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何でもいいと言われたので転生特典をありったけもらって転生したのに、実家がなくなったので妹と共に魔法を極めます  作者: あっきー


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特典25「この笑顔だけは」


-----


服を正し、自らの心臓を隠すシャペル。

完全に倒すつもりはないが、自身がキメラなのであれば捕縛をしたとしても軽々と逃走できてしまう。

罪を償わせるにしてもどうすれば機能を停止させられるか。

このあたりを考えると頭が痛い。


移植したのは心臓だけならまだしも、他の部位までしているとしたら。

残り98回倒し、残基数1にしたとしても振出しに戻る。

逆に心臓だけだとしたらそれで捕縛すれば問題ないのだが、こう暗いと判別できないな。


そんな考えをしている俺の隙を見逃さずに距離を詰めてくる。

剣を振りかぶり、左肩口から斬りかかってきた。

もはや剣なんかじゃ俺に傷1つつけられないのだ。

受けて反撃をして残基数を1つ減らすほうがいいだろう。


ゾワッー


斬られる寸前。

『直感』スキルが働き、身の毛がよだった。

普段なら取らない回避行動。

その気がなかったこともあり、少し遅れてしまった。

剣の先が俺の胸元に触れー


ズバッー


いってえええええええええええ!!!!


斬られるってこんな感覚なのか!

というかバリアは!?

制服にも『刃傷無効』のスキルもついているはずだ。

どうして俺のスキルを通り抜けてダメージが入った・・・?


「『回復(ヒール)』。その剣、『魔法無効』か何かついてるのか。」


「御名答。正しくは呪いだがね。

とはいえ本来であれば斬られた者は呪いに侵されるはずのところを無傷とは。」


それは完全に『魔法神の寵愛』のおかげだな。

俺にバッドステータスは一切効かない。

とはいえ、あの剣で触れられたら斬られるのは分かった。

あの言い方だと傷自体も呪いの傷なんだろうが、寵愛のおかげで俺にはただの傷になるということかな。

まじでレビス様に感謝だな。


「・・・リンクス侯爵様への呪いは、その剣のせいだな?」


「察しが良いな。この剣は斬らなくても呪いを振りまくんでな。

私もなかなかに苦労してるよ。」


ひとまずその剣をぶっ壊せばリンクス侯爵様の意識は戻るということだ。

わかりやすくていい。


「おわっ!!」


サクヤの声に意識を向けると、思い切り殴り飛ばされてこちらに飛んできていた。

ニヤリと笑い、シャペルはそこに向かって走り出して剣を振りかぶる。

おい、待て。

サクヤに『魔法神の寵愛』はない。

あの剣で斬られたら・・・!!


考えるよりも先に、細胞が反応していた。

ふと気づいたときには2人の間に割って入っていた。

サクヤを受け止めた瞬間。


ズバンッー


背中を大きく斬られていた。



「タクミィィィィィィ!!!!!!!」



リンリンの叫び声が聞こえた気がする。


あれ、この身体が冷たくなってゆく感覚。

どこかで1度経験している気がする。


そうか、前世で1度死んだ時だ。

トラックに跳ねられて、自分の身体がどんどん冷たくなって。


その時と同じ感覚だ。


ということは俺はここでも死んでしまうのか?




気がつけば、辺りが真っ白に染まっていた。





「ハッ!!」


「気がついたようね。」


「レビス様!てことは俺は死んだのでしょうか・・・。」


「まだギリギリ生きてるわ。

といってもかなり危ない状態だけどね。」


「じゃあなんでここに?」


「最期のお別れと、最後の教えのために。」


「えっ、それはどういう・・・。」


「タクミ、魔法とは『意思』。

こうしたい、こうなりたい、という気持ちを大切にしなさい。

その気持ちが強ければ強いほど、魔法は輝くの。

こうしたいという気持ちは、無限にあるもの。

だから魔法には無限の可能性があるのよ。」


ここに呼ばれた意味も。

普段と違う真面目な喋り方も。

色々と聞きたいことはあるけれど。

レビス様の優しい真っ直ぐな目を見た瞬間、どんな言葉も出てこなくなった。


「それを学び、教え、体現しなさい。

それができてようやく、わたしの後継者。

もっとも、神となるのは死後だけどね。」


優しく微笑むレビス様の身体が、徐々に消えてゆく。

思わず手を伸ばしていた。

しかしその手は何も掴むことはなかった。


「タクミ、あなたと出会えてよかった。

許されるのであれば、同じ時代に生まれたかったわ。

そこで出会っていれば、また違った関係だったかもしれないわね。

『魔法神の弟子』の契約の本当の意味。

所持している者の死を、わたしが肩代わりする契約。

さあ、行きなさい、タクミ。

わたしが居なくても、あなたには護るべき人たちが居るでしょう?」


何かを叫ぼうと声を出す。

しかしその声は何も発することはなく。


徐々に周りの白い光は消え、薄暗い部屋へと戻ってきた。



 ピコンッー 称号 『魔法神の弟子』 が 消滅しました。

 ピコンッー 称号 『魔法神』 を 獲得しました。


-----


「タ・・・タクミに手を・・・出すな・・・!」


「声も身体も震わせてもなお守ろうとする姿勢、感動ものだなァ?

そいつはもう助からねえのは見て分からねえか!!」


「ウソ・・・タクミは、死なない・・・絶対に・・・!」


「ああもう、その幻想を抱いたまま一緒にくたばれ!!!」


「・・・ッ!!」


バキィッー


涙を流しながら目を瞑ったリンリンに、剣が振り下ろされた瞬間。

白い光に包まれた俺の腕が、剣を真っ二つに砕いていた。


腕だけではなく、全身から。

光、そして魔力が溢れ出る。


「お兄ちゃん!!良がった・・・!まぶしい・・・。」


涙を流しそうになりながら飛びついてくるサクヤ。


「サクヤ・・・なんか神様になっちゃった。」


「えっ、じゃあお兄ちゃん様?お兄様・・・はなんかやだなあ?」


「2人とも・・・緊張感なさすぎ。

タクミ・・・良かった、無事で。」


こちらも前から抱きついてくるリンリン。

2人の頭を撫でて、シャペルに向けて歩き出す。


「とりあえず、終わらせようか。」


「なんだ貴様、その光は・・・!」


「んー俺もよく分からんけど、神様になったし・・・後光?」


「ふざけるのも大概にしろ貴様ァ!!」


シャペルは叫びながら剣を振りかぶり、こちらに向かってきた。


ふざけてなんかいないさ。

俺だって分からないものは仕方ないだろう。


まあでも、どうなろうと俺の『意思』は変わらない。


愛する妹と、大切な人が。

そして仲間たちが。

すべての人達が。


笑顔で暮らせる世界にしたい。



EX(エクストラ)創造級魔法(ジェネシス)神々の黄昏(ラグナロク)』。」



白く、白く、ただひたすらに白く。

眼の前が真っ白になる。

全てを無に帰す、終焉の光。



光が消え、キラキラと粒が舞い落ちる室内。

振り上げた右手を下ろすと、俺を纏っていた光が消えた。


シャペル、そしてその息子の気配は消滅。

MPも底をついてるな。

こんなのは人生で初めての経験だ。


思わず大の字で倒れ込むと、2人が心配そうな顔で覗き込んできた。


「終わったな・・・。」


「お疲れ様、お兄ちゃん!」


「お疲れ様・・・タクミ。」


2人に抱えられるようにしながら、その部屋を後にした。



-----


その後、月日は流れ。


戦いのあと意識を失ってしまっていたらしい。

2週間も目を覚まさなかったようだ。

その間つきっきりで看病してくれたリンリンには感謝してもしきれない。


戦いの中でも色々なことがあった。

まずは本当に神になったのかとステータスを確認してみたところ。


『魔法神』

暫定。前任による再評価期間中。


というなんとも喜び難いワードが並んでいた。

称号がついた程度で歩みを止めるなということなのだろう。

この調子で魔法を究めていくことで、それが本物になるといったところかな。

今後もサクヤを筆頭に皆に魔法を教えて、自らも学んで、気ままに究めていくとしよう。


そして戦いの後でも大きな変化。


俺が目を覚ましたことを知った王宮は即座に謁見の場を設けた。

ずっと寝ていた俺は身体の硬直や筋力の低下などの後遺症があり、車椅子で参加することになってしまったが。

驚いたことにリンクス侯爵様、イグリード先生、サクヤ、俺と同時4人の招集だった。


「此度の事件解決、見事だった。

まずはシャンドリー・シグマン・リンクス。

日頃の功績を称え、貴殿を公爵と叙する。」


「ハッ、ありがたくお受けします。」


こちらに関しては、例の件のせいで公爵の椅子が1つ空いてしまったこと。

その席に入るのはリンクス侯爵が満場一致で選ばれたこと。

と後からグレイに教えてもらった。


「続いてイグリード・ジャネット・リングリー。

貴殿はあの魔物の大群から魔法学会を守り抜いてくれた。

よってここに侯爵と叙する。」


「我が忠義をここに。」


理由は先程と同じで侯爵の空きに、実は伯爵家であったイグリード先生が選ばれたということだ。


「そして、最大の功労者であるタクミ・イスタル。

魔物の大群を殲滅、及び主犯の討伐、見事であった。

その功績を称え、伯爵と叙する。」


「ありがたく受けさせていただきます。」


「最後にサクヤ・イスタル。

街に現れた中での1番の巨大種の討伐、見事であった。

そして主犯の討伐への尽力、大義である。

爵位は授けることはかなわんが、聖金貨10枚を授けるものとする。」


「ありがとうございます!」



そんなこんなで謁見は終了。

俺より大金持ちになってしまったサクヤはオロオロしているが。

車椅子を押してくれるリンリンも自分のことのように喜んでくれている。


「本当に・・・おめでとう、2人とも。」


「まあ伯爵だろうと男爵だろうとあんまり周りの環境は変わらないだろうけどな。」


「こんなお金もったことないよぉ・・・。お兄ちゃん、預かって!」


と半ば強引に俺のアイテムボックスにしまい込まれた。

まあ良いんだけども。

その様子を見てくすくすと笑うリンリンをじっと見たあと。


「ところで2人は、いつ結婚するの?」


「ふえぇぇ!?」


いきなり急・・・でもないか。

俺に助けてと言って家に連れてきた夜のことを見られていたのだろう。

だからこそ自分に素直になって恋愛してもいいんだよ、と言ってきたんだよな。


本当に、妹に隠し事は一生できなそうだ。



魔法は『意思』。


自分の意思も言えないで何が神か。

暫定だけど。


あわあわして妄想乙女モードに突入しそうなリンリンに向き直り、肩を掴む。

俺の「こうなりたい」という意思をまっすぐに。


「リンリン・・・いや、リンク。

結婚しよう、今すぐ。」


「いいいいいい今すぐ!?

・・・・・・でも・・・はい・・・喜んで、お受けします。」


「やったー!!!!

おめでとう、お兄ちゃん!!」



満面の笑みで飛び込んでくる妹に、心から思う。


たとえ結婚しようとも。



この笑顔だけは、一生護るんだ。




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