03
アル 「まあ、弱点というか…」
アルは振り返って僕らを見た。
ロル 「な、何?」
アル 「…二人かな。僕の弱点。」
メル 「私たち?」
アル 「二人が居なかったら僕も居ないからね。」
ロル 「ふふ、何だよ、それ。」
やっぱりアルに弱点なんかないか…
次の日の早朝。
僕が目を覚ますと隣ではメルが寝ていてアルは居なかった。
ロル 「図書室かな…」
僕は、メルに布団を掛けて部屋を出た。
新入生 「あっ、出来損ないだ。」
新入生 「本当だ。」
ロル 「…退いて。アルを探しているんだ。」
新入生 「見捨てられたんじゃないの?出来損ないなんか僕の弟に要らないって。」
ロル 「…いいから、退いて。」
僕は、図書室へ走った。
アルが部屋を抜け出すときはいつも手紙が置いてある。
それがないということは…
ロル 「図書室にもいない…」
僕は部屋に戻り、メルを起こして事情を説明した。
メル 「置き手紙もないなんて…あっ、ちょっと待って。」
メルは、ベッドのアルがいつも眠っている位置に向かって杖を振った。
メル 「…アル、昨日私たちが眠ってから布団を抜け出して部屋を出て行ったきり戻ってないって…」
ロル 「昨日習った魔法?」
メル 「うん。布団に聞いた。」
ロル 「物体会話術、もう使えるんだ…」
メル 「使えて良かったよ。アルは、昨日の夜から部屋に戻ってない。昨日の夜、どこかに行ったまま…」
ロル 「図書室にもいなかったよ。」
メル 「昨夜は雨だったから夜間飛行もしないだろうし…」
すると朝食の時間を知らせるベルが鳴った。
メル 「急がないと。ほかに、心当たりは…」
ロル 「アルが行きそうなところ…」
メル 「…とにかく、学校中を探そう。」
ロル 「うん。」
僕らは部屋を出て、教室や大講堂、中庭など学校中を探し回った。
メル 「はぁ、はぁ…居ない…」
ロル 「…」
メル 「えっと、後探してないのは…」
校長 「ロル。メル。」
そちらを見ると校長先生が居た。
ロル 「あっ!校長先生!」
校長 「こんなところで何をしているんですか?朝食が始まっていますよ。」
メル 「アルが昨夜から部屋に戻ってないんです。心当たりを探し回っているのですが見つからなくて…」
校長 「アルが…では、皆に聞いてみましょう。大講堂に行きますよ。」
校長先生はそう言いながら鏡を出した。
メル 「アル…」
ロル 「…」
大講堂に着き、校長先生が現れた途端、全体が静かになった。
校長 「昨夜から、二年生のアルの姿が見えないそうです。誰か、アルの居場所を知っている人はいませんか?」
誰も何も言わず、アルが居なくなったことに対するどよめきだけが響いた。
すると、メルは僕の裾を引っ張った。
メル 「どうしよう…アルが見つからなかったら…」
ロル 「…大丈夫。きっと見つかるよ。」
僕がメルの頭を撫でると、メルは泣きそうになりながら震えていた。
ロル 「…校長先生。僕ら、外を探してみます。雨が止んで夜間飛行に出掛けたのかもしれないし。」
校長 「分かりました。では、ロル。この箒を貸しましょう。」
校長先生は、そう言って、鏡から箒を出した。
ロル 「この箒は?」
校長 「代々、使われてきた箒です。ロルの箒は家に置いてきたのですよね?」
ロル 「でも、僕…」
校長 「箒は、乗ろうとする人の気持ちを分かってくれます。優しく扱えばその気持ちに応えてくれますよ。だから、使い込まれた箒が良いと言われているんです。」
ロル 「…分かりました。」
僕は、箒を受け取り、メルの手を握って大講堂を駆け抜けた。
そして箒の立て掛けてある部屋に行き、メルの箒をメルに渡した。
メル 「アルの箒はここにあるんだよ?アルは夜間飛行してないよ。」
ロル 「これだけ探しても見つからないんだ。少しでも広範囲で探さなきゃ。」
メル 「…そうだね。分かった。」
僕らは、外に出て箒で飛び立った。
ロル 「…と、飛べた。」
メル 「ロル。あれ見て。」
メルが指差した方向を見ると古びた倉庫のような建物があった。
ロル 「何だろう。学校マップにも載ってない場所だ。」
メル 「あの場所だけは探してない。でも、あんなところにアルが居るはずないよね。気味が悪いし…」
ロル 「…確かに不気味だね。あっ、ちょ、ちょっと…」
僕の乗っていた箒は急にその建物の場所に降り立ってしまった。
メル 「ロル?そこに入るの?怖いよ…」
メルは箒で飛行したまま僕に聞いた。
ロル 「うーん、箒が飛んでくれなくて…」
メル 「…」
メルは何も言わずに僕の側に箒を下降させ、箒から降りた。
ロル 「…探してみようか。あの場所。」
メル 「…う、うん。」
メルは、怖くて震えながら、僕の腕にしがみついた。
僕らは例の建物に近づき、僕はドアに手を掛けた。
ロル 「…開けるよ。」
僕が意を決してドアを開けると部屋の中にはたくさんの薬品が置いてあった。
メル 「…何だか気持ち悪い…」
ロル 「…見て。奥にまだ扉がある。」
メル 「…もう帰ろうよ。こんなところにアルが居るはずない…」
ロル 「メル。鍵を開けるのを手伝って。」
メル 「...い、良いけど…」
開けようとした扉には、いくつもの鍵が掛けてあった。
二人で呪文を唱えて鍵を徐々に開けていった。
メル 「…これが最後。」
鍵を全て開けると急に扉が開いて、僕はメルを自分の方に抱き寄せて、扉を避けた。
ロル 「っ、アル!」
アルは、扉に寄り掛かるように座っていて、扉が開いた瞬間にこちらに倒れてきた。




