第16話
何で? 何でそうなるのよ!?
一万の軍勢を率いるギュスターヴ王子は高らかに言い放った。
「これより、逆賊シグフレイを討伐する!」
辺境の地の魔物を討伐するという当初の目的は、辺境伯を討伐することに変わってしまった。
辺境伯シグフレイとの交渉は、こじれにこじれてしまったのだ。もはや、誰も王子を止められなかった。
王子の率いる軍勢は、辺境伯の城へ向かって出撃した。私も副官として参陣している。
王子を止められなかった以上、もう仕方がない。こうなったら、辺境伯シグフレイを滅ぼすしか道は無いのだ。
そして、ついに戦いは始まった。王子率いる一万の軍勢に対し、辺境伯の軍勢は五千。数は明らかにこちらの方が上だ。
「行くぞ! 突撃ィーッ!」
王子が先頭を切って駆ける。兵士たちも後に続いた。兵士たちの士気は高い。
「あれは? 辺境伯シグフレイだ!」
「こっちに向かって突っ込んで来るぞ!」
「王子を守れ!」
黒い鎧の騎士が王子に向かって突っ込んで来る。辺境伯シグフレイだ。単騎で突撃して来たのだ。
「ここは、私にお任せを」
アランがシグフレイの前に立ち塞がる。一騎打ちが始まった。両者の腕は、ほぼ互角だ。激しく剣を打ち鳴らしている。
「もらった! 死ね、シグフレイ!」
アランが一瞬の隙をついた。シグフレイの肩に斬りかかる。しかし、剣はそこで止まる。
「甘いな。肉を切らせて何とやらだ!」
シグフレイの剣がアランの胴体をつらぬいた。アランが馬から崩れ落ちていく。
「アランーッ!」
王子が駆けよって来た。手負いのシグフレイと王子の対決が始まった。
「よくもアランを殺ってくれたな! シグフレイ!」
「ギュスターヴ殿下、あなたに国を治める資質は無い!」
「黙れ! 辺境伯の分際で!」
本来なら、剣の腕前は王子よりシグフレイの方が数段上である。しかし、アランがつけた傷が思ったより深く、シグフレイの動きは鈍っていた。
「王子を守れーッ!」
さらに周りにいた兵士たちが王子に加勢する。こうなってはシグフレイも太刀打ちできない。
シグフレイは、馬から引きずり下ろされ捕らえられた。
「逆賊シグフレイを捕らえたぞーッ!」
「我々の勝利だーッ!」
こうして戦いは終わった。シグフレイは捕らえられ、彼の軍勢は降伏した。
そして、シグフレイの城を占領し、シグフレイの妻である聖女アイリスも捕らえた。
「逆賊シグフレイとその妻アイリス。二人を処刑する!」
王子が高らかに言い放つ。私は、慌てて止めた。
「王子、お待ちください! 二人の命はどうかお助けください。彼らに罪はありません」
「ダメだ。エミリー。君の願いでもそれは叶えられない。二人は明日、処刑する」
王子を止められなかった。その夜、自室に戻るとバルコニーに出た。手を2回打ち鳴らす。
「お呼びでしょうか? エミリー様」
黒服の男がサッと現れてひざまずいた。
「命令するわ。王子ギュスターヴを暗殺しなさい」
「はッ! かしこまりました」
次の日、王子の死体が部屋から見つかった。
王子に代わって、私が国政での全権限を握ることになった。辺境伯シグフレイと聖女アイリスを解放し、その罪を許した。
王座に掛けて、ひとりつぶやく。
「もう…… 最後までバカな王子……」
その後は、質素に暮らしたのだった。
〜fin〜
最後は、駆け足ですみません。
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