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何でもいいと言われたので転生特典をありったけもらって転生したのに、実家がなくなったので妹と共に魔法を極めます  作者: あっきー


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23/32

特典23「ゆえに、臆することなし」


-----グレイ視点


朝の出席確認に連日休みのリンク、そして今日はタクミの姿もない。

リンクに関しては父親が倒れたと商業者ギルドを介して情報が入ってきているものの。

タクミに関してはなんの連絡もなしだ。

殺しても死なないような奴なだけに事件に巻き込まれた可能性は低い。

その場合は犯人のほうが逆に心配になるくらいだ。

風邪なんてひくようなタマでもない。


先日、シャペル公爵のことを話したのを思い出す。

いやまさかな。

あのタクミが後先考えずに行動するはずがない。

・・・妹さえ絡んでいなければ。

絡んだ瞬間に後先など考えるはずもなくなる。

不安だ。ものすごい不安だ。

とはいえこの王都がまだ原型をとどめていることを考えると、その可能性は低いかもしれない。


「お2人ともお休みとは心配ですね。」


リズベットも言葉の通りに心配そうな顔だ。

思わず窓の外に目をやった瞬間。


ゴゴゴゴゴゴーーー


大きな地鳴りを響かせながら、揺れが起きた。


「きゃっ!?」


「なんだ・・・この揺れは。」


思わず出てきた言葉。

倒れかけたリズベットを支え、またも外を見やる。


数秒前には何もなかったはずの風景。


数か所から煙があがり、遠くから悲鳴ともとれる声が聞こえた。


「何が起きているんだ。」


ジリリリリリリリリリッーーー


『緊急事態発生、緊急事態発生。安全確保のための結界を発動します。』


大きなベルが鳴り響き、自動アナウンスが流れる。

学園を目に見える結界が覆い、どこからどう見ても非常事態だ。


そんな中、結界の発動寸前に学院の敷地内に侵入した()()が見えてしまった。


・・・あのシスコン野郎、次会ったら覚えておけよ。


「あれは・・・キメラですね。」


「リズベットも見えたか。

僕が対処しに行く。危険だからここで待っていてくれ。」


「いえ、わたくしも行きます!

こういうときのための特訓ですから。」


「ダメだ、危険すぎる!

・・・と言っても聞かない奴だったな、君は。」


「わたくしも陛下と一緒で、頑固なんですよ?」


思わずフッと笑ってしまった。

まったく・・・将来が思いやられるな。


「フォローしてくれ、リズベット。

我々であれを仕留めるぞ。」


「はいっ!!」



急いで校舎から出ると。

ゆっくりとしかし確実に一歩ずつ校舎へと向かってくるキメラ。

その異形の姿は人々の恐怖を掻き立てるのには充分だろう。

これが今、王都のそこら中に居ると思うと居ても立っても居られない。

とはいえ僕はまだ弱い。

将来のためにも、身の丈に合わない無謀なことはしないほうがいい。


と、思っていたのだがな。

この1匹程度倒せず、あのシスコン野郎に合わせる顔がないだろう。

あいつと出会って、そう思えるほどにはたくさんの成長をくれた。

まだまだここで立ち止まるつもりはないが、その成果を出す時があるとすればそれは今この時だ。


「殿下!あのお顔は・・・!」


リズの言葉にキメラの姿を見る。

いくつもの魔物の顔がついていて気味が悪い。

・・・が、1つだけ人間のものと思える顔があった。


「・・・ラミール伯爵・・・!?」


「そんな、人間まで・・・!なんてひどいことを・・・!」


あそこまで一体化しているとなると、救出するのは不可能だろう。

王家の血筋の者として、弔ってやるくらいしかできない。

その1人の犠牲により多くの民が護られるのであれば、僕はその道を選ぶ。


僕達の言葉も虚しく、急に速度をあげてこちらに殴りかかってきた。

咄嗟にリズベットを抱えて回避したものの、校舎に大きく穴が空いてしまった。

あんな威力の攻撃を食らってしまってはひとたまりもない。


1発で戦闘不能になる威力の攻撃。

どこをどう攻撃したらいいかも分からない異形のそれを、あいつならどう倒すかな。


「・・・殿下。」


リズベットが左手の甲を差し出してきた。

これは、王家とオーグレイ公爵家以外に誰も知ることのない秘密。

決して開かれることのない、リズベットのステータス。

その真価を開放するための儀式。


以前にやっていた魔法訓練でリズベットが魔力のコントロールができていなかったのは、この封印のせいでもある。

おそらくタクミも不思議には思っても、そんな封印をされているとは思っても居ないだろう。


この封印を施すために幼少期から最近まで外に出ることもできず。

ようやく出れて初めて友人ができたと思えば、すぐ開放か。

最高神様の運命のいたずらか。

それとも、あのシスコンと出会ってしまったがゆえの宿命か。


『最高神の加護』レベル5。


おそらくタクミでも持ち合わせていないであろう。

顔が広い僕ですら知る限りでリズベットのみが持つ、最強の加護スキル。

そして、最高レベル。


それを今、開放するー


跪き、リズベットの左手の甲に口づけをする。

すると今まで封印により抑えられてきたものが一気に開放された。


突風が僕達を凪ぐ。

大きな白い光に包まれたリズベットが、右手を前に構えた。


とはいえ、僕も許嫁に護られているわけにもいかない。

リズベットの前に出て、剣を構えた。


「さあ、行くぞ!」


「はい!牽制します!」


言いながらリズベットの()から光の弾がとんでゆく。

魔法陣を介さぬ、単純な魔力の塊。


「キィィィィィィィィヤアアアアアアアアア!!!」


それがキメラに直撃した瞬間、鳴き声ともとれない大きな悲鳴があがった。

どうやら魔法は効くようで安心だ。


「ひとまずここは人目に付きやすい。

訓練場まで誘い込むぞ!」


「かしこまりました!」


2人で交互に牽制しあいながら、徐々に距離を開けてゆく。

案の定ヘイトがこちらに向いたのか、我々を追いかけてきた。

魔物の本能だろうか。


時間をかけながらも訓練場まで誘導することができた。

ここなら校舎からは見えず、多少なりとも結界があるので大きな問題にはならないだろう。


先ほどリズベットの攻撃が当たった箇所は、ゆっくりながらも再生している。

魔法ではなく直接魔力をぶつけられたのが、そこそこダメージになっているのか。

ともかく再生するのであれば、あれを仕留めるにはおそらく一撃で全てを消し去るしかないだろう。

2人ともそんな大技を持っては居るが、今のリズベットにそれを求めるのは酷というものだ。


ならばやるしかあるまい。


「リズベット、詠唱の時間を稼いでくれ!」


「はいっ!」


言うなり相手に向かい突撃してゆく。

その速度は、あのシスコン以外では今まで見たどの人物よりも速い。


ドドドドドドッー


リズベットの連続攻撃が徐々に相手の身体を削ってゆく。

ほんの少しずつ再生しているが、やはり魔法よりも直接魔力で殴られるほうがダメージはでかいということだろう。


そんな分析をしつつ、詠唱を始める。


「永劫なる命の脈動よ。猛き紅蓮の炎よ。

(たぎ)れ、(さか)れ、狂え!

我が刃に集いし業火は炎帝の抱擁。

灼熱をもってすべてを焼き尽くせ!!」


「ハアッ!!

殿下、コアです!!

離れます!!」


詠唱が完了する直前。

リズベットの攻撃が敵の懐を突き、紫色に怪しく光る球体が露わになった。

それがこいつのコアか。

ここまでのお膳立てをもらって決めなければ、男じゃないな。


詠唱が完了した瞬間、敵からものすごい魔力が放出された。

ビリビリとものすごい圧力だ。

それによって飛んできた小石が僕の左頬を大きく削る。


だが、その程度はもはやなんとも思わないのだ。

普段から共に行動している奴の圧力は、もっと鋭く、もっと強い。


ゆえに、臆することなし。


「第七階梯ー帝級魔法『緋焔(ひえん)ー竜斬波』!!!」


タクミをも吹き飛ばす威力のそれは、防御が剥がれた敵のコアを粉砕。

炎により徐々に、最終的には跡形もなく消えていった。


「お疲れ様です、殿下。」


「リズベットもよくやってくれた。

・・・ラミール伯爵、貴殿の無念は我が剣と共に。」


胸の前に剣を立てて構え、追悼を。

後ろではリズベットも祈るように両手を組んでいた。


剣を鞘にしまった瞬間、リズベットも限界がきたのか倒れかけた。

白い光は消え、眠ってしまったようだ。


リズベットを倒れないように支えながらも思わず空を仰ぐ。


まるでお前だけに任せていられるか、と言わんばかりに。



----- 通常視点


この嫌な感じ。

王都全土から感じる気配は、10や20なんてものじゃない。

急いで始末しなければ、奴の言葉通り王都がとんでもないことになってしまう。

だがここで奴を逃せば、再び顔を合わせるのは難しい。


・・・そんなことよりサクヤの安全確保だな。

天秤にかけるまでもない。

俺は急いで屋敷の外へと向かい始めた。


「そうやすやすと出すとでも思っているのかね?」


シャペルの声と共に、20を超えるキメラが俺の前に立ちふさがった。

今こんなのの相手をしている時間はねえんだよ。

下もぶっ壊したし、今度は上もだ。


高速飛翔(スピードフライ)


俺は飛び上がった勢いのまま天井を何回かぶち抜き、外へと脱出。

そこで見た景色は、普段の平和な王都とはかけ離れていた。


「なんだ・・・これ・・・!」


至る所から煙や火があがり、悲鳴と鳴き声がどこかしこから聞こえる。

俺はこんな世界にしたかったわけではないのに。

頭ではそう思いながらも、身体は全力で我が家に向かっていた。



-----サクヤ視点


お兄ちゃんが出て行ってからずっとライトと遊んでる。

何もしないとお兄ちゃんと約束したから。

それでもさっきの揺れはなんか嫌な感じ。

今王都に出てきた奴らよりも大きな感覚が、突然家の方に飛んできた。


ドゴォォォォォンーーー


大きな音をあげながら、家の半分を踏み潰す気持ち悪い怪物。

5メートルはありそうな大きさだ。

その大きさでここまで飛んできて、わざわざ家に着地するなんて。

そのまま一歩二歩とこっちに歩いてきた。


「ライトー『返還(ハウス)』。」


ごめん、お兄ちゃん。

約束守れそうにないよ。


「アタシとお兄ちゃんの愛の巣を踏み潰してくれちゃって・・・。

死んでも足りると思うなよ、お前ぇぇぇ!!!」


「あ・・・・・・・う・・・・・・」


「第九階梯ー帝級魔法『荒天の大渦潮(メイ・シュトローム)』。」


怪物の足元から大量の渦潮が舞い上がる。

完全に捕らえたのを確認。


「第十階梯ー神話級魔法『氷と闇の世界(ニブルヘイム)』。」


渦潮ごと全てが凍ってゆく。

とはいえお兄ちゃんとの思い出が詰まったこの場所に、こんな醜いオブジェクトを残すつもりはない。


「砕け散れっ!!」


右手を握り潰すと、凍りついていたオブジェクトは粉々に霧散した。



-----通常視点


遠目からでもサクヤが闘っているのが分かる。

いつの間にか第九・第十階梯、そして神話級まで使えるようになっちゃって。

・・・絶対に怒らせないようにしよう。

多少面倒は見たとはいえ、ほぼ自力でここまでの実力をつけたのだ。


「サクヤ!」


「お兄ちゃあああん・・・ごめんなさいいいい・・・えぐっ・・・お家があああああ」


「こんなもん3秒で直せるから泣くな。

無事で良かった。『完全修復(オールリペアー)』。」


さすがお兄ちゃん(さすおに)・・・えぐっ・・・」


「本当に強くなったな。」


未だに泣き止まないサクヤの頭を撫でながら抱きしめる。

これですぐに落ち着くだろう。


「ありがとう、お兄ちゃん。もう大丈夫。

お家はもうアタシが護っておくから安心して!」


「あー・・・そしたら頼まれついでにリンクス侯爵家も護ってもらえるか?」


「あいあいさー!

けどお兄ちゃん、1つだけ。

アタシに構わず恋愛とかしていいんだよ?

アタシはお兄ちゃんの枷にはなりたくないよ。」


「・・・考えておくよ。」


「ニシシ、自分に素直になったほうがいいよ。

行ってらっしゃい、お兄ちゃん。頑張って!」


「ああ、行ってくる!」


パアンー


いつも通りのハイタッチ。

もう後ろは気にしなくて大丈夫だな。



ブックマーク登録ありがとうございます!!

おかげさまで楽しく描けております。

徐々に終戦が近づいてきました。

一気に書き切りたいところです。

今後も皆様に少しでも楽しんでいただけるように精進してまいります。


少しでも楽しんでいただけたら、ブックマーク登録や★評価などで応援していただけたら嬉しいです。

よろしくお願い致します!

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