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第954話 破壊神の力と伝説に仕立て上げた冒険者たち

 とうとうブリッツが、受体して破壊神となる。ダンジョンの底にいるが、転移で帰ろうと思っていた。だが、冒険者を送り届けなければならない為、一旦、席を外してもらって話をしているところだ。


 俺達がたどり着いた結論は、次世代の神が全員転生者だという事。それを受け、今後の事をふまえて、オージェがブリッツに聞いていた。


「どうするよ? ブリッツ。お前はこれから」


「そうですねえ。そもそも、神って何をするんでしょうねえ。オージェさん」


「俺も良く分からん」


 そもそも、俺達に使命のようなものはない。神々はただ役目を終えて、俺達に世代交代をしただけだ。特に何か言われたわけでも無いし、全員がただ自由な感じで託されている。


「僕も、なんとなくついて来てますしね。前世のつながりで」


 グレースの言う通りだった。俺とエミルは家族を殺された復讐だし、俺はまだ怒りが収まっておらず、絶対にアブドゥルを殺すまでは終われない。オージェとグレースは前世で仲間だったから一緒にいるし、アウロラに至っては、妹という切っても切れない関係性だ。だが、ブリッツは全く関係がない。


 そこで、俺がブリッツに言う。


「別に、付き合わなくてもいいとは思う。ただし、セレスティアル・アービトレーション(天界調停)と言われているやつに、全員がそろわないといけないらしい。俺達といけば、いつかはそれに遭遇するし、離れれば自分の力でそこに参加する事になる。だから、一緒に来るか来ないかはブリッツ次第だよ」


「まあ、僕の生まれた村が助けられたからね。その恩はあるよ」


「なるほど」


「それに……」


「なに?」


「多分。ラウル君について行った方が、安全だって思う」


「俺に?」


「君は、君が思うより恐ろしい力を持ってる。出来れば、敵に回したくはないかな」


「そっか」


「あと、オージェさん。こんな怪物相手にしたくないし」


「ごもっとも」


 ブリッツは、俺達について来るという意思を表した。その上で、エミルが言う。


「じゃあ、打算だろうがなんだろうが、現段階では味方だな。問題はこれからだ」


 俺も頷く。


「そうだなエミル。今はたまたま前の世界での知り合いが集まり、妹が神の一人だったという形だから、こうなっているけど、居なくなった豊穣神、雷神、死神はどうなるかって事だよね?」


「ああ。継子が、ブリッツのように冷静に判断する奴かどうか」


 そこで、グレースが言う。


「確かに……全員が、前世からの転生者だとしたら、どんな人が受体先になるかで決まって来ますよね。ろくでもない奴だったら、どうしようかって感じですね?」


「人間を、アーティファクトに変える技術なんだけどさ。出来上がったアーティファクトを見ていると、前世にあったものっぽくないか?」


「「「「「ぽい」」」」」


オージェ、エミル、グレース、アウロラ、ブリッツの声が重なった。


「フェアラートに入れ知恵した奴。火神だと思うんだけど、前世からの転生者という線が濃厚だと思う。フェアラートの師匠だった、モーリス先生の前で言うのもなんですけど」


「ふむ。そうじゃろう。神々が、場一致でそう思うのであれば、それは間違いのない事じゃろ。そして、消えた三人の神も、どんな人間が受体するかで、これからの世界が変わっていくじゃろう。間違いなく、全員が転生者じゃと思うしのう」


「はい……」


「先に継子達に接触したいところじゃったが、今ではそれも敵わん。こちらに残った六人がどうするか、良ーく話し合った方がええじゃろう」


 それを聞いて、俺が先に口を開く。


「俺は、アブドゥルを倒しますよ。それの糸を裏で引いている奴も。こいつをぶっ倒すまでやめません」


 エミルも頷いた。


「同意です。里の皆を殺した報いは受けさせねば」


 オージェが言う。


「俺は今更だ。俺は、前世からずっとラウルに惚れこんでついて来た。それは変わらん」


「オージェ……」


「僕もですね。とにかく、ラウルさんの側は面白い」


 それを聞いて、アウロラも言う。


「私は、お兄ちゃんについてくわ。私がいないと、暴走しそうだし」


「アウロラ……、お兄ちゃんは、まあまあ頭使う人だぞ」


「分かってるけど、キレると暴走するじゃない」


 オージェが笑う。


「だな。特に仲間をやられるとキレるよな」


「そうだっけ?」


「そうだ」


 それを聞いて、ブリッツが俺に聞いて来る。


「って事はだ。敵に回ってラウル君の仲間を傷つけたら、あの兵器が僕に向かって来るって事だよね?」


 それには、オージェが頷く。


「ああ、ついでに俺も」


「フフフ……、選択肢があるようで、一択じゃないですかそれ」


「いや、自由だがな」


「まあ、とにかく、僕は皆といたいかな」


「んじゃ、決まりで」


 持つべきものは、龍神のおともだちだな。そこでモーリス先生が、周りを見て言う。


「この、アイアンゴーレムたちも、連れて行くのじゃろうな」


「出来ればそうしたいですね」


 そこで、グレースが言う。


「では、保管庫に入れますか?」


「お願いできる?」


「いいですよ」


 そしてグレースが、ロボ系のゴーレムに触れる。


「あれ?」


「どうした?」


「入らない……」


「え?」


 なんと、ブリッツのゴーレムは、虹蛇の保管庫に入らないらしい。


「なんででしょう?」


 何度試しても、なんともならないらしい。それを見ていて、モーリス先生が言う。


「ふむ。恐らくは先代の、関係性があるのじゃろう。まあ……出来栄えと管理の観点から言うとじゃな……繊細な破壊神と、おおざっぱな虹蛇と言った構図が見えて来るのじゃ」


「「「あー」」」


 俺とエミルとオージェの声が重なる。思いっきり、心当たりがあるからだ。


「な、なんです?」


「いやあ。グレース、先代を恨むしかない」


「そんなあ、ラウルさん……」


「いや、はじめて砂漠の地下神殿で会った時から、もうテキトーの権化だったぞ」


「そうなんだ……」


「それに対し、あの猫ちゃん……破壊神は、キチキチっとしてた。ちゃんとゴーレムも使い分けてたし、ゴーレム自体が几帳面だし」


 俺は思った事をそのまま言った。グレースの土人形は、グレースが必死にコマンドを入れこまないと、まともに動く事がない。それに対し、ブリッツのアイアンゴーレムは、まるで人間のような働きをする。


「まあ……そうですね」


 そこでまた、モーリス先生が言う。


「推測なのじゃが、もしかすると虹蛇は破壊神のゴーレムが羨ましくて、作り出したんじゃなかろうか? だが、そこまでいかなかったとみえる。それに、龍神のところに置いてあったり、管理が適当じゃった。自分の思い入れがあれば、もう少し丁寧に扱うもんじゃ」


「確かにそうですね……」


「そう考えるとじゃな。上位のものは、下位には扱えん可能性があるのじゃ」


「いやあ……モーリス先生。言われて、嫌なんですけど、めちゃくちゃ腑に落ちました」


「うむ」


 そこで俺が、ブリッツに言う。


「いや、保管がダメなら、転移で運び出して見よう」


「出来るかな?」


「やってみる。一緒に来てくれ」


「分かった」


「ゴーレム集めて」


「ああ」


 俺とカオスの周りに、ブリッツがアイアンゴーレムを集める。


「同じ様に、運べないかもしれんけど」


「ひとまず、やってみてくれるかい?」


「カオス。転移だ」


 すると次の瞬間、俺とブリッツとカオスが、最前線基地に居た。


「うわーーーー。無理なんだけど!」


「こまったな」


「普通に、移動させるしかないね」


「しかたないか」


「カオス。戻れ」


 ブン!と元に戻ると、皆が無理だったことを理解した


「これ、このまま連れてくしかない。置いて行って、冒険者に討伐なんかされたら大変だし」


「連れて帰るしかないのう」


 俺達は、そのアイアンゴーレムたちを連れて、隣で待っている冒険者と、俺の配下たちの元に行く。


「これ、このまま連れてくしかないっぽい。じゃあ、ダンジョンを出るよ」


「「「「は!」」」」


 そして冒険者も、少し青い顔で言う。


「わかりました! は、早く帰りましょう!」


 あの巨大岩のエレベーターのところに行くと、ブリッツが言う。


「これも、上に行ったら解体してもっていくよ」


「これもなんだ」


「どうやらそうらしい」


 俺達はその岩に乗って、一気に上昇を始めた。奈落から最初に巨人に会った橋のところまで来たので、岩から岸壁に飛び移ると、ブリッツが巨大岩に手を振れた。岩が崩れ落ち、その中心からまた出てきた。


 芯人間が。


「うそ。中身は全部おんなじ?」


「らしいね……」


 真っ白い棒人間に触れると、周りの岩をまとわりつけて人型のゴーレムになる


「なるほどね。グレースのゴーレムとは根本が違うんだ」


「確かに」


 俺達は橋を越え、最初の入り口に行く。すると、魔獣達が早速沸いていて、通路に待ちかまえていた。すると、ブリッツが言う。


「あ、ラウル君。試してみていいだろうか」


「なにを?」


「ゴーレムの戦闘力」


「あ、どうぞ」


 二メートルくらいある甲虫魔獣の群れに、アイアンゴーレムが飛びかかって行った。殴りかかったり、キックで攻撃をし始めると、なんと甲虫の甲殻が割れ始める。


「おお! 強い! 繊細な動きだし、敵の攻撃をかわしてる!」


 俺の言葉に、オージェが頷いた。


「本当だ。ただのデクとは違う」


「オージェさん……僕のゴーレムを木偶人形だなんて言わないでくださいよ」


「だって、見ろよ。月とスッポンだぞ」


「……確かに」


 破壊神の作り出したゴーレムは、まるで洗練された騎士の動きのようだった。甲虫を屠り去っていき、あっという間に制圧する。


「これが……ブリッツの力ってわけか」


「どうやら、そうらしいですね」


 俺は、連れてきた冒険者達に尋ねる。


「ねえ。これ、ラスボスだったとしたら。普通の冒険者、瞬殺じゃない?」


 冒険者達は、ただカクカクと頭を上下に振る。それだけ、鮮やかで背筋が凍るような戦闘力だった。


 うん……それにこいつら……対物ライフルとかじゃないと、倒せないぞ。それに、あの芯をやらないと、たぶんすぐに直せる。敵にしたら、厄介かもしれん……。


「じゃあ、行きましょうか」


「ああ。ブリッツ。後は、俺の仲間に任せろ」


「ですね。オージェさんがいるし」


 すると、オージェがトントンとジャンプしながら言う。


「よっしゃ、久々に実戦で体動かすかな」


 それからは、オージェ一人で全部の魔獣を討伐した。二階層に登ると、冒険者にも会うようになるが、俺達、異様な集団に皆引きつった顔で見送っている。


 入り口に行くと、ギルド員が慌てて走って来る。


「な、なんだこりゃ。こんな人数じゃなかっただろ? こんな、鎧の大人数……ゴーレム?」


「あ。いや、鎧を着た人間です。もともと、ここにいた人らですよ」


「そうだっけ? こんな人数入ってたのか?」


 俺は、冒険者に目配せをしながら言う。


「あの、ちなみに、最下層までいって戻って来れたのは、彼らのおかげだから」


「なんと! ならば、ランクの見直しが必要になるな」


 俺がニッコリと冒険者に笑いかけると、凍り付いたような表情で固まった。口止めしてある代わりに、ギルドでの待遇を良くするという約束なのだが、彼らは納得していないらしい。


 ダンジョンを出て、森に出たところで俺が冒険者達に言う。


「いやー本当にありがとう。おかげで助かったよ! じゃあ、グレース! 今までの魔獣狩りでとった、とびっきりのヤツ出してやって」


「わかりました」


 ズーン! と目の前に、バカデカい大蛇の魔獣の死骸を出す。


「「「「うわあああ」」」」


「これ、ラスボスだったって事にして、ギルドに持ってくといいよ。きっと金にもなるし」


「えっ?」


 そして俺が、大声で冒険者の駐屯地に向かって言う。


「おーい! 彼らが、ダンジョン主を狩ってきたぞぉ!」


「なんだって!」

「うそだろ!」

「まじか!」


 冒険者達が、大量にこちらに向かって来て、大蛇を囲んで口々に言う。


「こ、こいつは……すげえ」

「よく、生き残ったな……」


 俺が、その冒険者達に言った。


「彼らが、この主を狩ったんだ! 皆で手分けしてギルドに運んでくれれば、小遣いをもらえるぞ!」


「よっしゃ! 手伝ってやる」

「みんなを呼んで来る!」


 そう言って、冒険者達が仲間を呼びに行った。


「じゃ、そう言う事だから。俺達は、ギルドには戻らない。ちょっと行くところがあるからね。じゃあ、よろしくね。ありがとね!」


「「「「は、はい……」」」」


「くれぐれも中で起きた事は、誰にも話しちゃダメだよ。っていうか、嘘ついてると思われるだろうし」


「もちろんです。言っても誰も信じません」


「まあ、話したところでだろうからね。じゃ、さよならだ」


 そう言って俺が手を差し出す。リーダーが俺の手を握り、俺達は森の中に進んでいった。草原に出て、誰も見ていないところでチヌークヘリを召喚する。


「乗るかな……アイアンゴーレム」


「さて」


 だが、ヘリには普通に乗る事が出来た。


 俺は外で待機していた、ティラ、マリア、ルフラに念話を送る。


《ティラ。ルフラ。聞こえるかい?》


《はい。マリアも聞こえてます》


《収穫があった。俺達がヘリを飛ばすから、合流してくれ》


《わかりました》


 チヌークが空に飛びだして、ティラたちのヘリが合流して来た。俺達は、破壊神になったブリッツと、アイアンゴーレムを連れて最前線基地へと飛ぶのだった。

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