特典20「充電完了」
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とある金曜日。
『魔法考察』の授業も終わり、昼までの時間で『魔力による魔法陣構築』の授業を行っている。
火曜日と木曜日の1時間目と金曜日の4時間目の週に合計3回のスケジュールが組まれた。
オーグレイ公爵様の計らいもあり、学生でありながら臨時講師として働かせていただけることになった。
驚くべきはその金額。
1ヶ月でここに入学するための資金よりもお給料が高い。
リズはもちろん、グレイとリンリンも週に1回ずつではあるが参加してくれている。
友人にこういった姿を見せるのは恥ずかしさもあるが、こと魔法に関しては皆も認めてくれているようだ。
だがまあお恥ずかしながら、ようやく授業としての形ができてきたレベルだ。
他の先生方から比べたらまだまだ経験不足は否めない。
ぎこちないながらも魔法の楽しさを教え、できたときの喜びを分かち合える。
そんな授業にできたらいいな。
そう思っていたのだが、毎回と言っていいほど色んな先生方が見学に来られる。
不思議に思い俺を教員としてのテストをしているのか、と確認してみたところ。
「我々も君の授業に興味があってね。
いったいどんな方法で教えているのか気になって見に来ているんだ。
全員がプライベートで魔法や君への興味に則って来ているだけだと思うから、気を張らなくていい。」
だそうで。
参加してくれている生徒のほとんどが『魔法考察』の授業の参加者で、俺のことを認めてくれている人が多くを占める。
とはいえ貴族社会に染まっているこの世界の生徒たち、特に噂を聞きつけて授業に参加した生徒の中からは少なからずの反発はある。
「タクミくん、魔法陣生成の時のイメージなんだけど・・・。」
「ハッ、平民風情が男爵様に向かってそんな口の利き方をしている授業なんて、レベルもたかがしれてるな!」
「はあ・・・授業開始時にもお伝えしましたが、僕の授業ではルールを設けています。
1つ、地位や爵位に関わらず相手への尊敬をもって接し、互いに助け合うこと
2つ、仲間への呼び方は「くん」または「さん」付け、または認める仲間として呼び捨てを可とし、爵位は必要としないこととする
3つ、地位や権力の行使、及びそれに準ずる発言を禁ずる
4つ、魔法の可能性を信じて諦めず、そして真摯であれ
以上、お伝えしたつもりでしたが?」
「そんなものイスタル男爵様が勝手に掲げているだけでは?
こちらには守る義理も道理もない!」
「ではこの授業からご退出ください。授業の邪魔です。」
「なんだと・・・?貴様、我がラミール伯爵家を愚弄するつもりか!!」
「伯爵家ではなく一生徒であるあなたの態度に対して、教師である僕が言っているのです。
それに、僕を臨時講師に推薦したのはオーグレイ公爵様です。
僕を侮辱することは公爵様に対するも同じこと。
あなたこそ、オーグレイ公爵家を愚弄するおつもりですか。」
「ぐっ・・・くそっ、覚えてろよ!!」
「こんな面倒なこといちいち覚えていたらキリがないですよ。」
伯爵家の坊っちゃんが逃げるように退出した後、思わず出てしまったそんな俺の呟きに教室内で笑いが起きた。
一部始終を見ていたリズもくすくすと笑っていた。
「すまんなリズ。威を借るような発言をしてしまった。」
「いえ、構いませんよ。
授業を続けましょう、タクミ。」
それに頷き皆へと振り返る。
平民だろうと貴族だろうと、学ぶ機会が平等でなくてはならない。
魔法の発展には魔法適性をもつ貴族だけでは数が足りないのだから。
それを、この俺の授業から示していくんだ。
「さて、先程シャーリーさんからとても良い質問がありました!
魔法陣構築の際のイメージですがーーー
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「とまあそんなことがあって大変だったんだ。」
「先週・・・ボクが参加したときも・・・同じようなことあった。」
「そうなんだよ、毎週2回のペースで起こるものだから困って(バシャッ)・・・。」
「おい貴様、なんのつもりだ。」
いつものメンバーで昼食の時間。
リンリンにいつもより疲れてる顔と言われてしまったので、授業でのことを伝えていた。
喋っているさなかに泥水のようなものが背中からかけられた。
「良いよグレイ。弁当は無事だ。」
「いやそれは本当に良かったよ。無事じゃなかったら今頃学院が吹き飛んでいただろうしな。」
「おおっと申し訳ございません、イスタル男爵様。
トイレ掃除に使った水を処理しに水道に向かっていたのですが、つまずいてしまいまして。」
先程の伯爵家のお坊っちゃんか。
授業での借りをということだろうか。
授業中でなければ先輩と後輩だからな。
まあなんにしても制服には汚れも水分もまったくついていないので問題ない。
でもこれだけは言っておこう。
「それは災難でしたね。
ですが危うく僕が一番大事にしているものを汚しかけましたので、気を付けてください。
もし汚していたら、今この瞬間のあなたの命はなかったので。」
全力の殺意を出しながら、杖を先輩の首に向けて押し付ける。
自慢じゃないがAランク冒険者でもある俺は学院内外問わず、なかなかに有名になっている。
そんな俺が妹を一番大事にしているというのは周知の事実だ。
決して穢してはならない、もしそうなればその実力を敵に回すことになる、と。
そして学生の身でその全力の殺意を浴びたお坊っちゃんは小さな悲鳴をあげて冷や汗を大量にかき、逃げるように尻もちをつき、その場から離れていた。
少しは身の程を知るいいきっかけになるだろうか。
親の威厳にすがる馬鹿息子なんて、ろくなもんじゃない。
とはいえ今日はストレスが溜まりまくってるな。
サクヤがこの場に居れば愛でくりまわして発散したのだが、今日は午後の授業もある。
仕方ない、代わりに。
お弁当を食べ続けるリンリンの後ろに座り、持ち上げて俺の膝の上に座らせて頭をなでくりまわす。
「タクミ・・・これはちょっとさすがに・・・恥ずかしい・・・。」
「すまんリンリン。
サクヤが居ない今、頭を撫でてストレス発散をさせてくれるのはリンリンしか居ないんだ。」
「むしろそれで発散できる体質なのな。」
「リンリンが恥ずかしがりながらも、とても嬉しそうなのが可愛いですね。」
「リズ・・・助け・・・!」
「はあ・・・可愛い。よーしよーしよし、ふふふ、可愛いなあ。」
「・・・なくても・・・いい・・・かも。」
「まんざらでもねえ顔すんなよ。全てを受け入れるように寄りかかっちまってんじゃねえかよ。そしてお前も撫でるという行動自体に快楽を覚えてる顔すんなよ。気持ちわりーわ。」
「ふふっ、お2人とも本当に仲良しですね。」
「僕だけか!?この状況をおかしいと思ってるのは僕だけか!?」
「お、チャイムが鳴ったな。
おっし、充電完了!『魔法訓練』やるか!」
「なんで何事もなく戻ろうとしてんだよ。こちとら水ぶっかけられて心配してたんだよ。気づいたらなんか君よりもストレス溜まってるよ!」
「ストレスのためすぎはよくないぞ、グレイ。」
「殴っていいか?殴っていいよな?」
「バリア張ってるから手が壊れるぞ。」
「そういえばそうだったよ!!ああもう、なんて昼だ!!」
グレイの憂鬱は尽きそうになさそうだ。
しかしリンリンのおかげでだいぶストレスを発散することができた。
これで帰ったらサクヤを愛でくりまわせば、明日にはリセットできているだろう。
せっかくだし、甘いものでも買って一緒に食べるのもありだな。
「リンリン、放課後甘いもの買いにいこうぜ!」
「うん・・・行く。」
「ふふっ。リンリンもですけど、タクミも実はまんざらではないのかもしれませんね。
って、殿下!?」
「すまない、リズベット。
僕も少しだけ・・・その、ストレス発散させてくれるか。」
「・・・はい。」
おお、なんか2人がいちゃついてるところ初めて見たかもしれない。
だが頭撫デストとしては力加減がもう少し弱いほうが相手が気持ちよさそうにしてくれると思う。
まあ見なかったことにしてあげて、魔法訓練の準備を進めるとしよう。
そんな準備をしようと伸ばした俺の手のひらに、リンリンが自ら頭を押し付けてグリグリと動かしてきた。
「ふう・・・これで充電完了・・・頑張る。」
「セルフなでなで・・・だと・・・!?」
サクヤと同じ行動に驚いていると。
俺特性の粘土を持ちながら振り向き、ふふっと可愛く笑うリンリンだった。
思わず、少し見とれてしまった。
「・・・俺はシスコンだがロリコンのつもりはないぞ。」
「誰がロリだ・・・誰がロリだ・・・!」
「あっ、いた・・・くはないけどやめてっ。」
グレイたちがこちらに来るまで、赤い顔で永遠と魔法粘土をベシベシとぶつけられたのだった。
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