下野薬師寺の童子
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下野薬師寺の童子
宇都宮の巫女は、相変わらず部屋の奥に隠れるように過ごしていた。
宇都宮の豪族は、東山道を中心に北へ向けた動きに協力していた。
とはいえ、中央からの派遣がない限り、道の整備や延長を続けていた。
しかも、多賀城という拠点ができても、米を作る集落が自然に増えていっていた。
こうした豪族の動きとは別に、宇都宮の巫女は、日々の自然神への祈りを続けていた。
つまり都の力が神の力からズレてることを理解していた。
山岳信仰の中心になりつつある日光辺の縄文系の住民は密かに巫女に頼り、巫女の声を聞いていたのであった。
下野薬師寺がいつ出来たのか、分からないが、100年前に仏教が入り、僧侶の育成がされ始めていた。
豪族化した小山辺の族長の三男坊が12歳の頃から仏門に入り、童子として長い修行をしていた若者が20歳になり、宇都宮の巫女の所に来ていた。
「巫女様、仏門の修行は私には合いません」
童子は、素朴に巫女に伺いを立てた。それに巫女は答えた。
「仏門の教えは、人の生き方の理屈でしかないからだと思うぞ、山の神々は寛容なのじゃ」
童子は、巫女の言葉の理解できなかったが、仏教という新たな考えより深いものを感じていた。
「どうすれば良いのでしょうか?」
童子には、そう聞くしか無かった。
「そうじゃのぉ、童子よ。日光の山奥に湖があるのだが、そこに新たな祠が出来ておる。行ってくれないか?」
童子は、山奥に何があるのか、好奇心が湧いた。
「はい、おっしゃる通りに」
巫女は、童子に鳩を与え、山へ向かうことを指示した。
「その鳩は、我の心が宿ってる山に入り人にあった時に私の代理で来たことを告げてくれる」
童子は、大きく頷き、山に向かった。
宇都宮の巫女の櫓は、微高地にあった。
いくつかの小屋を通り抜けると田んぼが広がっていた。
しばらく歩くと、突然、切り立った灰白色の岩壁にぶつかり、横を山登りした。
森のような、しかし獣道のように山の道があった。
道沿いに登ると、開けた田んぼが見えてきた。
山の上にこんな所があるのかと童子は思い、その先にあった集落に入った。
集落に入ると、肩に巫女から預かった鳩が止まった。
見慣れない男が入ってきたので、集落の長が、童子に聞いた。
「お前は、宇都宮の巫女様の使いか?」
童子は、肩の鳩を見て皆が聞いたのを見て納得した。
「はい、巫女様の所にいる童子です。よろしくお願いします」
皆は、ホッとした顔になり、童子を迎えた。
大きな小屋に彼らは連れて入った。
もう日が傾きかけていた。
小屋の中には、焚き火が焚かれていて屋根からぶら下がった鍋を火で温めていた。
小屋の床には獣の毛皮が置いてあり、暖かった。
「今夜は、ここで飯を食べて、明日、山の上の泉に連れて行く」
童子は、ありがとうと礼を言って、どぶろくのような酒をもらった。
「うむ、これは上手いな、少
しドロドロしてるがなんだこれは?」
周りにいた皆が、笑って、それは酒だよと教えてくれた。
この集落は弥生化した宇都宮の小屋とは違うなと思った。
新たな事が分かる希望をもった。
遅くまで飲んで、食べて夜を過ごした。
ウォーっという獣の声が聞こえた。
焚き火の薪がバキッと割れた。




