AIISE
ブクマ登録、ありがとうございます!
「第三話 学校2」
その男の子をあたしは知っているような…
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です…、玲央さん」
そうだ、私の記憶が正しければ彼は“騎士多 玲央”という名前のはず。
「よかった、まだ病気が治っていないのかと思いました」
「いえ、すっかりよくなりました。ありがとうございます」
「そうですか。教室まで一緒に行きませんか?」
玲央さんとは同じ、1年A組だ。
教室までの道のりも曖昧だったので、誘ってくれてほっとした。
玲央さんの言葉に頷き、校舎の中へ入る。
前世の普通の高校よりはるかに広く、綺麗なつくりでこんなに差があるものなのかと思ってしまう。
すれ違っていく生徒も、まだ一年生なのに騒いだりせずに静かに廊下を通っている。
玲央さんと話ながらも周りの様子を見ていると、一人の女の子が駆け寄ってきた。
「麗香さんっ、」
黒いショートカットの髪に大きな目。
背が小さくて、どこか小動物のような可愛さを感じさせる。
「真由さん、どうしましたの?」
女の子の名前は“沙川 真由”。
同じクラスで、私と仲が良い。
「今日はご登校になられて、よかったですわ!いきなり一週間も休んで心配しました」
大きな目を潤ませながら、そう言ってくる。
「すみません、真由さん…。心配してくださってありがとうございます」
「いえ、それよりたくさん話したいことがありますの!…あら、騎士多様と一緒だったんですか!…さすが、麗香様ですわ」
ぼそ、と真由さんは頬を赤らめながら呟く。
「え…?」
「なんでもありませんわ!では、また後で!」
「ま、真由さん…?」
真由さんは風のように去っていった。
なんだったんだ…。
「麗香さん、行きましょう?」
「え、えぇ…」
なんとか答えながら、また玲央さんと一緒に教室へ向かった。
*****
教室のドアの前へ来ると、玲央さんがドアを開けてくれた。
これがレディファースト…。
この歳でそれができるなんて、驚くばかりだ。
お礼を言いながら教室へ入ると、なぜか教室の空気が騒がしくなった。
「赤王様と騎士多様が…」
「さすが麗香様…」
そんな会話が所々聞こえてくる。
麗香って、有名だったっけ…。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、麗香様」
クラスメイトに挨拶しながら席へ向かう。
なぜか、席は一番前の廊下側。
後ろの窓側がいいな…。
一つ後ろの席は玲央さんだ。
机に教科書やノートを入れ、時間もあるので少し校舎内を見回ろうと廊下へ出る。
すると、教室の中から椅子を慌ただしく引く音や早足で歩く音が聞こえてきた。
な、なにがあったんだ…。
ガラッ、と勢いよくドアが開けられ女子生徒がたくさん出てきた。
「「「麗香様!」」」
「「「麗香さん!」」」
「「「ちょっとお話がありますの」」」
ぐるりと周りを囲まれた私は
「はい…」
と言うしかありませんでした。