第17話 ナナコさんサイド / 白いキツネと黒いキツネ
【短編】で投稿した『ぼくは、幻聴に恋をした(改)』を【完結版】として連載投稿開始いたしました。完結しておりますので、最後まで楽しんでいただければ幸いです。
ちなみに、第1話は、【短編】と同一の内容になっております。前作を読んでいただいた方は、第2話からお読みいただいても大丈夫です。まだの方は、第1話からお読みいただけると、より楽しめると思います。
頬をつたうのは、降りしきる雨だけではない。
涙だ。
王都の外れ、ホーリーさんと出会ったあの峠にきていた。
黒きモノはここにいる。
なぜなら、私が眠っていた塚があるからだ。
今度こそ、公子をたすけなければ。
ホーリーさんは、この地が領主によっておさめられていた時代に、公子であった。
だが、そんなことは、どうでもいい。
こんどこそ、ホーリーさんを救わなければ。
ホーリーさんは、あさからぬ因縁の者たちから、たばかられた。
その結果、投獄されてしまった。
脱獄は、できたが、彼の汚名を返上し、こじれてしまったわたくしたちの関係を、出会った頃のように戻したい。
多くは、望まない。
わたくしのようなモノが、望んではならない。
「お前は、まだ甘言をいっているのか?白きモノよ」
見たこともない女がたっていた。
だが、空気でわかる。
女は、黒きモノだ。
「お前は、まだ誑かしてばかりいるのか?黒きモノよ。相変わらず、また誰ぞを操っているのか?」
「ああそうだ。人間は簡単だ。今は、お前の愛しい小僧のいたパーティーリーダーのダブロフを。『リンダ』というヒーラーに成りすましている。この人間が、また使える奴で、大臣の庶子だった。これを利用し、王家の側室の一人に成りすまし国王を取り込んだ!まったく、バカな存在だ、人間は。何度でも繰り返す。領主の時のように」
カッと熱くなった。
王都の外れのこの地は、雨あしがつよい。
その雨に打たれているのに、憎悪の感情が体を熱くする。
「人間は、私のおもちゃだ。悠久の時を生きる私を楽しませ、満たすだけの消耗品だ。お前はどうだ?」
「ともに生きる存在いだ」
「そうか。だが、どうだお前はやはり、バケモノ呼ばわりされているではないか?」
「わたくしを信じてくれる者もいる」
「何人いる」
「数の問題ではない」
「だが、有象無象の取るにたらない人間も、大量にいれば、力を得る。だから、公子はこの地をでて、野垂れ死んだのだ」
「貴様!!」
私はこぶしを握りしめ黒きモノがふんした女へ殴りかかった。
ヒラリと交わされたが、胴をめがけて、すかさず蹴りをはなつ。
雨の中、水しぶきを上げ、ドシュ、バシッと鈍い音が響き渡る。
体を入れ替えながら、リンダの上をとった。
女の腹めがけて渾身の拳を打ち込んだ。
ドーンという音とともに水しぶきと土砂が舞いあがった。
今が好機と一気呵成に攻撃をしようとした。
が、そこには女の『皮』しかなかった。
「フン!相変わらずのばか力め!あああ、どーしてくれるの。『リンダ』の皮は気に入っていたのに。破れて使えないじゃないの!」
雨が弱まりはじめた。
視界が開けた先に黒きモノが立っていた。
毛が黒いキツネだ。
人語を解する異様さもそうだが、尻尾が九つある。
それはヤツの背後にまがまがしい黒いオーラのように見えた。
ヤツは、カットとがった口元から光る球をこちらへとばした。
避ける間もなく、わたくしの頭上で、閃光がきらめき無数の打撃となり降り注いだ。
「ああああっ!」
「変化を解いて、本性を現せ!!白き妖狐よ!」
頭上で声がする。
この穴から出なければ、地の利でやられてしまう。
腕でクロスし頭上を防御しながら穴から飛び出した。
「待っていたぞ!!」馬鹿め!」
黒いキツネは、わたくしの背後に周り、羽交い絞めにされた。
たちまち失速し、地面に落ちても、黒いキツネはわたくしから離れなかった。
「肉弾戦は性に合わんが、まじかでお前がもがき苦しむ様を堪能できるのは愉快だ」
締めあげる腕に力が一層こめられた。
もがくことすらままならない。
意識が遠のき始めた。
「白き妖狐よ、この地に化け狐はわたしだけでよい。この地の人間を食い尽くす。分け合うには、すくないからな。わたしは、こう見えて大食漢なんだ。悪く思うなよ」
耳元の黒いキツネの声が遠くでしている。
その耳に、わたくしを呼ぶ声を聴いた気がした。
ありえるハズもない。
「ナナコさん!!!!!」
よい名です。
ホーリーさんがつけてくれた名は。
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