第3話:放課後、仮面は剥がされる
できれば毎日投稿したいと思っていますが、日数があくこともあると思います!
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「……失礼します」
私はドアの隙間から、かすかに夕陽の光が差し込む薄暗い教室の扉を、ゆっくりと開けた。
(……おかしいな。ブレスレット、どこにあるんだろう?)
私はブレスレットを探して辺りを見回すが、どこにも見当たらない。
そこでふと、窓際に佇んで外を見つめているシリウス様に気づいた。
(……シリウス様? こんなところで何をしてるんだろう?)
式典での完璧なプリンスが、一人きりの空間で醸し出す静謐でどこか近寄りがたい雰囲気。私はどことなく緊張感を覚え、思わず息を呑んだ。
「……あの、シリウス様? こんなところでどうしたんですか?」
私は意を決して、おずおずと声をかけた。
すると、シリウス様がゆっくりとこちらを振り向き、――冷酷に言い放った。
「……なんだ、平民。まだいたのか」
(……え?)
昼間のように温かな微笑みが返ってくるだろうと思っていた私は、シリウス様が発した第一声のあまりの冷たさと、声音の低さに、背筋が凍りついた。
シリウス様は唇の端を冷たく歪めると、窓際からゆっくりと私の方に向かって歩み寄ってくる。
「……あ、あの、今日助けていただいたお礼を、改めてお伝えしようかと思いまして……っ」
私はシリウス様から放たれる圧倒的な威圧感に、緊張と少しの恐怖を滲ませながら、震える声で必死に言葉を紡いだ。
すると、シリウス様はピタリと足を止め、冷たい声色を隠そうともせず、吐き捨てるように言った。
「……お礼? 何を勘違いしているのか知らないけれど、君を助けたつもりなんて毛頭ないよ。僕はただ、あのクラリッサとかいう女のうるさい金切り声を黙らせたかっただけだしね」
(……嘘。この人が本当に、あの式典で私を助けてくれた『学園の天使』なの……?)
私はあまりの変わりように、大混乱に陥っていた。
そんな私の戸惑いなど気にも留めず、シリウス様はさらに一歩距離を詰め、上から私を見下ろした。
夕闇の濃い影から覗く、怜悧で冷徹な青い瞳。その視線に、また背筋が凍る。
「……ふーん。虫出し平民、ね。近くで見ると、随分とマヌケ面だな」
シリウス様から滑らかに吐き出される、容赦のない嗜虐的な言葉。私は恐怖のあまり、全身を強強らせた。
そして、そんな私の胸元へ、シリウス様の手袋をはめた指先が躊躇なく伸びてくる。
彼はポケットの中にいた私の小さな幼虫を、つまみ上げるようにして強引に引きずり出した。
「……え、ちょっと! 返してください!」
私が幼虫を取り返そうと、慌てて手を伸ばした、その時。
「動くな」
低く、鋭い声が一喝した。
――ッ!?
私はその声に含まれる、圧倒的な公爵家の威厳と、彼自身の絶対的な魔力のプレッシャーによって、全身の自由を完全に奪われ、硬直した。
抵抗すら許されない、あまりにも圧倒的な実力差。肌が粟立つような本能的な恐怖が私を支配する。
そんな私の怯えきった姿を見て、シリウス様はフッと冷徹な笑みを浮かべた。
そして、手袋の上の幼虫を冷酷に観察しながら、昼間の天使の顔からは想像もつかない、昏い好奇心を滲ませた声音で呟いた。
「……やっぱりこの虫、ただの虫じゃないな。内包されている魔力量が、恐ろしいほど整っている。……面白い」
(……どうしよう。何か、とんでもない興味を持たれちゃったかも……!)
私は、この男の機嫌を損ねたら自分もこの虫もどうなるか分からないという極限の恐怖を抱きながら、ただ冷や汗を滲ませることしかできなかった。
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