第4話:黒い公爵の奇妙な興味
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シリウス様の、新しい玩具を見つけたかのような冷徹な好奇心をひしひしと感じ、私は身を震わせながら、冷や汗を流していた。
シリウス様は私の怯えきった姿を見て、まるで極上の喜劇でも観ているかのように、嗜虐的に目を細めて愉しんでいる。
「震えているね。昼間はあんなに嬉しそうに僕の手を握っておいて、随分な態度じゃないか」
シリウス様は意地悪く、けれど冷たい声で言い放つ。
「……そ、それは……っ」
私は必死に弁明しようとするが、恐怖で声が震えて上手く言葉にならない。
シリウス様はフッと冷たい鼻笑いを漏らすと、手袋の上の幼虫へと視線をずらした。
その瞬間、先ほどまでの嗜虐的な愉悦がスッと消え去り、冷酷な研究者のような、底知れない冷徹な雰囲気へと切り替わる。
「……やはり、ただの虫じゃないな」
シリウス様はそう呟き、細い指先を幼虫の頭へ近づけた。
――バチバチッ!
彼の指先から、教室の夕闇を裂くように、暗紫色の電火(冥雷の魔力)が小さく爆ぜる。
普通のアニマなら、触れただけで消滅しかねないほど濃厚な高密度の魔力。その禍々しさに、私は背筋が凍った。
しかし、幼虫は怖がるどころか、嬉しそうに小さな身体を伸ばし、その暗紫色の光をじわじわと体内に吸い込み始めたのだ。
吸い込まれた魔力が幼虫の半透明な皮膚の奥を巡り、内側から怪しく妖艶な紫色の輝きを放っている。
(……え? 魔力を、食べてるの……!?)
私が驚きで呆然としている傍らで、その様子をじっと見つめていたシリウス様の瞳の奥に、狂気的な好奇心が宿っていく。
「……なるほどね。学園の無能どもは『属性不明のゴミ』と笑っていたが、属性がないんじゃない。周囲の魔力を完全に無属性化して『捕食』しているらしい」
「今まで僕の膨大な魔力を直接受けて、破裂もせずに自分の糧にするアニマなど存在しないし、歴史上でもそんな記録が記されている文献はないだろうね」
(……今まで周りにいた奴らは、俺の領域にすら届かず、予測可能でつまらなかった。だが、この平民が出した虫だけは、俺の常識が通じない、か)
「……良いね。最高に不気味で、そそる玩具だ」
シリウス様は唇の端を釣り上げながら、酷薄に笑った。
シリウス様は幼虫を、壊れ物を扱うようにつまみながら、じわじわと私の方に向かって歩み寄ってくる。
そして、逃げ場をなくした私の至近距離まで、その息を呑むほど綺麗な顔を近づけてきた。
夕闇が室内に滑り込むなか、シリウス様の低く艶を帯びた声が、しんと静まり返った教室に響く。
「面白い。この虫、僕が個人的に調べてあげるよ。……もちろん、その主である君もセットでね?」
私はその言葉を聞いた瞬間、これから始まるはずだった、平穏な学園生活の終わりを静かに悟ったのだった。
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