特典EX4「2人目の転生者」
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新入生代表挨拶を控えたサクヤに、リズが文章を手直しすること数日。
俺達にとっては2度目の、サクヤにとって初めての入学式の日が訪れた。
2年生に進級した実感もわいてくるというものだ。
それよりもサクヤの代表挨拶を見逃すまいと、皆と一緒に大議事堂に着席。
Sクラスは本来こういった行事の出席も免除されている。
なので他の生徒からすれば珍しい光景なのだそうだ。
「おいシスコン、少しは落ち着いたらどうだ?
自慢の妹くんのほうが落ち着いてみえるぞ。」
「べべべべつに緊張なんてしてねーし!」
「どちゃくそてんぱってんじゃねえか。去年のほうがまだマシだったわ。」
「ふふ・・・タクミ、大丈夫だよ。」
左に座るリンリンが、俺の手をそっと握ってくれた。
それだけで心が落ち着いてしまった。
「俺、リンリンのことを心から愛してるんだと改めて思ったわ。」
「タクミ、急な惚気でリンリンが真っ赤になっちゃってますけど、そろそろ式が始まりますよ。」
リズの言葉に、頭から煙を出して妄想乙女モードに突入しかけていたリンリンの口を指で抑えて止めて軽く頭を撫でる。
それだけで我に返り、幸せそうな表情になった。
「ただいまより、魔法学院入学式を始めます。」
進行役の先生がアナウンスをした瞬間、左から小さな声で耳打ちをされた。
「ボクも・・・心から、愛してる。」
その声に驚き、互いに目があった。
リンリンの顔を赤くした微笑みに笑顔を返し、小さな手を握って前を向く。
「新入生代表挨拶。首席、サクヤ・イスタル。」
「はい!」
元気よく返事を返したサクヤは、堂々とした足取りで壇上へとあがる。
その表情は一切の曇りもない。
俺とは大違いだな。
「はじめまして、サクヤ・イスタルと申します。
昨年起きたキメラによる王都襲撃事件。
今はまだ記憶に新しい、悲しい出来事でした。
皆さんご存知かとは思いますが、この学院の1学年先輩で私の兄でもあるタクミ・イスタル伯爵が事件解決及び復興に大きな助力をしてくれました。
そんな尊敬する兄には大切な仲間が居ます。
この学院で出会った、生涯の付き合いになるであろうかけがいのない仲間です。
私も兄と同様に身分や立場に関係なく、素敵な仲間と出会えたら。
そんな願いを込めてこの場での挨拶とさせていただきます。」
一歩下がり、深々とお辞儀をするサクヤ。
その立派な姿にこみ上げるものを抑えながら、大きな拍手を送っていた。
リズはもちろん、リンリンも。
そしてグレイも。
大議事堂全体から大きな拍手がサクヤに向けられた。
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入学式も無事終了し、我が家でリンリンと共に料理を作りながらサクヤの帰りを待つ。
リンリンもいつもサクヤの料理を手伝っているだけあり、なかなかに料理の腕前は上達してきた。
今では1人で夕飯を作ることもあるくらいだ。
しかし本人曰く。
「まだお弁当に・・・出せる、レベルじゃない。」
とのこと。
リンリンが作ってくれたというだけで嬉しいものだが、本人がそう言うのであれば楽しみに待つとしよう。
料理を作り終えてリンリンを抱えてソファーに座って撫でていたのだが、サクヤがいまだ帰ってこない。
なにかに巻き込まれても実力的に大丈夫だろうし、魔法をぶっ放せば俺がすぐに分かる。
ということは友達が出来てたくさん話しているのだろう。
そんな安心しきっていた俺は、リンリンの撫で心地の良さとゆっくりした時間にいつの間にか意識をもっていかれていた。
「ふふ・・・サクヤちゃんより・・・緊張、してたもんね。」
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「ただいまー!2人とも、遅くなってごめんね!」
サクヤの元気な声に目が覚めた。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
「おかえり、サクヤ。
リンリンも抱えたまま寝ちゃってたか、ごめんな。
身体痛くないか?」
「ううん・・・平気・・・とても、幸せ。」
嬉しそうに笑うリンリンを撫でていると、サクヤの後ろから声があがった。
どうやら早速できた友達を連れてきたようだ。
「はははははじめましゅっ・・・てっ!
シュナイゼル子爵家、三女のエフィーレ・ララルーク・シュナイゼルと申しますっ!」
「はじめまして、サクヤの兄のタクミ・イスタルです。
サクヤと仲良くしてくれてありがとう!
こちらは妻のリンクです。」
盛大に噛むほど緊張していそうだ。
リンリンもそれを悟ったのか、微笑ましそうにしながら会釈していた。
そしてもう1人。
「お初にお目にかかります、イスタル侯爵様。
わたしはハルナ・イガラシと申します。
遠い国からやってきて平民として暮らしておりますが、この度Sクラス第7席として入学させていただきました。
どうぞ、よろしくお願い致します。」
「これはご丁寧にどうも。
タクミ・イスタルです。
サクヤと仲良くしてくれてありがとう!」
2人してお辞儀をしながらの挨拶に、袖がくいくいと引っ張られた。
「タクミ・・・今の・・・知らない、言語。」
「やっぱり!
お兄ちゃんと同じ国から来たんじゃないかと思って。」
2人の反応に思わずハルナさんに目を向ける。
確かにこの世界ではあまり見ない、黒い髪に黒い瞳。
『言語理解』スキルを持っているおかげで普通に日本語として話せていたから、違和感なく返してしまった。
普通に日本語で挨拶されても気づかないとは思わぬ弊害だ。
「噂を聞いていましたが、やっぱりわたしと同じく転生された方でしたか。
こちらの言語は読むのはできるのですが、まだ単語でしか話せないので日本語で話せる方が居るのは助かります。」
「まあ色々聞きたいことはあるけど、サクヤとよくコミュニケーション取れたなあ。」
「単語単語で話してたからもしかしたら言葉が違うのかなって思って、『通訳』ってスキルを作ったんだよー!」
「そうか、誰とでも仲良くしようとする姿勢はえらいぞ。」
サクヤの頭を撫でてやると、えへへーと嬉しそうな顔をする。
それを見た友達2人が驚きともとれる声をあげた。
「そのっ、噂では聞いていたのですが・・・。
英雄様とは思えないほどお優しい方なのですね。」
「いいなあ、優しいお兄ちゃんほしかったなあ。」
「まあなんにしてもまずはご飯でも食べながら話そうか!」
こうして久しぶりに大人数での食事となった。
2人から色んなことを聞かれたり、俺の授業のこと、学院のことをリンリンと一緒に話したり。
サクヤがどれだけ素晴らしい妹なのかを力説してリンリンに止められたり。
賑やかな時間はあっという間に過ぎていった。
ハルナさんからもっと転生のことについて聞かれるかと思っていたのだけど、場の空気を壊さないようにするためかな。
と思っていると帰り際。
「先輩、今度転生についてお話ししたいので、どこかでお時間をもらえませんか?」
「火曜日の俺の授業終わりだったら空いてるから、その時間でよければ教室においで。」
「ありがとうございます!来週にでも伺わせていただきます。」
「なになに、2人で秘密の相談?」
「まあそんなところよ。」
「えっ、お兄ちゃん浮気!?」
「するわけないだろう妹よ。
俺はもうリンリンとサクヤしか愛せない。
転生について聞きたいらしいから、火曜日に約束しただけだよ。」
「ふふ・・・信じてる。」
俺のみっちりと詰まったスケジュールは、リンリンもサクヤも理解している。
曜日を伝えるだけでどの時間が空いているのかは把握できるくらいに。
ちなみに火曜日のスケジュールはというと。
1時間目には自分が受け持つ授業。
3・4時間目にはリズと共に『火属性攻撃魔法』の授業を受ける。
最近では教えることはなにもないということで授業の補佐をさせられているけど。
昼休みはいつも通り皆でお弁当。
放課後は毎週リンリンとのデートなので、必然的に空いているのは2時間目といった具合だ。
友達2人を見送って愛する2人と我が家へ。
片付けをしながら、ふと考える。
転生者で平民ということは、転生者特典をあまりもらえなかったのだろうか。
たしかに俺のように前世で異世界にどっぷり浸かっていた生活をしていなければ、特典なんて浮かばないかもしれない。
ステータスを見るまでいかなくても、そういう話をしてみてもいいかもしれないな。
そんなことを考えて手が止まってしまっていたのか、リンリンに顔を覗き込まれた。
「あら、可愛い。」
「嬉しい・・・けど・・・考え事?」
自分が転生したときのことを詳しく話して驚かれるも、いつもの柔らかな笑顔に変わる。
「気持ちは・・・分かって、あげられないけど。
なんでも・・・相談、してね?」
その言葉と仕草に危うく理性が崩壊しかけるも、なんとか踏みとどまる。
頭をちょっと傾けながら言うのはずるいと思う。
そんな可愛い奥さんの頭を撫でて唇を重ね。
「ありがとう。
愛してるぞ、リンク。」
「ボクも・・・愛してるよ、タクミ。」
「アタシ、エフィの家に泊まらせてもらったほうがいい?」
サクヤの言葉に2人して我に返る。
「ちょっと危なかったけど、大丈夫だぞ妹よ。
そういうことは学院を卒業してからって決めてるんだ。」
「ボクは・・・いつでも、いいんだけどね。」
「リンクさんも本当にお兄ちゃんが大好きなんだねえ。
アタシもお兄ちゃんみたいな恋人がほしいよ。」
「ふふ・・・あげない、よ?
でも・・・タクミみたいな人・・・他に居ない、と思う。」
「そうなんだよねえ。
だからアタシは2人の幸せを支えてあげるのがいいかなって最近思うよ。
大好きな2人を見ているのって、アタシも幸せだし。」
それはそれで少し寂しいけど。
そこらへんの有象無象に可愛い可愛いサクヤを嫁にわたすよりはよっぽどいい気はする。
前世での作り話で頑固な父親がよく、娘は嫁にやらん!的なことを言っていたけど。
今はその気持ちがものすごい分かってしまう。
あれはただ頭が硬いってわけじゃなくて、心からの愛情だったんだな。
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