第5話
今日は、国政についての会議がある。王子と共に出席した。広い会議室には、大臣や将軍、騎士団長など錚々たるメンバーが揃っていた。
筆頭大臣が、会議の司会を務めた。
「では、会議を始めます。まずは、ギュスターヴ殿下発案の新たな別荘の建設計画についてですが……」
王子ギュスターヴは、満足そうに頷いた。
「皆も知ってのとおり、僕はエミリーを妻に迎えた。妻のためにも新しい別荘を建てたいと思うのだ。もちろん豪華な別荘をだ」
会議に参加している皆が渋い顔をする。誰もが無駄使いであることに気づいているが、王子に指摘する勇気はないようだ。
「反対意見はないな? では、別荘の建設工事をさっそく始めよう」
「お待ちください、ギュスターヴ王子」
私は声を上げた。皆が一斉に注目する。
「王子は、私のために別荘を建てようとしてらっしゃるのよね?」
「そうだ。君のための別荘だ。新しい別荘が欲しいだろ? 豪華な別荘が」
「ありがとうございます、王子。でも、私は別荘はいりません」
「えッ? どうしてだい、エミリー?」
「私は王子と一緒にいられれば、どこでも幸せです。ですから、わざわざ別荘を建てる必要はありませんわ。ここで王子と一緒に暮らせるだけで、エミリーは幸せ者にございます」
王子は、満面の笑みを浮かべた。
「おお、エミリー。君はなんて可愛い子なんだ。分かった。別荘の建設は中止しよう」
よし。無駄な別荘の建設を阻止できた。この調子で無駄な出費を抑えよう。
「では、次の議題はギュスターヴ殿下発案の銅像の建設についてですが……」
「うむ。大きくて立派な僕の銅像を建てたい。有名なデザイナーに依頼したいと思う。金はいくらかかってもいい」
「お待ちください、王子」
またしても私は声を上げる。皆の注目を集めると発言した。
「恐れながら申し上げます。ギュスターヴ王子の有り余る魅力を表現できるデザイナーは、この世に存在しません。銅像なんかで再現できる存在ではないからです。逆に不敬です。ギュスターヴ様の偉大なる功績は皆の心の中に刻まれるべきなのです」
「そうか? じゃあ、銅像の建設も中止にしようか……」
当たり前だバカ王子! お前の銅像なんて建てても何の役にも立たんわ!
こうして、ギュスターヴ王子が発案する無駄な出費をことごとく中止させた。
まずは、無駄な出費を抑える。そして、質素な暮らしをして国民の反感を買わない。それこそが、辺境伯のクーデターを防ぐ道なのだ。
「なんか、僕の発案は通らないし、面白くないな。飽きてきた」
ギュスターヴ王子が子供みたいなことを言う。私は、王子ににこやかに微笑みかけた。
「王子、少し休憩になさったらいかがですか? 後の会議は、私がやっておきますから。お任せください」
「そうだな。後は、エミリーに任せよう。僕はちょっと休んでくるよ」
そう言って会議室を去って行く王子。私は立ち上がって声を上げる。
「皆、聞いてのとおりよ! 私は、ギュスターヴ殿下から全ての権限の委任を受けたわ。私の言うことは、王子の意思だと思いなさい!」
静まり返った会議室。誰も反論を述べるものはいなかった。
「じゃあ、会議を続けるわ。今月の出費についてから話し合いましょう。財務大臣、説明しなさい」
こうして、私が主導で会議を進めていく。無駄な支出を削減するように次々と指示していった。




