第12話:【六畳一間の旋律(メロディ)】
登録者数も増え、配信機材も整った。けれど、何かが足りない 。 カバー曲の配信を終えた深夜、陽葵は防音材(という名の中古毛布)に囲まれた室内で、湊と凛に切り出した。
「ねえ二人とも。私、自分たちの歌が歌いたい。……私たちの、オリジナル曲!」
「……オリジナル曲? 貴方、正気なの? 楽曲制作にどれだけのコストと時間がかかると思っているのよ」
湊は呆れたように息を吐くが、陽葵の瞳は本気だった。
「カバーも楽しいけど、誰かの言葉じゃなくて、私たちの言葉で伝えたいんです。ドームに行きたいって、この場所から叫びたいんです!」
その熱量に、ノートPCを叩いていた凛の手が止まった。
「……。既存の楽曲を歌うのは、他人の書いたコードをなぞるのと同じ。非効率ではないけれど、独自性には欠ける。……いいわ。私が土台を作る。湊は、自分のプライドに見合うステージ構成を考えなさい。陽葵は――」
凛は陽葵の胸元を指差した。
「……心臓が千切れるくらいの、一番泥臭い言葉を書いて。それが、私たちのプロトコルになる」
そこから、ボロアパートでの「自給自足」の楽曲制作が始まった 。 陽葵は学校のノートを真っ黒に染め、湊は狭い室内で完璧なステップを刻み、凛は自作スパコンをフル稼働させて音の粒子を組み立てていく 。




