子はなかった。
「まぁ、こんな感じでこっちの攻撃が効かない。処断しようにも通用しない可能性が高いな」
「なるほど……ねぇ、あの異神の倒し方は?」
「それを貴様に言う意味があるのか?」
「あっそ」
この様子だとアグラヴェインさんによる尋問も意味がなかったと見るべきかな。
どうしたものかと思っていたら、リリィルーナがこっちにやって来た。そして、皇帝を見て私の後ろに隠れる。皇帝はリリィルーナを睨んでる。
「愚かな娘が。のこのこと何をしに来た?」
「お母様達を殺して……後悔はないのですか……?」
「後悔をする理由がない。貴様等を作る事自体に後悔はあっ……!?」
言葉の途中でモードレッドさんが皇帝を蹴った。モードレッドさんがやらなかったら、私がやっていただろうから、逆に助かった。
「七色の異神があのままっていうのは問題だし……何か方法は……」
「方法ならあなたの中にあるわ」
そんな言葉が掛けられ、声のした方を向くとパンドラさんが立っていた。
「私の中……奇跡の事ですか?」
ここで通用する力と言えば、奇跡しかない。奇跡はかなり強いものだけど、反面何が起こるか分からない。ある程度奇跡の方向性を決められる材料があれば別だけど、この状況ではその材料もない。ただただ異神を消し去るとしても、この状況にそちら誘導するものがないのだ。
「そう。この状況は停滞。災厄が降り注ぐ状況。あなたがエルピスとなれば良い。そのための希望はあなたの中にある」
「エルピス……」
「そう希望の女神エルピス。あなたならなれる。私も手伝ってあげる」
停滞したこの状況変えるには、私の奇跡の力が必要になる。私が引き起こせる最大の奇跡を私の中に眠る希望に合わせて。
「…………分かりました」
私は膝を突いて手を合わせる。そこにパンドラさんが手を重ねた。
「祈りなさい。ただ一粒の希望のために」




