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双子の妹は聖女候補、無属性の私は食の知識で自由に生きます  作者: ぽかぽか
エレンジア

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王都前編 6

 数日前。

 魔法研究所に戻ったリアムは、マシューとともに自分の研究室に向かった。


「マシュー、オリバーを呼んでもらえる?」

「ああ」


 マシューが研究室を出ていく。


 オリバーは氷属性を持つ研究員だ。

 自分が水属性で作った氷と、氷属性の氷には違いがあるのか。

 それを調べるなら、まず彼に見てもらうのがいいだろう。


 リアムは旅の途中で記録した内容を机の上に広げた。

 すると、オリバーが来るより先に扉が開いた。


「リアム」


 入ってきた人物を見て、リアムはわずかに眉を寄せる。


「……ヴィクター所長。どうしてここに?」

「ずいぶんな言い方だな」


 ヴィクターは気にした様子もなく研究室に入ってきた。


「陛下から連絡をもらった。水属性の魔法で氷を作ったそうじゃないか」

「そうだけど」

「なら、私にも関係があるだろう。私も水属性だ」

「所長の仕事は?」

「急ぎのものは片付けてきた」

「急ぎじゃないものは?」

「……それは今、関係ないだろう」

「残ってるんだね」


 リアムが呆れた目を向けても、ヴィクターは帰る気配を見せない。

 所長になる前から水属性の魔法を研究していたヴィクターにとって、今回の話を聞いて大人しく執務室にいるという選択肢はなかったらしい。


 やがて、マシューが一人の男を連れて戻ってきた。


「連れてきたぞ」

「リアム殿下、お呼びだと聞きました」


 短く告げたのは、氷属性の研究員であるオリバーだった。


「うん。ちょっと見てもらいたいものがあるんだ」


 リアムはテーブルの上に器を置く。


「水を凍らせる」

「水属性で?」

「そう」


 オリバーの眉がわずかに動いた。

 ヴィクターも興味深そうに隣から覗き込む。

 リアムは器の中に水を作り出した。


「まず、この水を冷やす」


 旅の途中で何度も繰り返したように、慎重に魔力を操作していく。

 十分に冷えたところで、水の一点にわずかな刺激を与えた。

 次の瞬間、水の一部が白く変わる。

 そこから広がるように、透明だった水が一気に凍っていった。


「……」


 オリバーが無言で氷を見つめる。

 ヴィクターも目を見開いた。


「本当に凍ったな」

「だから言ったでしょう?」

「話を聞くのと、実際に見るのとでは違う」


 ヴィクターはすぐに空いている器を手に取った。


「私もやってみよう」

「やると思った」


 リアムが苦笑する横で、ヴィクターは水を作り出した。

 同じように冷やしていく。

 しばらくして、ヴィクターが水に触れた。

 リアムも指先を入れて確かめてみる。


「冷えてはいるけど、まだ足りないと思う」

「分かっている」


 ヴィクターは再び集中した。

 何度か試してみたものの、水は確かに冷たくなるが、リアムが凍らせる直前まで冷やした水ほどではない。


「簡単にはいかないか」

「俺だって、すぐにできたわけじゃないよ」

「だが、水属性でも水を冷やすこと自体はできる」


 ヴィクターは器の中の水を見つめる。


「なら、他の者にも試してもらう価値はあるな」

「そうだね。俺だけができるのか、それとも練習すれば他の人にもできるのかは知りたい」

「研究所の水属性を何人か集めるか」


 その横では、オリバーがずっと氷を見つめている。


「……これが他の水属性にもできるようになったら、氷属性は希少じゃなくなるんですか」


 リアムは首を横に振った。


「いや。たぶん、これは氷属性とは違う」

「でも、凍ってますよね」

「うん。だから、それを確かめたいんだ」


 リアムは氷に手を伸ばす。


「オリバーの氷は、水を冷やしてるわけじゃないんだよね?」

「ええ。氷属性では、最初から氷を出します。水を凍らせているわけじゃありません」

「俺は水属性で水を出して、それを冷やして凍らせてる」


 出来上がったものは、どちらも氷だ。

 けれど、そこに至るまでの過程は違う。


「同じものなのか、調べてみたいんだ」

「……分かりました」


 オリバーの表情に、わずかに興味の色が浮かぶ。


「何をすればいいですか?」

「まず、同じくらいの大きさの氷を二つ出してくれる? 一つは魔力を切って、もう一つはそのまま維持してほしい」

「分かりました」


 オリバーが二つの器を並べる。

 氷属性の魔力を使い、それぞれの器に同じくらいの大きさの氷を生み出した。

 一方は魔力を切り、もう一方には、氷属性の魔力を送り続けている。


「できました」

「じゃあ、俺も」


 リアムも隣に器を置き、水を作り出した。

 十分に冷やしてから刺激を与えると、水が一気に凍る。


 三つの器が並んだ。


「見た目は同じだな」


 ヴィクターが順番に覗き込む。


「俺にも違いは分からない」


 マシューも三つを見比べる。

 どれも見た目は同じ氷で、触れば同じように冷たい。


「じゃあ、鑑定してみる」


 リアムは最初に、オリバーが魔力を切った氷を調べた。


「……属性の反応はないね」

「魔力を切ってますから」

「うん。今は普通の氷と変わらないみたいだ」


 次に、オリバーが魔力を送り続けている氷を見る。


「こっちは氷属性の反応がある」

「今も俺が維持しています」

「そうだよね」


 そして最後に、自分が水属性で作った氷に意識を向ける。


「こっちは……水属性だ」

「氷になっているのに?」


 オリバーが眉を寄せる。


「うん。少なくとも氷属性にはなってない」


 リアムはもう一度確かめた。

 けれど、結果は変わらない。


「リアム、その氷には今も魔力を送っているのか?」


 ヴィクターに聞かれ、リアムは頷いた。


「うん。凍らせたあとも、そのまま維持してる」

「なら、一度切ってみろ」

「分かった」


 リアムは氷に送っていた魔力を止めた。

 氷はそのまま器の中に残っている。


 少し待ってから、もう一度鑑定する。


「……あれ?」


 リアムが首を傾げた。


「どうした?」

「まだ反応が残ってる」

「水属性のか?」

「うん。でも……」


 リアムは氷をじっと見つめた。


「凍らせる前とは、少し違う」


 属性そのものは水のままだ。

 けれど、普通の水から感じるものとは、わずかに反応が違っている。


「氷属性に変わったわけではないんだな?」


 ヴィクターが確認する。


「それは間違いないよ。水属性のまま」


 リアムはもう一度、目の前の氷を鑑定する。


「ただ、水だったときにはなかった反応がある」

「凍ったことで何か変化した、ということか?」

「たぶん。でも、まだ分からない」


 オリバーが自分の生み出した氷と、リアムの氷を見比べる。


「見た目は同じだけどな……」

「うん。やっぱり何か違うみたいだね」


 その日は同じ実験を何度か繰り返し、それぞれの氷に同じ反応が現れるかを確認することになった。


 そして翌日。

 リアムたちは、前日の記録をもとに再び検証を続けていた。


「やっぱり出るね」


 リアムは目の前の氷と、手元の記録を見比べた。


 水を作っただけでは、普通の水属性の反応しかない。

 冷やしている途中も同じだ。

 けれど、一度氷になると、水属性のまま、それまでにはなかった反応が現れる。


「何度やっても同じか?」


 ヴィクターが尋ねる。


「うん。多少の違いはあるけど、凍らせると毎回出てる」


 オリバーも氷を覗き込む。


「俺の氷属性とは違うんですよね?」

「違うね。こっちはあくまで水属性のままだから」


 リアムは二つの氷を見比べた。

 なぜ凍ることで変化が起きるのか。

 その反応が何を意味しているのか。


「でも、毎回同じ変化が出るなら、呼び方があった方がいいかな」

「そうだな」


 ヴィクターも頷く。


「氷になったときに現れる性質だから……ひとまず『氷性質』って呼ぼうか」

「仮称ならそれでいいだろう」


 こうして、水属性の魔力が氷になったときに現れる変化を、研究所では仮に『氷性質』と呼ぶことになった。


 普通の氷。

 氷属性の魔力で生み出された氷。

 そして、水属性のまま『氷性質』が現れた氷。


 見た目は同じでも、魔力の反応には違いがあることが分かった。


 さらに翌日。

 今度は、それぞれの氷に外から熱を加えてみることになった。


「ということで、マシュー。お願い」

「……俺か?」


 それまで少し離れたところで見ていたマシューが、嫌そうな顔をする。


「ここにいる火属性はマシューだけだから」

「それはそうだが……」

「頼む。少しだけでいい」


 ヴィクターにまで言われ、マシューは小さく息を吐いた。


「分かった。何をすればいい?」

「同じくらいの火を、それぞれの氷に当ててほしい」


 まず試すのは、オリバーが氷属性の魔力で維持している氷だ。


 マシューが手をかざし、小さな炎を生み出す。

 それを氷に近づけると、表面がわずかに濡れ始めた。

 しかし、オリバーが魔力を送り続けると、それ以上はなかなか形が崩れない。


「もう少し続けてください」

「ああ」


 しばらくして炎を消すと、リアムは氷を確認した。


「ほとんど形が変わってないね」

「これくらいの熱なら維持できます」


 オリバーが答える。


「じゃあ、次は俺の方」


 リアムが自分の作った氷を同じ場所に置く。

 再びマシューが炎を近づけると、今度は表面がすぐに濡れ、ぽたりと水滴が落ちた。


「こっちの方が早いな」

「うん」


 リアムは氷に魔力を送り、さらに冷やしてみる。

 すると、溶ける速さが少し緩やかになった。


「もう少し続けて」

「ああ」


 マシューが炎を当て続ける。

 氷は少しずつ小さくなる。

 リアムはそれに負けないように魔力を送り続けた。


「リアム」

「まだいけるよ」

「そういう問題じゃない」

「どこまで耐えられるか調べないと」

「お前の魔力量を基準にしたら、比較にならないだろう」

「……あ」


 リアムは氷を見る。


「それもそうか」

「今気づいたのか」


 マシューが呆れたように炎を消した。


「それに、オリバーとリアムでは魔力操作の技量も違う」


 ヴィクターが二つの氷を見比べる。


「今日の結果だけで、どちらが熱に強いと決めることはできないな」

「そうだね」


 リアムも頷いた。


「今のところ、反応に違いがあった、くらいにしておこうか」

「その方がいいでしょうね」


 オリバーも同意する。

 リアムは残った氷を眺めた。

 水属性のまま、氷になる。

 そして凍ったあとには、それまでとは少し違う魔力の反応が現れる。

 もし、この変化が水属性そのものに起こるものなら——。


「……これ、魔石でもできないかな」


 その言葉に、オリバーが顔を上げた。


「水属性の魔石にですか」

「うん」


 魔物から採れる魔石にはさまざまな属性があり、火、水、風、土の魔石は比較的手に入りやすい。

 一方、氷や雷といった珍しい属性を持つ魔物は数が少なく、そこから採れる魔石も希少だった。


「氷属性の魔石は少ないでしょ。それに、別の属性の魔石に氷属性の魔力を込めることはできても、効率が悪くて魔道具には向いてない」

「まあ、そうですね」


 オリバーが頷く。


「だったら、水属性の魔石にも同じような変化を起こせないかなと思って」

「……確かに」


 オリバーの目に興味の色が浮かぶ。


「水属性そのものを氷属性に変えるんじゃなくて、『氷性質』と同じ変化を起こせるか試すのか」


 ヴィクターも考えるように腕を組む。


「できるかどうかは分からないけどね」

「だから調べるんだろう?」

「もちろん」


 リアムが研究用の水属性の魔石を取り出そうとした、そのときだった。

 研究室の扉が叩かれた。


「リアム様」

「なに?」


 扉の向こうから、研究所の職員が答える。


「お客様がお見えになっています」

「俺に?」

「はい。ルナという名の冒険者の方たちです」

「ルナたち?」


 リアムは手を止めた。

 隣ではマシューも顔を上げている。


「どうしたんだろう」

「さあな」


 魔石の実験はあとにすることにして、リアムはルナたちを研究室に通してもらうよう頼んだ。


 しばらくして、再び扉が開く。


「リアム」

「来たね」


 入ってきたのは、ルナとミア、レオ、それにラズだった。

 見慣れない二人の姿に気づき、ルナが足を止める。


「あ、ごめんなさい。研究中だった?」

「大丈夫。ちょうど区切りがついたところだから」


 リアムはそう答えると、ヴィクターとオリバーに目を向けた。


「紹介するね。こっちが研究所の所長をしているヴィクター。それから、氷属性の研究員のオリバー」

「初めまして。ルナです」


 ルナが頭を下げると、ミアとレオもそれぞれ挨拶する。

 ラズも三人のそばで、小さく頭を下げた。


「ヴィクターだ。今回の氷を作るきっかけになったのは君だそうだね」

「あ……はい。でも、私は氷を作れないかって聞いただけです」

「それでも、そこから新しい研究が始まることはある。面白いきっかけだったよ」

「オリバーです」


 オリバーも短く名乗る。


 ルナは机の上に並んだ器や氷に目を向けた。


「やっぱりお邪魔だったんじゃ……」

「いや、ちょうど休憩にしようと思っていたところだ」


 ヴィクターがすぐに答えた。


「本当ですか?」

「ああ。ちょうどいい時間だ」


 そう言ってから、ヴィクターはオリバーを見る。


「私たちは一度戻ろう」

「所長は執務室に戻ってください」


 マシューがすかさず言う。


「……分かっている」

「まだ仕事残ってるんでしょ?」


 リアムが笑う。


「リアム、お前は黙っていろ」


 ヴィクターが顔をしかめたところで、ルナが慌てて声をかけた。


「あ、待ってください」


 持ってきた包みからムギボを取り出し、二人に差し出す。


「これ、よかったらどうぞ。差し入れです」

「私たちにも?」

「はい。少し多めに作ってきたので」

「それはありがたい」


 ヴィクターが嬉しそうに受け取る。

 オリバーも差し出されたムギボを見てから手を伸ばした。


「……ありがとう」

「どういたしまして」


 二人が研究室を出ていくと、ルナたちはテーブルを囲んだ。


「それで、今日はこれを届けに来てくれたの?」

「うん。前にリアムもマシューも、研究のときに食べるのにいいかもって言ってたから」


 ルナが包みを開く。


「でも、前に食べたものとは少し変わってるの」

「変えたの?」

「商業ギルドで売ることにしたから、材料を見直したんだ」


 リアムが一本手に取る。

 一口食べると、少し考えるように首を傾げた。


「確かに前と少し違うね」

「分かる?」

「うん。でも、これもおいしい」

「よかった」


 ルナがほっと笑う。

 マシューもすでに一つ手に取っていた。


「マシューもどう?」

「もう食べてる」

「早いね」

「そのために持ってきたんだろう」


 その返事に、ルナが小さく笑った。


「最初に三十本作って、ギルドで委託販売してもらったの。それが全部売れたから、今日は五十本作って預けてきたところ」

「全部売れたんだ。よかったね」

「うん。まだ少しだけだけどね」


 それでも、自分で作ったものを誰かがお金を出して買ってくれたことが、ルナは嬉しかった。


「それと、しばらく王都にいるから、部屋も探してるんだ」

「宿を出るの?」

「いいところが見つかったらね。長く泊まるなら、その方が安くなるかもしれないって。それに……」

「料理できる?」

「なんで分かったの?」


 ルナが目を丸くする。


「ルナだから」

「どういう意味?」

「ルナはいつも食べ物のこと考えてるだろ」


 レオまで口を挟む。


「そんなことないよ」

「王都に来てからだって、ライサを探して、ムギボを作って、今度は台所付きの部屋だろ」

「……ちょっとだけだよ」

「十分だと思うけど」


 ミアが笑う。

 そんな三人のやり取りを、ラズはムギボを食べながら静かに眺めていた。

 時折、机に残された氷に目を向けている。

 リアムがその様子に気づいた。


「ラズは少し落ち着いた?」

「まだあまり話さないけど、少しずつかな」


 ルナが答える。


「この前、ご飯を作ったら、おいしいって言ってくれたの」

「そっか」

「うん」


 ラズは何も言わなかったが、手にしたムギボをもう一口かじった。


「そういえば」


 マシューが思い出したように口を開く。


「レオ、ミア。二人に話がある」

「俺たちに?」

「ああ。姉から返事が来た」


 レオとミアが顔を見合わせた。


「訓練のこと?」

「そうだ。二人とも引き受けると言っている」

「本当?」


 ミアの表情が明るくなる。


「よかったな」

「ああ」


 レオも嬉しそうに頷いた。

 だが、すぐにミアの表情が少し固くなる。


「でも……マシューのお姉さんって、侯爵家に嫁いでるんだよね?」

「そうだ」

「侯爵家……」


 ミアが急に不安そうになる。

 レオも少し考えてからマシューを見た。


「俺たちが行って大丈夫なのか?」

「姉本人がいいと言ってるんだ。問題ない」

「でも、侯爵家か……」

「今さら緊張するのか?」


 マシューが呆れたように言う。


「そりゃするだろ」

「リアムとは普通に話してるだろ?」


 レオが一瞬黙る。

 ミアもリアムを見た。


「……リアムはもう慣れたから」

「俺、一応王族なんだけど」

「分かってるよ。でも、リアムはリアムだもん」


 ミアが当然のように答えると、リアムは少し複雑そうな顔をした。


「それに、マシューだって侯爵家の人間だよ」

「え?」


 今度こそミアが固まった。

 レオも驚いたようにマシューを見る。


「そうなのか?」

「……言ってなかったか?」

「聞いてないよ!」


 ミアが声を上げる。


「マシューは侯爵家の次男だよ」

「余計なことまで話さなくていい」

「別に隠すことでもないでしょ」


 ミアはしばらくマシューを見つめたあと、困ったように眉を下げる。


「でも……やっぱり違うよ」

「何がだ?」

「リアムもマシューも、ずっと一緒に旅してたから。今さら身分を聞いても、リアムとマシューだし……」


 レオも頷く。


「初めて行く侯爵家の屋敷とは別だろ。俺たちは平民だし、何をどうすればいいのかも分からない」

「なるほどね」


 リアムはようやく納得したようだった。


「心配しなくていい。姉はそういうことを気にする人じゃない」


 マシューはそう言ってから、残っていたムギボをもう一つ手に取った。


「姉にも事情は話してある。訓練を受けに行くだけなんだから、必要以上に構える必要はない」

「……分かった」

「それでも緊張はするけどね」


 ミアが小さく付け足す。


「俺は研究所にいるから一緒には行けないが、近いうちに姉の使いがそっちに行くはずだ。都合のいい日を伝えてくれればいい」

「分かった」

「ありがとう、マシュー」


 ミアが頭を下げる。


 王都に来てから、それぞれ少しずつ新しいことが始まっていた。

 まだどれも始まったばかりで、この先どうなるのかは分からない。

 それでも、王都で過ごす日々は忙しくなりそうだった。

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