特典24「語り継がれる奇跡の魔法」
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さて妹に見送られて行ってくるとは言ったものの。
この広範囲に散らばるキメラどもをどうするべきか。
各個撃破なんてしていたら時間が足りない。
とはいえ魔法でまとめて倒そうとすると地図から王都がなくなりかねない。
もっとこう、キメラだけに攻撃するような手段がないことにはなあ。
ひとまず低空で飛びながら各個撃破しながら考え続けていると、あることに気づく。
こいつら、徐々に我が家のほうに向かっていないか?
いやでも学会の会場のほうに向かっている個体も居る。
逆に学院の方角に向かっている個体は居ない。
キメラの行動パターンなんて分からないけど。
上空から見ると、その二箇所に向かう量が他よりも多い気がするのは事実。
さすがにサクヤが強いと言っても、この物量はさすがに厳しいものがあるだろう。
一度戻って伝えることにしよう。
「サクヤ!結構な量のキメラがこっちに向かってる!
避難したほうがいい。」
「地形無視してもいいならアタシ1人でも大丈夫だよ!」
・・・あんまり無視してほしくはないけど、大丈夫なら任せてもいいか?
俺が直せばいいだけだしな。
とはいえこのあたりの家だけは原型を止められるように結界だけは張っておくとしよう。
家のみを囲むように結界を張り終え、再び飛び立とうとしたとき。
後ろから飛びつかれた。
危うく転びそうになってしまった。
「おっと、あぶねえ。」
「ボクも・・・一緒に戦わせて。」
「なかなか危険な戦いだぞ?」
「自分だけ・・・何もしないで、泣いているだけなんて・・・いやだ。」
「・・・わかった、しっかり捕まってろ!」
「うん・・・絶対、離さない・・・!」
そのままリンリンを抱えて王都上空へ。
やっぱり先程見た通り、2個所に向かっている個体が全体の6割くらいだ。
残りは好き勝手暴れているように感じる。
この広い王都で全てを殲滅するとなると、どこかを捨てなければならない。
サクヤは大丈夫だろうが、魔法議会を護ると街が壊れ。
街を護ると議会が壊れる。
その二択を迫られている、というわけだ。
『二重思考』と『思考速度上昇』によって脳をフル回転させても、どうしても最終的にはその二択だけは残る。
そんな中、抱えていたリンリンが魔法陣を展開。
両手は塞がっているから魔力で描いたのか。
俺が教えたことがこんな形で役に立つとは。
「付与・・・『必中』。」
「その手があったか!!
さんきゅー、リンリン!!」
「うん・・・カッコいいところ・・・見せて。」
上空で停止し、全力で集中。
超巨大な魔法陣を展開。
これもリンリンを両手で抱えているから魔力での構築だ。
当然、魔法陣が大きければ大きいほど魔力消費が激しい。
でも、それがどうした。
魔力なんていくらでもくれてやる。
こちとら魔力が尽きたことなんて生まれてから1度もねえんだよ。
「『標的』・・・対象ー『合成獣』!!
全標的完了!!」
俺の周りを、ものすごい勢いで風が舞い上がる。
そして魔法陣から徐々にいくつもの雷が立ち上る。
まるでこの周りだけ嵐のようだ。
風の強さと雷に怯えたリンリンが、さらに力を込めてしがみついてきた。
「やっちゃえ・・・英雄。」
「第九階梯ー帝級魔法『天翔ける雷槍』!!!」
後に語り継がれるキメラによる王都襲撃事件。
その終焉は、1人の貴族による奇跡と呼ばれる雷魔法。
彼が放った魔法は寸分の狂いもなく、たった一撃で全てのキメラを消し去ったという。
しかしそれは、目に見える表のお話し。
絵本にもなるほどに有名になる物語。
だがその物語には誰にも語り継がれない、裏があったのだった。
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「っつあー・・・さーすがに魔力使いすぎた。
半分切ったの初めてじゃねえかな。」
「今のをもう1回打てるとか・・・やっぱりおかしい。」
落ち着いた後、シャペル公爵家の前で着地。
さすがに一気に魔力放出したおかげで少し身体がだるい。
とはいってもまだ半分弱は残っているのだが。
先程の魔法でこの屋敷にもいくつもの雷が落ちた。
とはいえ、シャペルをぶっ飛ばすと決めているのだ。
キメラが居なくなってもアイツが居たんじゃ意味がないからな。
「行けるか、リンリン。」
「うん・・・どこまでも、ついていく。」
俺の手を掴み、ようやく笑顔を見せた。
シャペル侯爵家に再び侵入。
先ほど奴が入っていた、屋敷の奥へ。
やはりというべきか、行き止まり。
しかし隠し扉を見つけることなど俺には造作もないことだ。
『隠し扉検知』
正面右のランタンが青く光った。
これが入口ということだろう。
ガコンッゴゴゴゴゴゴゴー
ランタンのついていた壁が凹み、右にスライドして通路が露わになった。
驚くリンリンを連れてそのまま侵入。
そこはなんとも気味の悪い通路だった。
両サイドにキメラの実験に使用しているであろうモンスターの部位。
それが液体につけられながら保管されているのだ。
そしてここでキメラを作っていたであろう実験台。
数々の切断器具。
リンリンも口を抑えて必死に耐えているが、気持ちは凄い分かる。
俺も1人だったら吐いていそうだ。
その通路を抜けた先に大きな扉が現れた。
『隠し扉検知』を発動するも、反応なし。
この扉の先にしか道はなさそうだ。
気持ちを落ち着かせて扉を押し開ける。
薄暗い大きな空洞。
明かりは少ないものの、きちんと顔が判別できる程度には青白い光が灯っている。
ようやくそこでシャペルの姿を見つけた。
しかし、その姿は容姿端麗のエルフとは似ても似つかない異形の姿だった。
「まさか自分までもキメラと化しているとはな。」
「なあに、普段の姿に戻れる程度にしかしていないさ。
実際、気づいていなかっただろう?」
「あいにく男の身体には興味ねえんだ。」
「そうか。じゃあ私のせがれにも気づいていないわけだ。」
「ひっ・・・!」
暗闇から現れたのは、リンリンと無理やり結婚を決めさせられた息子。
身体は3メートルほどに巨大化し、普段の顔が身体中をゆっくりと動き回っていた。
リンリンが小さく悲鳴をもらしたが、それくらいには気色の悪い見た目だ。
その巨体に似合わず、勢いよくこちらに飛び込んできた瞬間。
俺は思わず笑ってしまった。
「お兄ちゃんみーっけ!!邪魔だキモいの!!」
ドゴォォォォォンー
「サクヤ、よくここが分かったな。」
飛び込んできた巨体を蹴り飛ばし、笑顔で俺に飛び込んでくるサクヤ。
えへへーと言わんばかりの笑顔に思わず笑みがこぼれた。
「だって、気持ち悪い気配が消えたのにお兄ちゃん帰ってこないんだもん!
まだ戦ってるなら助けてあげないと!って走ってきた!」
「よく・・・場所が、わかったね。」
「お兄ちゃんセンサーついてるもん!どこに居てもわかるよ!」
あらやだ逃避行なんてできないじゃないか。
するつもりはないけど。
そんな会話をしていると、ガラガラと音を立てて立ち上がる息子。
「うわ何あれきもちわるっ!」
「サクヤ、あれの相手頼めるか。」
「うえ・・・お兄ちゃんの頼みじゃなかったら絶対断ってるよ。」
「ごめんな、任せた。」
「まかされた!」
頭を撫でてサクヤに任せ、俺はシャペルへと向かい合う。
「リンリンは危険だから少し下がっててくれ。
俺もサクヤも、正直手加減できそうな相手じゃなさそうだ。」
「・・・悔しいけど・・・分かった。
付与ー『必中』。
ちゃんと・・・見てるから。」
入口付近まで後退したのを確認。
改めてシャペルを見ると、何やら黒い剣を抜いていた。
「そんな改造してまで武器を使うんだな。」
「君相手じゃこれくらいしないとダメだろうからね。」
武器も効かないというのに。
まあとりあえず武器を持つならその射程外から叩くだけだ。
「第九階梯ー帝級魔法『天翔ける雷槍』!!」
『必中』の恩恵を受けたその雷はシャペルを貫く。
しかしダメージが入ったようにも見えない。
何がどうなってるんだ。
「君がどれだけ優れていても、私を完全に倒すのは難しいだろう。」
そう言いながら纏っていた上着を開いて見せた。
なんて気持ち悪い身体だ。
至る所に心臓が移植されてやがる・・・!
「私の心臓はあと99個あるぞ。」
これはさすがにすぐに倒すのは無理そうだ・・・!




