特典EX3「素敵な仲間たち」
この歳で結婚するとは思っていなかったが、賑やかながらも穏やかな生活。
学院も仲の良い友人たちと楽しく過ごし、助けてもらいながらではあるが授業も形になった。
そんな充実した日々というのはあっという間に過ぎるもので。
気づけばサクヤの入学試験がすぐそこまで迫っていた。
「はい、満点です!」
「やったー!」
リズが公爵家の力を存分に使って調べに調べた過去問題集。
それを我が家でこなす日々もようやく最終日。
全ての筆記テストで満点を獲得したサクヤは嬉しそうに両手を挙げていた。
魔法に関しては学院を破壊さえしなければ最優秀成績は確実だろう。
だが学院の入学試験では論文も評価対象なのだ。
完璧超人であるマイシスターの唯一の欠点とも言える語彙力。
これがどれほど査定に響くかは正直想像もつかないな。
「ところで2人はどんな論文を書いたんだ?」
「そういえば話したことなかったですね。
わたくしは『爆撃魔法の威力調節について』です。」
「ボクは・・・『必中魔法の有用性について』。」
どちらも面白そうなテーマだ。
中身さえ伴えば魔法学会に取り上げられても面白いと思うんだけどな。
まあ今問題なのはそういったテーマをサクヤがどう言葉にするかだ。
この国の論文を含めた魔法に対する考えがどれほど大切なのかは、この1年弱で理解したつもりだ。
普段の無邪気でスーパープリティなままを論文にしてしまったら、それだけで大減点は免れない。
それほどには不安要素ではあるのだ。
「ちなみにサクヤさんはどんな論文を書こうとしているのでしょうか?」
俺の思考を悟ったのか、リズが助け舟を出してくれた。
リンリンも興味津々のようで、じっとサクヤを見つめている。
「うーん・・・『結界魔法の有用性について』とかいいかなと思ってるけど、どうかな?」
「内容・・・次第。」
「いくつも結界を張れば、アタシの神話級魔法をぶっ放しても外に被害ってないんだよね。
お兄ちゃんから聞いたけど、2人もグレイさんも結界の中で全力の魔法を打ったんでしょ?
だから一見危険なことでも結界魔法の中でなら安全に特訓できるよーみたいな。」
思っていたよりはまともじゃないだろうか。
神話級魔法について書くよりはよっぽどいい。
とはいえその結界の維持ができるのも、俺やサクヤの魔力量があってこそではあるのが問題だな。
「複数人でなら・・・結界を、維持できるかな?」
「なるほど、それならわりと誰でもできますね。」
「とはいえ威力の高い最上級魔法でさえ、外に被害が出ない程となると最低でも5枚の結界は必要だ。
1枚を維持するのに2人以上だと、必然的に10人以上必要になるのがきついな。
それこそ自由活動の団体でようやくできるレベルだ。」
「効率・・・良くない?」
「そっかあ、難しいなあ。」
机に両手を伸ばして突っ伏すサクヤ。
とはいえ筆記満点で魔力首位であれば、そこそこの論文さえ提出できればSクラス入りはできるだろう。
今後も俺の授業を手伝いたいと言ってくれているのだが、Sクラスに入らなければそれは難しい。
それはサクヤが一番分かっていることでもあるんだけど、試験ばかりは手伝うわけにもいかないしな。
そんなこんなでリズによる文章の手直しをすること数日。
いよいよ試験当日だ。
「いってらっしゃい、サクヤ!」
「サクヤ・・・頑張って。」
「いつもと逆で新鮮だねー!
行ってきます!」
試験のため学院の生徒は休みとなっており、いつも見送られる俺たちが見送る立場だ。
緊張はしていなそうだったけど大丈夫かな。
「サクヤなら・・・大丈夫。
それより・・・久しぶりに、二人っきり。」
言いながら腕に頭を乗せてきた。
リンリンの撫でてほしい時のサインだ。
確かにいつもサクヤが居て、学院でもリズやグレイたちと一緒に居たからな。
完全に二人っきりの時間なんて本当に久しぶりだ。
頭を撫でて可愛がりつつ。
「なかなか2人だけの時間をとれなくてごめんな。
寂しくないか?」
「ううん・・・二人っきり、じゃなくても・・・一緒には、居れるから。
タクミと一緒だから・・・いつも、楽しい。」
幸せそうな顔で寄りかかってくる可愛い奥さん。
せっかくの二人っきりの時間だし、思いっきり甘やかすとしよう。
「もう、リンリンは可愛いなあ!」
「ふふ・・・髪、ボサボサ・・・。」
ピンポーン―
はい、二人っきりの時間終了。
短くねえかさすがに。
玄関に出るとリズが来訪していた。
「あら、お邪魔でしたか。」
「大丈夫・・・充電、完了。」
「本当に仲良しですね。少し羨ましいです。」
グレイは素直じゃないからなあ。
人前で同じことを求めるのは酷というものだろう。
まあそれはそれで見てみたくもあるけどな。
3人で紅茶を飲みながら他愛のない話をしていると、サクヤが帰宅。
楽しい時間はあっという間だ。
「テストも魔法も余裕だったよー!
論文だけちょっと不安だけどね。」
「それならSクラス入りはするでしょうね。」
「この兄にして・・・この妹、あり。」
「リンリン、そんな褒めるなよ。」
サクヤもえへへーと喜びの表情。
それを見てくすくすと笑うリズとリンリン。
平和でなによりだ。
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そして合格発表当日。
サクヤも首席合格でSクラスへと入学が決まった。
その結果を知ったグレイもやはりというべきか、驚きの表情はなかった。
「まあ普段から君たち兄妹のことは見ているからね。
当然の結果だとは思うよ。」
「グレイ・・・不機嫌?」
「やめてあげなさい、リンリン。
自分が首席じゃなかったのを未だに根に持ってるんだから。」
「それを首席の君が言うと嫌味にしか聞こえないのが分からないのかい?」
「オレ、シュセキ。オマエ、ジセキ。コノジジツカワラナイ。」
「タクミもたまに来る攻撃できるチャンスだからって、ダメですよ。」
うーむ、リズに言われたら仕方ない。
グレイもため息をついて少し苛ついた顔をしながら窓の外を向いてしまった。
ちょっと言い過ぎたかな。
「殿下も実はかなり気にしてるんですから。」
「おぉぉい、リズベットまでかい?」
俺に向かってウィンクをしながらペロッと舌を出すリズ。
意外とリズもいたずら好きなんだよな。
「シスコンと一緒に居るようになってから胃が痛い日々だよホント。」
「心地いい・・・くせに。」
「この場に味方が居ないのがよく分かったよ。」
「俺はいつまでもグレイの味方だぜっ?」
「黙れシスコン。」
oh!辛辣ぅ!
「前にも言ったが俺にシスコンは褒め言葉だ。
なんだかんだ言いつつもちょくちょく褒めてくれるグレイが好きだぜ!」
「僕はつるむ人間を間違えたのではないかと、最近つくづく思っているよ。」
それを聞いたリズのくすくす笑う姿に、そんなことは言いつつも本心ではないのだろうと思えた。
やっぱり俺も、魔法学院に来てよかった。
サクヤにもこれから、こんな素敵な仲間がたくさんできるといいな。
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