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友達

 トウカが目覚め、学校の世界から抜け出せるところまできた。ようやく、ようやくシロコさんに会いに行ける。


「学校の世界から出る時もSAMEWATA必要なのか?」


 学校の世界というのは、帰る場所のない生徒たちのために用意されたものだと認識している。誰かの手によって造られたものではないため、世界の移動にSAMEWATAは必要ないと踏んでるのだけど。


「必要ないと思います。ほら、校門はすでに開いていますし」


 上り坂の先にある校門はすでに開いていた。

 さっきは近づいたら閉じ始めたし、まだ安心できる段階ではないと思う。俺たちがまとまって外に出てこそ学校の世界は、世界としての役目を果たすのだと思う。


「トウカ、歩けるか?」


 寝起きだからなのか、ボーッとしているトウカに手を差し伸べる。


「私は」


 それだけ言って、口を閉じてしまった。


「トウカ、行こう?」


 横からコトリが手を差し伸べる。


「……うん」


 俺の手ではなく、トウカはコトリの手を選んだ。

 コトリはトウカを連れ、少し前を歩き始める。

 なんか、複雑な気分だ。


「それで、何がどうなってこうなったのか聞いてもいいかい、クッションくん?」


 まだその呼び方続いてたんだ。


「今回に関して俺はクッションなんてやってませんよ。そうだな、あれはまさにレースカーという言葉が相応しいと思いますね」

「そういうことは聞いてないの。何があったのかだけを教えてちょうだい」


 いいじゃん、少しはクッションから離れてよ。俺は俺なんだぞ。クッションじゃないんだぞ。


「鮫田カンナについては俺もよく知りません。少しは見てたと思うんですけど、俺とコトリは背中合わせでそれぞれの相手と対峙していて、その途中でコトリは少し場所を変えていたんです。心配に思って様子を見に行こうとすると、ご覧の通り生徒たちが俺を追ってきたんです。校舎の角を曲がると、そこにはプカプカと浮かぶ鮫田カンナを見つめるコトリがいまして、それでコトリと合流して今って感じです」

「この生徒たちは何なの?」

「帰る場所のない生徒たちみたいです」


 ユキノさんは顔だけ振り返って生徒たちの様子を伺う。


「怖くない?」

「そうですか?」


 俺も振り返って生徒たちの顔を見る。


「……怖いですね」


 てんやわんやしていたからちゃんと見れてなかっただけで、よく見ると生気の感じない顔をしていて恐怖を抱かされる。


「大丈夫なの?」

「だ、大丈夫なんですかね?」

「どうしてそっちが訊いてくるのよ」


 だって、大丈夫かどうかわかんないんだもん。


「この子たちは大丈夫だよ」


 どこからともなく声が聞こえてくる。


「今、ユキノさんの声ですか?」

「いや?違うけど?」

「もうそのくだり飽きたからやめろ」


 視線を落とすと鮫田カンナがトボトボと歩いていた。


「全然気づきませんでした」

「うるさい」

「どうしてそんなにちっちゃいの?」

「もう一度死ぬか?死にたいか?」


 鮫田カンナは口先だけに怒りを込めている。本心からは怒っていないようだ。


「この子たちが大丈夫ってのは?」

「言葉通り。帰る場所が見つかるのなら、それを超える幸福はない。生徒たちにとってそこがゴールなの。だから、顔が怖いからと言って、邪魔をしてくることはない」

「帰る場所が見つかったら?」

「そこに向かう」

「向かったら?」

「……そんなのは知らない。各々好き勝手に動き始めるんじゃないか?」


 間があった。鮫田カンナが答えるのに何かを躊躇うように、不自然な間があった。

 生徒たちが帰る場所にたどり着いた時、何が起こるのかを鮫田カンナは知っている。その上で、あえて口にしないということは、つまりそういうことだろう。


「おま……さっき言っていたシロコの場所だけど合っているぞ。シロコはサンズリバーで幽閉されている」

「幽閉?」


 その言葉に疑問を抱いてすぐさま尋ねてしまった。


「本来なら僕がシロコを綿加シドウに渡さないといけない役目だったんだけど、事情があってできなくなった」

「だから、幽閉していると?」

「違うっ!僕はそんなことしない!たとえ綿加シドウの指示だとしても、僕は友達を縛ることなんてできないよ!」


 鮫田カンナは歯ぎしりが聞こえるほどに泣くのを堪えている。


「シロコを幽閉したのは、綿加シドウのクローンであるワタガシだ」

「クローンの名前ワタガシって言うんだ。案外かわいらしいのね」


 あの顔なのにネーミングセンスがそんなだと想像すると、脅威さが軽減されるな。


「タイムリミットが来たらシロコはソウルターミナルに飛ばされてしまう。そうなる前に解放しないといけないんだ」

「まぁ、任せてくださいよ。そのために俺たちが来たんですから」


 場所が確定したことだし、あとは向かうだけ。

 鮫田カンナは寝返りが起こったのかどうかわからないけど、シロコさんの味方ということで、少なくとも共闘関係にあるはずだ。

 向こうの情報を知ることができるし、ようやく前へ進むことができる。

 まずはシロコさんの解放。それから未来の世界へ行ってアリスとの再会。

 大丈夫、出目は小さくとも、駒は進んでいる。諦めなければ、逃げなければ、必ずゴールへ辿り着ける。

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