↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双子の妹は聖女候補、無属性の私は食の知識で自由に生きます  作者: ぽかぽか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/50

3-9

 王都の大神殿。

 その一室で、リアは寝台に横たわる女性のそばに座っていた。


「では、始めますね」

「はい。お願いします、リア様」


 女性は緊張した様子で頷く。

 リアはその腕にそっと手を添え、意識を集中させた。

 淡い光が手のひらから広がり、女性の身体を包み込んでいく。

 リアは神殿で学びながら、少しずつ人々の治療にも携わるようになっていた。


「……これで大丈夫だと思います」


 光が消えると、リアはゆっくりと手を離した。

 女性が身体を起こし、自分の調子を確かめる。


「ありがとうございます。ずいぶん身体が楽になりました」

「よかったです。でも、今日は無理をしないでゆっくり休んでくださいね」

「はい。本当にありがとうございました」


 何度も頭を下げる女性に、リアも笑顔を返した。


 少し離れた場所では、ペトロも別の患者を治療している。ペトロはリアの教育係を務める上級神官だ。

 神官としての知識だけでなく、《治癒》のスキルも持っている。


 この世界には、魔法とは別に、生まれつき特殊な力——スキルを持つ者がいる。

 スキル持ちは珍しく、神殿で正式に確認されれば王家と神殿に記録される。希少な力を持つ者は、国から保護を受けることもあった。

 もっとも、自分のスキルを明かさずに暮らしている者もいるため、実際にどれほどのスキル持ちがいるのかは分かっていない。


 治癒スキルは、怪我だけでなく、病によって起きた身体の異常を治すことにも長けている。

 一方、リアの持つ光属性は、それよりもさらに強力な治療を行うことができる。重い病や大きな怪我にも対応でき、治療にかかる時間も短い。さらに光属性には、邪気を祓う浄化や、呪いを解く力もある。

 そして歴代の聖女たちは、その光属性を高い水準で扱ってきた。


「こちらも終わりましたよ」


 やがてペトロも治療を終える。


「ありがとうございます」

「今日はゆっくり休んでください。また調子が悪くなるようでしたら、遠慮なくいらしてくださいね」


 患者を送り出すと、ペトロはリアの方を見た。


「リア様もお疲れ様でした」

「ありがとうございます」

「先ほどの治療、昨日よりずっと安定していましたよ」

「本当ですか?」

「ええ。ですが、少し力を使いすぎましたね」

「……分かりますか?」

「もちろんです」


 ペトロは苦笑する。


「早く治して差し上げたい気持ちは分かりますが、一人の治療で力を使い切ってしまっては、次の方を治療できません」

「はい……」

「力の配分も覚えていきましょう」

「分かりました」


 リアは素直に頷いた。

 光属性があるからといって、最初から何でもできるわけではない。力の使い方も、治療の仕方も、覚えなければならないことはたくさんあった。


「リア様、ペトロ様」


 そこに聞き慣れた声がした。

 振り返ると、白い法衣をまとったノエルがこちらに歩いてくる。


「お疲れ様です」

「ノエル」


 リアはほっとしたように笑った。

 ノエルはリアと同じ十五歳の見習い神官で、現在は神殿でのリアの世話役も務めている。


「今日の治療は終わったところですか?」

「はい。ちょうど今終わったところです」

「では、少し休まれた方がいいですよ」

「でも、そんなに疲れてはいませんよ」

「そう言って、昨日も夕方には眠そうにしていたじゃないですか」

「それは……」


 言い返せず、リアは口をつぐむ。

 そんな二人を見て、ペトロが小さく笑った。


「ノエルの言う通りですね。次の予定までは少し時間があります。休憩にしましょう」

「……はい」


 リアが頷いたところで、ノエルが思い出したようにペトロを見る。


「そういえば、ペトロ様」

「何ですか?」

「アルミヤの教会から問い合わせが届いていました」

「アルミヤから?」


 その地名に、リアも反応した。


「何かあったのですか?」

「いえ。病人が増えたというような話ではありません」


 ノエルは首を振る。


「青葉草について、何か特別な効能が確認されていないか調べてほしいそうです」

「青葉草ですか?」


 ペトロが不思議そうな顔をする。


「珍しいものではありませんね。食用にもされているはずですが」

「はい。アルミヤでも以前からスープなどに使われていたそうです」

「それなら、どうして今になって?」

「それが……最近、青葉草を使ったスープが町で話題になってるそうなんです」

「スープ?」


 リアも首を傾げる。


「最初、町の宿屋で出されていたようですが、作り方を教えたのか、最近では他の店でも出されるようになったそうです。幸運のスープと呼ばれているそうですよ」

「幸運? 面白い名前ですね」


 ペトロが笑う。

 ノエルも少し笑ってから話を続けた。


「毎朝食べている人もいるようで、そういった人たちの中から、以前より身体の調子がいいとか、疲れにくくなったとか、そういう話が出始めたみたいなんです」

「何人もですか?」

「はい。同じようなことを話す人が何人かいたので、アルミヤの教会でも気になったそうです」


 ペトロは少し考え込む。


「ですが、それほど強い効能があるのなら、とっくに知られていてもおかしくありません」

「教会でもそれが気になったみたいです。今までもスープに使われることはあったのに、こんな話が出たことはなかったと」

「なるほど……」


 ペトロは顎に手を当てた。


「分かりました。過去の記録も含めて、一度調べてみましょう。伝えておきます」

「お願いします」


 二人の話を聞きながら、リアはもう一度その地名を思い浮かべた。

 アルミヤ。

 姉を捜しに向かったアルドたちが訪れた町だ。


(お姉様……)


 ほんの一瞬、ルナの顔が浮かぶ。


「リア様?」


 ノエルに呼ばれ、リアは我に返った。


「どうかしましたか?」

「……いいえ。何でもありません」


 リアは小さく首を振った。


「それより、休憩するんですよね?」

「はい。今度こそちゃんと休んでください」

「分かってます」


 ノエルと話しながら、リアは治療室をあとにする。


◇◇◇


 その日の夕方。

 神殿での予定を終えたリアは、フィールズ家の屋敷に戻っていた。

 夕食を終え、自室に戻ろうとしたところで父に呼び止められる。


「リア。少しいいか」

「はい、お父様」


 連れて行かれたのは父の執務室だった。

 リアが中に入ると、父は机の上に置かれた書類に目を落としていた。


「そこに座りなさい」

「はい」


 言われた通り、リアはソファに腰を下ろす。

 父も向かいに座った。

 何の話だろう。

 そう考えていると、父は少しの間を置いて口を開いた。


「ルナがいなくなってから、二週間が経った」

「……はい」


 リアの表情が曇る。


 アルドたちが捜しに行ったものの、ルナは見つからなかった。その後も各地から届く情報を確認していたが、それらしい知らせはない。

 そして父が一週間前に言った言葉を、リアは覚えていた。


「身元の分からない遺体や、行方不明者についても調べさせた。今のところ、ルナと思われる者はいない」

「それなら、お姉様は——」

「リア」


 静かな声に遮られ、リアは口を閉じた。


「予定通り、ルナをフィールズ家の籍から外す手続きを始める」

「……っ」


 分かっていた。

 一週間何も分からなければ、そうすると父は言っていた。

 それでも、本当にその日が来ると胸が苦しくなる。


「お父様。もう少しだけ待つことはできませんか?」

「待って何が変わる」

「それは……」

「ルナは自分の意思で屋敷を出た。捜すために人も出した。それでも見つからなかったのだ」

「でも、お姉様は生きています」


 リアは父を真っ直ぐ見た。


「私はそう思います」

「前にも聞いた」


 父の表情は変わらない。


「だが、どこにいるのかも分からないのだろう?」

「……はい」

「ならば、これ以上待つ理由にはならない」


 言い返したかった。

 もっと待ってほしいと。

 けれど、父の顔を見ているうちに、リアは何を言っても考えは変わらないのだと分かった。

 前にも同じように訴えた。

 それでも父は、一週間と期限を決めた。

 その期限が来ただけなのだ。


「……分かりました」


 リアは俯き、小さく答えた。


「手続きには少し時間がかかる。お前が何かする必要はない」

「はい」

「話はそれだけだ」


 リアは立ち上がった。


「失礼いたします」


 最後まで父を見ることなく、執務室をあとにした。


 自室に戻ると、リアは扉を閉め、そのまましばらく立ち尽くしていた。


「……お姉様」


 小さく名前を呼ぶ。

 返事はない。

 当たり前だった。

 リアはゆっくりと机に向かうと、引き出しを開けた。

 その奥から、小さな髪飾りを取り出すと、そっと両手で包み込んだ。

 目を閉じて、ルナのことを思う。


「……今、どこにいるの?」


 髪飾りを握りしめる。

 思い浮かぶのは、王宮に向かう前に見た姉の姿だった。

 もっと話せばよかった。

 考えれば考えるほど、後悔ばかりが浮かんでくる。


「……ルナ」


 髪飾りを胸元に引き寄せる。


「会いたいよ……」


 静かな部屋に、リアの声だけが小さく響いた。


◇◇◇


 翌朝。

 いつもの時間に大神殿を訪れたリアは、中に入ってすぐに足を止めた。


「……何かあったのでしょうか」


 普段よりも明らかに慌ただしい。

 神官たちが足早に廊下を行き来し、何人かは書類を手に話し込んでいる。いつもなら静かな大神殿に、どこか落ち着かない空気が漂っていた。


「リア様」


 声をかけられて振り返ると、ノエルがこちらに歩いてくる。


「ノエル、おはよう」

「おはようございます」


 ノエルもどこか忙しそうだった。


「今日はずいぶん慌ただしいですね。何かあったのですか?」

「私も詳しくは聞いていないのですが、今朝早くにタリオンから知らせが届いたそうです」

「タリオン?」

「西の港町です」


 その名前を聞いた瞬間、リアの胸が小さく跳ねた。


 海を越えて隣国に向かう船が出る、大きな港町。

 ルナが護衛を頼んだ先も、確かタリオンだった。


(お姉様……)


 もしかしたら。

 そんな考えが一瞬浮かぶ。

 けれど、ルナが本当にタリオンに向かったのかは分からない。

 すでに別の町に行っているかもしれないし、そもそも途中で行き先を変えた可能性だってある。

 リアは胸に浮かんだ期待を押し込めるように、小さく息を吐いた。


「何か問題でも?」

「体調を崩す人が増えているらしくて……。現地の神官だけでは対応が難しくなっているそうです」

「そんなに……」


 その話を聞いた瞬間、リアの意識はタリオンにいるかもしれない姉から、そこで苦しんでいる人々へと移った。


 その時、廊下の向こうからペトロがやってきた。


「リア様。ちょうどよかった」

「ペトロ様」

「少しお話ししてもよろしいですか?」

「はい」


 三人は邪魔にならない場所に移動した。


「ノエルから少し聞きました。タリオンで体調を崩している方が増えていると」

「ええ。その件です」


 ペトロの表情はいつもより真剣だった。


「タリオンの教会から、治療を行える神官を派遣してほしいと要請がありました」

「やはり、現地だけでは足りないのですか?」

「そのようです」


 ペトロが頷く。


「ただ、今のところ王都に届いている情報は多くありません」

「原因は分かっていないのですか?」

「ええ。詳しいことは現地で確認する必要があります」


 病人がどれほどいるのか。

 同じ病なのか、それとも別々の原因なのか。

 まだ分からないことが多いらしい。


「そのため、大神殿から何人か神官を派遣することになりました」

「ペトロ様も行かれるのですか?」

「はい」


 リアは目を見開いた。


「治癒スキルを持つ者を何人か派遣することになり、私もその一人に選ばれました」

「いつ出発されるのですか?」

「準備が整い次第です。早ければ明後日にも出ることになるでしょう」

「そうですか……」


 タリオン。

 もう一度、その町の名が胸に引っかかった。

 もしルナが本当にそこに向かっているのなら、会える可能性がまったくないわけではない。

 けれど、それだけを理由に行きたいとは思わなかった。


 昨日も、自分はここで病に苦しむ人の治療をした。

 まだペトロのように上手く力を扱うことはできない。

 それでも、自分の光属性で楽になったと笑ってくれた人がいた。

 タリオンには今、それを必要としている人が大勢いる。


「あの、ペトロ様」

「はい?」

「私も一緒に行くことはできませんか?」

「リア様が?」


 ペトロだけでなく、ノエルも驚いた顔をする。


「はい」


 リアは真っ直ぐペトロを見る。


「まだ勉強を始めたばかりですし、私ではお役に立てないことも多いと思います。でも……」


 一度言葉を切る。


「私の力で少しでも助けられる方がいるのなら、私もタリオンに行きたいです」

「リア様……」

「それに、これから聖女候補として人を助けていくのなら、神殿の中で教えていただくだけではなく、実際に何が起きているのかも知る必要があると思うんです」


 ペトロはすぐには答えなかった。

 しばらくリアを見つめてから、静かに口を開く。


「お気持ちは分かりました」

「では——」

「ですが、私の一存では決められません」

「あ……」


 リアは少し肩を落とす。

 考えてみれば当然だった。


「そうですよね……」

「ですが」


 ペトロが穏やかに続ける。


「リア様が同行を希望されていることは、私から大神官様にお伝えしておきましょう」


 リアが顔を上げる。


「本当ですか?」

「ええ。最終的にどう判断されるかは分かりませんが」

「ありがとうございます!」


 リアは嬉しそうに頭を下げた。


「まだ行けると決まったわけではありませんよ」

「はい。それでも、お願いします」

「分かりました」


 ペトロは小さく頷いた。

 隣で話を聞いていたノエルは、少し心配そうにリアを見る。


「タリオンまでは遠いですよ」

「分かっています」

「王都とは全然違うでしょうし、今回は治療のために行くんですよ?」

「それも分かっています」

「……本当に行きたいんですね」

「はい」


 迷いなく答えたリアに、ノエルはそれ以上何も言わなかった。ただ、少し困ったように笑う。


「それなら、大神官様が許可してくださるといいですね」

「ありがとう」


 ◇◇◇


 翌日。

 神殿を訪れたリアは、いつもの治療室ではなく、大神官の部屋へと案内されていた。

 中に入ると、大神官とエリシアが待っている。


「お呼びでしょうか」

「ええ。どうぞ、こちらへ」


 大神官に勧められ、リアは二人の向かいに腰を下ろした。

 エリシアは穏やかな笑みを浮かべている。

 けれど、いつもより少しだけ真剣な雰囲気だった。


「ペトロから聞きました。タリオンへの同行を希望しているそうですね」

「はい」


 リアはまっすぐ大神官を見る。


「私も行かせていただきたいです」

「理由を聞いても?」

「はい」


 リアは少し緊張しながらも、自分の考えを言葉にする。


「タリオンでは、たくさんの方が体調を崩していると聞きました。私の力で少しでも助けられる方がいるのなら、治療をお手伝いしたいです」


 大神官は何も言わず、リアの話を聞いている。


「それに……私はまだ、聖女候補として知らないことがたくさんあります」


 神殿に通うようになってから、治療だけではなく、光属性の扱い方や聖女の役目についても学んできた。

 それでも、まだ神殿の中で教えられていることばかりだ。


「実際に困っている方がいる場所に行って、自分に何ができるのか知りたいんです」

「なるほど」


 大神官は静かに頷いた。

 すると、それまで黙って聞いていたエリシアが口を開く。


「タリオンに行けば、王都の神殿とは違うことも多いでしょう」

「はい」

「今回は視察でも旅行でもありません。どれほどの患者がいるのか、何が起きているのかも、まだ詳しく分かっていません」

「分かっています」

「治療が続けば、今まで以上に疲れることもあるでしょう。それでも行きたいですか?」


 リアは迷わなかった。


「はい。行きたいです」


 エリシアはしばらくリアを見つめたあと、ふっと表情を和らげた。


「分かりました」

「え?」


 リアが目を瞬く。

 大神官も小さく笑った。


「私たちも、リア様には一度、王都の外で行われている治療を見ていただくのもよいのではないかと話していたところです」

「では……」

「ええ。タリオンへの同行を認めます」


 リアの表情が明るくなる。


「ありがとうございます!」

「ただし、いくつか条件があります」


 喜んだのも束の間、大神官に言われ、リアは姿勢を正した。


「はい」

「現地では必ずペトロたち神官の指示に従うこと。決して一人で行動しないこと。そして、無理に力を使い続けないことです」

「分かりました」

「特に最後は大切ですよ」


 エリシアが念を押す。


「光属性の力が強いからといって、限りなく使えるわけではありません。目の前に苦しんでいる方がいれば、あなたは無理をしてしまうかもしれませんが」

「……気をつけます」


 昨日もペトロから力の配分について注意されたばかりだ。

 リアは少し恥ずかしくなりながら頷いた。


「あなた一人ですべての方を助けようとする必要はありません」

「はい」

「周りを頼ることも覚えてくださいね」

「分かりました」


 エリシアは満足そうに微笑んだ。


「出発は明日の早朝です。急な話になりますが、タリオンの状況を考えると、あまり時間をかけるわけにはいきません」


 大神官が続ける。


「ペトロをはじめ、治癒を担当する神官たちと一緒に向かっていただきます。各地の教会で馬を替え、通常より長く移動できる体制を整えているため、七日ほどの道のりを四日ほどで進む予定です。ですから今夜はよく休んでおいてください」

「はい」

「それから、ノエルも同行させる予定です」

「ノエルも?」


 思わず声が弾む。


「ええ。現地でもリア様の身の回りのお世話をしてもらいます。本人も同行を希望していますよ」

「そうだったんですね」


 知らされていなかったリアは嬉しそうに笑った。

 知らない町に向かうことへの不安がないわけではない。

 それでも、ペトロだけでなくノエルも一緒だと分かり、少し安心した。


「出発まであまり時間がありません。ご家族への連絡や準備も必要でしょう」

「はい。今日帰ったら、お父様とお母様にもお話しします」

「では、詳しい予定はペトロから聞いてください」

「分かりました」


 リアは立ち上がると、二人に深く頭を下げた。


「ありがとうございます。精一杯頑張ります」

「ええ。ただし、頑張りすぎないように」


 エリシアの言葉に、リアは笑顔で頷いた。

 部屋を出たリアは、長い廊下を歩きながら小さく息を吐いた。

 本当にタリオンに行くことになった。

 王都を離れるのは不安だった。

 聖女候補として、自分がどこまで役に立てるのかも分からない。

 それでも、行ってみたいと思った。

 神殿で治療を始めてから、自分の力で誰かが元気になることが嬉しかった。

 光属性と知ったあの日は、何が起きているのかもよく分からなかった。

 周囲に喜ばれ、言われるまま王城に行き、神殿に通い始めた。

 けれど今は違う。

 タリオンへ行きたいと言ったのは、自分だった。


(私にできること、ちゃんと見つけたい)


 リアはそう思いながら歩いていく。

 その足取りは、少しだけ軽くなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。