リリィルーナの本領を支える
ルルイエが展開して、地盤を削りながら街並みが出来上がっていく。地盤沈下は起こらず、ルルイエがしっかりと支えていた。
そして、周囲からショゴスが滲み出てくる。その全てがクトゥルフに平伏している。取り敢えず、この場はクトゥルフに任せて良さそうかな。
一応、問題はないと判断して、私は自分が空けた穴を通って地上へと戻っていく。地上での戦闘音は、さっきよりも大きくなっている。
『愚かな娘と英雄風情が!!』
どうやら障壁は、完全に破壊されたみたい。リリィルーナとシキドウジが、皇帝と戦っているらしい。
『傍観者が調子に乗るな!』
ノマドも援護してくれているのが、皇帝の苛立ちの言葉でわかる。私が地下から地上に出ると、皇帝が障壁を自分の前に張りながら、リリィルーナとシキドウジの攻撃を防いでいる。
そして、周囲には形が安定しない人型の異神っぽいのが暴れていて、いつの間にか現れたカーリーさん達がそっちの方に対処している。というのも、数がかなり多いからだ。
アーサーさん達や玉藻ちゃん達もそっちに掛かりきりになる。なら、私は皇帝に向かって行くだけだ。そんな私の前にウィンドウが出てくる。
『皇帝戦が始まります。テイムモンスター使用制限が解除されました』
皇帝との戦いは、テイムモンスターを全て使って良いらしい。本来であれば、そこまでの戦力にならないという想定なのだと思う。テイムの成功確率はかなり低いから、いたとしても数体ぐらいだろうし。
でも、私は違う。
「そっちが数で来るなら、こっちも数で行くだけ!」
戦闘が出来るテイムモンスターの皆を召喚する。ついでに、ティターニアさん達も現れる。妖精と精霊、妖怪達も合わせた皆で一斉に協力して対処に当たる。
「絶対に一人で戦わないようにね! 特に酒呑童子!」
『名指しか?』
「絶対一人で突出するでしょ? 私は皇帝と戦う。こっちにまで届かせないでよ?」
『おうよ』
ゼウスさん達もやってきて、戦闘は激化するも、こっちの被害はない。回復もしてくれるし、危ないところになったら援護してくれる。それを見て、一つ気付いたのは、恐らくクトゥルフがここの異神達の感覚を狂わせてくれている。
「世界の侵蝕は進んでる……でも、赫夜刀での阻害も限界かな。来い!」
赫夜刀が空間を跳躍して私の元にくる。赫夜刀を受け止めて、血液の尻尾に白百合、黒百合、属性刀を掴ませる。全ての武器を使って、私は皇帝に突っ込む。
正面に障壁を張ってくる皇帝に対して、背後に回り込み赫夜刀を振るう。しかし、皇帝は背後にも障壁を張っていた。
『貴様なら回り込むと思ったぞ』
「あっそ」
私と反対側から、シキドウジが皇帝に斬り掛かる。皇帝はそれを障壁で防ぐ。そこにリリィルーナが炎を放つ。私はその炎を操作して、シキドウジに当てないようにして、皇帝を飲み込む。恒星が持つ熱を炎にした技だ。
「ハク!」
「抑え込むから大丈夫! シキドウジ!」
「分かった!」
シキドウジが距離を取った瞬間に、皇帝を中心として超重力の穴が開く。ブラックホールの力を利用したものだ。私はその効果範囲を皇帝の周囲のみに限定させる。
皇帝はそれを障壁を張る事で防いでいる。でも、このブラックホールの目的は攻撃じゃない。その場に皇帝を留める事だ。リリィルーナが指先に小さな白い光を集め、皇帝に向かって飛ばす。
その光は小さな星の終わり。超新星爆発の光だった。ブラックホールの中に入り、爆発が引き起こされる。私はその爆発の範囲を無理矢理抑え込む。皇帝の周囲にのみ衝撃波と熱が広がる。抑え込まれた衝撃は、皇帝の障壁へと押し寄せていた。
そして、私はその中に一滴の血を送り込む。その血には光と闇が付与されており、皇帝の傍で混ぜ合わされた。ブラックホール、超新星爆発、反転物質の爆発。この三つが重なった攻撃を皇帝は障壁で受けていた。
やがて、ガラスが割れるような音が響く。その五秒後に、私達の攻撃も終わる。さすがに永続させる事は出来ないものだから仕方ない。
『舐めるなぁ!!』
ダメージエフェクトを散らしている皇帝がそう叫ぶと、周囲に衝撃波が放たれた。私は即座にリリィルーナの傍に移動して衝撃波を相殺する。
「多少ダメージは与えられたけど、突破口にするには攻撃が限定されすぎるか」
「どうするの?」
「別の方法で障壁を割る。今ので割る事が出来るのは分かったし。あの障壁の許容量を超える攻撃をすれば良いんだから」
私は【鬼神】を解放する。そして、シキドウジと一緒に皇帝に突っ込む。武器には、闇、影、混沌を纏わせる。これが一番攻撃力が高くなる組み合わせだからだ。
すぐに障壁を張るかと思ったけど、皇帝は私に光線を放ってくるだけだった。私の攻撃に合わせたような光線は、こっちの剣を止めてくる。
それはシキドウジに対しても同じだった。つまり、障壁を割られたら、しばらくは障壁を使えないという事だ。
それならやるべき事は一つ。私とシキドウジは互いに攻撃のタイミングを合わせて、皇帝を翻弄しながら攻撃していく。リリィルーナの炎なども時折挟んで皇帝へのダメージを重ねていく。
攻撃が通用するのなら、普通に倒せるという事だ。ここで追い詰めていき、次の段階を引き出す。私が吸血で終わらせるにしても、この辺りはしっかりと進めないと無駄になるだけだ。そもそも障壁が復活したら意味がないし。
攻撃を繰り返していると、少しずつ皇帝にダメージを蓄積させられる。その蓄積されたダメージが一定を超えた瞬間に、皇帝は、再び衝撃波を周囲に放った。
私達も攻撃の手が止まる。
『偉大なる皇帝に刃向かう痴れ者どもが!! 一人残らず消し去ってくれる!! 貴様からだ!!』
ここに来て、これまでにない速度の光線が飛んでくる。反射的に赫夜刀を動かす私の前に影が入り込んだ。天使の羽に車輪を背負うその影は、光線を斬り裂いた。
「ハクちゃん、大丈夫?」
「ソルさん!?」
現れたのは、おそらく最強のプレイヤーであるソルさんだった。攻撃力不足だった私達の戦いに強力な攻撃力が加わる。
皇帝の終焉も近い。




