二
「おいおい、交通事故っていうのはマジですかぁ!?」
「うん。幸い命に別状はないらしいけど、肋骨と足の骨が折れたって。今は総合病院に入院中だよ」
「修学旅行一週間前だっつうのに……一体なにやってんだあいつはよ」
「まさかあのフラグを回収するなんて思わなかったよ」
「フラグ? フラグってなんぞ?」
「帰り道で別れる前に『こんなとこにいられるか! 俺は帰るぞ!』って」
「…………うひゃははははは!! やっぱあいつ最高だわ面白すぎんだろぉ!!」
「なんも言えねえ……」
「ははは……今日の放課後お見舞いに行こうか」
「あんなやつでも一応班のメンバーだしな。しょうがねえか」
「おおー、ナチュラルなツンデレだねぇ。これで美少女だったりしたらなぁ。筋肉モリモリマッチョマンなのが惜しまれるぜぇ」
「オラァ! オラオラオラァ!」
「ぐああ、やめろぉ! 内腿を重点的に攻撃するのはやめろ、やめろぉ!」
「相変わらず男子グループは元気ですねえ」
「まったくだな。しかし彼が入院とは、放課後は病院にいかねばならんな」
「あれ、あんたそんなに彼と親しかったかしら」
「私は学級委員だぞ。クラス代表として見舞いに行くのは当然のことだ」
「そんなことばっかりしてるから勘違いした男どもが寄ってくるのよ。あんたはあのお坊ちゃん以外に興味ないんでしょ、少しは自重しなさい」
「そうですよ! そのせいで私たちには彼氏が出来ないんですよ、どうしてくれるんですか!」
「いやその理屈はおかしい」
「別に男にこだわらなくてもいいだろう。お前たち、ためしに女同士で付き合ってみたらどうだ?」
「適当なこと言わないでちょうだい。あたしにそっちのケはないわ」
「…………ありかもしれませんね」
「とうとう頭にウジが沸いてしまったのねかわいそうに」
「よし、カップル成立だな。ほら早く健やかなる時も病める時も共に愛し合うことを誓え」
「さあ、私と添い遂げましょう! 死が二人を分かつまで!」
「あんたと一生一緒なんて……想像しただけで地獄だわ。十年でギブアップね」
「十年もつのか。大したものだ」
「私は百年でも千年でも大丈夫ですよ!」
「うわあ、わりと本気で気持ち悪い。あたしがモテないのはどう考えてもあんたが近くにいるせいね、間違いないわ」
「そうか、いくらアピールしてもあいつが振り向かないのもお前のせいだったのか……許せんなあ許せんなあ」
「ヒイィ!? 完全に言い掛かりじゃないですか!? あああ、やめてぇ! 二の腕をつまむのはやめて、やめてぇ!」
「相変わらずお前の姉のグループは騒がしいな」
「えへへーそれほどでもー」
「なぜ……今のが誉め言葉に聞こえるのか」
「女同士の禁断の愛かー、それはそれでありかもね」
「妄想は頭の中に留めとけよクソビッチ」
「もー、女の子がそんな言葉使っちゃ駄目だよー」
「そうだよ、ビッチてなんだよう失礼な。ちょっと二股かけただけじゃんか」
「相手が同年代ならまだ許されるだろうよ。自分より一回りも二回りも年上に手を出してるんじゃあな、どうしようもないぜ」
「ちょろいもんだぜ」
「てめえは絶対ろくな死にかたしねえよ」
「ここらで止めにした方がいい……この子の教育上よろしくない」
「ほえ? あたしー?」
「ああもう、いちいちかわいいなあ」
「よしよし、お前はこいつみたいなビッチになるんじゃないぞ」
「ふふーん、そんなこと言われなくてもわかってるよー」
「あれ、なんか今のが一番ダメージでかい。泣きそう」
「悪気がないぶん深く心を抉る……恐ろしい子」
「あたしにはもう心に決めた人がいるからねー。他の人に浮気することはないのだー」
「ぐっ、なんて純粋なやつだ……眩しくて直視できないぜ」
「楽しかーーーー」
「やべえ! ビッチが浄化されて昇天しちまった!!」
「穢れきった心が触れるには……彼女の魂は清らか過ぎた……」




