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わたしの永遠の故郷をさがして 第二部 第七十章


 女王ヘレナは、その後もビュリアの体内で生活してはいたが、しばらく表立って現れることはなかった。

 火星上のブリューリ化した人間の復元と、復元できないブリューリの処置法を、ダレルやリリカ(複写=精神)と協力して開発もしていた。

 ただ、実はそれだけではなかった。

 それだけではなかった、というよりも、それ以外の新しい事に、熱心に取り組んでいたのだった。

 彼女は、火星初の本格的な「宗教」の創設に熱意を燃やしていたのだ。

 火星の政治や運営そのものは、リリカ(本体=アンナ)とダレルに任せてしまって。


 もっともヘレナは、神様になるつもりなど、さらさらなかった。

 自分を信仰してもらう理由など、まったくないから。

 問題は、ヘレナ自身の内部にあったのである。



 一方、アバラジュラの本体は、一時期「青い絆」の本拠地で地球の探査を担当していたが、やがて記憶の操作をされたうえで、火星に戻されていた。

 ブル博士は、自分なりに何があったのか推測はしていたが、余計な事は言わないで、そのままアバラジュラを助手として使うことにしたようだった。

 実際アバラジュラには、それなりに都合のつく記憶があったことだし。

 ただし博士は、ほとんど信用はしていなかった。

 あれほど火星の未来を危惧していたアバラジュラが、なんとなく、むしろこのところ金星の未来の方が気になって仕方がないようだったから。


 その「青い絆」自身も、同じように、まもなく大きな選択を迫られることになる。

 「金星」か「火星」か、それとも「両方」か。



 ところで、ヘレナは大いに疑問に思っていたことがある。

「なんで、未来のわたくしは、不完全な薬のレシピをリリカ(精神)に渡したのかな? 付属の資料を見れば、恐らく問題の解決はもうしていたはずだ。肝心な事だけ、わざと資料から抜いているのだろう。どうして、過去の自分に、わざとそのような戯れをして見せるのか? 単なるいたずらか? いいやそうじゃやない。ふうん。わたくしには、やらなきゃならない事があるというわけか。単純な事だが。しかたがない、もうひとりのリリカさんに、お目にかかりに行きますか。」



 ***********     **********



 リリカ(複写)とダレルは、まずは、地球の衛星に向かっていた。

 地球は近い。

 アブラシオならすぐに着いてしまう。

 まあ、ちょっとした近場への出張程度だ。

 リリカ(複写)は、自室で少し休憩をしていた。

 アブラシオに頼んで、壁全面を窓にしてもらっている。

「まったく、色々ありました。これからも、まだ色々あるだろうな。遠い将来はどうなるのか。見てきた未来が必ず訪れるとは限らないと、女王様はおっしゃった。確かにそうでなければ、人生なんか意味が無くなるかもしれない。それは必ず当たる予言のようなものだ。大昔、火星が民主社会だったころには、予言者と言うものが、たくさん現れたという記録があった。しかし、確率の差異はあるものの、半分でも完全に当てた人はいなかった。けれども、彼らが見ていた未来が、この現実の未来だとも限らない。彼らは多数の未来の一端、あるいはその複合を見ただけで、真の未来を当てることは、事実上不可能なのかもしれない。未来は常に逃げてゆくのかもしれない。」

 そのとき、彼女の頭の中を、くまなく捜査して、しかしアッと言う間に、通り過ぎたものがいた。

 それは、ヘレナの、(ある)本体だったのだ。

 リリカ(複写=精神)はそのことには、全く気が付かなかった。

 にもかかわらず・・・ジャヌアン(アリム)の探知機は、それに反応した。

「来た!」

 ジャヌアン(アリム)は、それが何なのか確認しようとした。

「ううん。これは、まず、ただ者じゃない事だけは確かだな。小者か機械ならば、もっと反応は少ないはず。しかも形が違う。ブリューリではない。あきらかに女王だな。ふうん・・・どこにいる? どこから来た? くそ、さすがに周到に隠しているか。いやいや、私が気付かれたかな。ううむ・・・そこははっきりしないが。」



  **********  **********



 金星の王宮。

 ギャレラ行動隊長。つまりブリアニデスの弟は、まだ兄の話に聞き入っていた。

「すぐに火星を制圧するつもりなどはない。しかし、地球入植の邪魔をするなら、抗戦する。場合によっては、火星本体にもね。万が一そうなったら、戦ってくれるね?」

「可能性は高いと?」

「いや、そこは交渉だ。地球を全部くれなんて言ってはいない。残りの金星人が移住できればよいのだ。平和共存したってかまわない。」

「しかし、確認しますが、技術的には大丈夫なのですか?」

「ああ、大丈夫だ。この空中都市の技術は使える。地上の開発はゆっくりでよい。可能になったところから降りてゆけばよい。先の長い話だ。金星の未来はもうないが、地球ならたっぷりあるのだ。」

「ふむ。」

「それから、君たち「青い絆」だが・・・」

「ええ。」

「これまで良くビューナスに仕えてくれたが、これからは、このブリアニデスに従ってほしい。たしか、強力な魔女がいたな。」

「ビュリアですか。」

「ああ、そうだろう。ぜひ戦力になってほしいのだ。帰ったら、話をしてくれるか。」

「わかりました。」

「それから、お人よしの司令官は、更迭しよう。」

「え? アダモスを。それは、しかし・・・」

「当然なんだ。君が、トップでなければ意味がない。」

「いや、それは難しいのでは。本人もですが、カシャが言うことを聞くはずがない。」

「だから、魔女が必要なのだ。本人が不感応でも、周囲が結束すればどうにもならない。」

「反逆せよと。」

「まあ、そうだ。しかし、君は我が弟だ。きわめて正当な事だ。気にする必要などない。いいいかな。これは指令だと思ってほしい。」

「いや・・・わかりました。」

「そうだ、それでいいのだよ。弟よ。歴史はこれから始まる。終わりではないのだ。」


  **********   **********






















 
















**************************************


*いやああ、六十ですよ。六十。還暦です。信じられませんよね。


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