第6話
どこからどう見ても町娘だ。誰も私が王子妃だとは思うまい。
今日は、町娘に扮して王都を見て回る。従者は1人だけ、同様に町人に変装させていた。
やはり国民の生の声を聞きたい。王政についてどう思っているのか知りたいのだ。
まずは、酒場に入る。まだ昼だが、酒を飲んでいる常連客がいた。彼らの話に聞き耳を立てる。
「ヘンリー王が病で倒れて、今実権を握っているのはバカ息子のギュスターヴだそうだ」
さっそくバカ王子の話題が聞こえてきた。ジッと耳を澄ませる。
「あのバカ王子、豪華な別荘を建てようとしたが、反対にあって中止になったらしい。銅像も建てようとしたが、同じく反対されて中止になったそうだ」
「ほう。王子の意見に反対する骨のあるやつもいるんだな。誰だいそれは?」
「結婚したばかりの王子妃エミリーさ。彼女が、ギュスターヴ王子の無駄使いをやめさせているらしい」
王子から私の話題になった。ドキドキしながら話を聞く。
「エミリーといえば、聖女アイリスから王子を寝取った悪女だろう? とんでもない女だと聞いてるぜ。派手なパーティーが好きで、いつも贅沢してるって」
「それがそうでもないらしい。王子妃になってから無駄使いはせず、質素な暮らしをしているそうだ」
「ほう、それはいいことだな。王族にしちゃあ、まともなやつだ」
なかなか悪くない評判だ。バカ王子の無駄使いをやめさせているのが、さっそく噂になっているらしい。
「だが、王子妃エミリーよりも今はなんといっても聖女アイリス様だろう」
ん? 急に話が変わった。聖女アイリスだと。
「ああ、辺境伯シグフレイと結婚したらしいな」
「聖女アイリス様は、辺境の地で聖女の力を使い魔物の群れを退けたらしい。すごい活躍だそうだ」
「偽物の聖女だから王都を追放されたんじゃなかったのか?」
「いや、それがやはり本物の聖女だったらしい。皮肉なものだよな。辺境に追放されたことによって、聖女の力が本物だと証明されたんだから」
王都には魔物がいないから、アイリスは力を使う必要が無かった。魔物がいる辺境の地で初めて聖女の力が示されたのだ。
「辺境の地は、辺境伯シグフレイと聖女アイリスが治めているんだが、見事な政治の手腕らしい。領民のために税を軽くしたり、貧しい領民には救いの手を差し伸べているそうだ。うらやましいねえ、まったく」
「こっちのバカ王子と王子妃にも見習ってもらいたいもんだな」
恐るべきは、シグフレイとアイリス。彼らの評判の良さは王都まで伝わっている。
それに対して、こちらの評判は、バカ王子の無駄使いをやめさせてたことだけ。
つまり、マイナスをゼロに戻しただけで、プラスにはなっていないのだ。
「王都も辺境伯シグフレイ様に治めてもらった方が良くなるんじゃないのか」
「それは違いねえ」
辺境伯の人気が高い。まだクーデターの危険がつきまとう。
背後に黒服の男がサッと現れる。ささやくように言った。
「辺境伯シグフレイと聖女アイリス。2人とも暗殺しますか? ア・ン・サ・ツ♡」
黒服の男をキッと睨んだ。
「しないわよ。まだまだ戦いはこれからよ!」
こちらも何か良い政策を行なって、人気を上げなくてはならない。
女性読者向けに書いているつもりです。
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