第15話
魔物の鋭い爪が王子を襲う。王子は、なんとか魔物の攻撃を避けた。
「お願い! アラン! 王子を助けて!」
懇願するが、アランはゆったりとしている。
「エミリー様。王子なら大丈夫です。ご安心ください」
「何が大丈夫なのよ!? 王子がやられちゃう! 早く!」
さらに襲いかかる魔物たち。しかし、王子はその攻撃を軽々と避けて見せた。
「見える。魔物の攻撃が見えるぞ。稽古の時のアランの動きに比べたら、まるでスローモーションだ」
王子は魔物の攻撃をかわすと反撃に転じた。剣を振って斬りかかる。
「喰らえッ!」
魔物の額に斬りつけた。
「ギャオオオオーン!」
魔物は断末魔の叫びを上げて倒れる。周りにいた兵士たちが歓声を上げる。
「おお! 王子殿下が魔物を仕留めたぞ!」
「お見事です! 王子!」
信じられない光景だ。あれがあのダメ王子なのか?
「信じられないわ。王子がこんなに強くなっていたなんて」
隣にいたアランがにこやかに微笑む。
「稽古の成果でございます。実戦的な訓練が王子を強くしたのです。もはや並みの魔物なら王子には敵いますまい」
王子は、次々に魔物を打ち倒していく。そして、調子に乗って声を上げた。
「よーし! 皆のもの、僕に続けーッ!」
王子自らが先頭に立ち魔物と戦う姿は、兵士の士気を最大限に引き上げた。
王子と兵士たちは次々と魔物を倒していく。アランがぼそりとつぶやいた。
「勝ちましたな」
間もなく王子たちは、全ての魔物を打ち倒し、戦いに勝利したのだった。
「勝ったぞーッ!」
「ギュスターヴ王子殿下、万歳ーッ!」
この戦いを経て、王子の評判は大きく変わった。まずは、一緒に戦った兵士たちの評判が大きく上がる。
「ギュスターヴ王子は勇敢に戦ってたよ。後ろで命令するだけの指揮官とは違う。あの方こそ本物の将だね」
そして、その魔物との戦いの話は、瞬く間に国民に広がった。
「ギュスターヴ様は、口ばかりのダメ王子と思っていたが、そんなことはなかったよ。戦いの時は、勇敢に戦う頼りなるお方だ」
これはあれだ。普段は評判の悪い不良が、ちょっと良いことをすると好感度が上がるあれに似ている。
ともかく、私の狙いどおりにはなったのだ。ダメ王子を鍛えて国民の評判を上げる、当初の目的は達成されたのだ。
ただ、ひとつ問題があった。
「エミリー。聞いてくれ。僕は、辺境の地に兵を出そうと思う。もっと魔物と戦いたいんだ」
それは、王子が完全に調子に乗ってしまったことだ。豚もおだてりゃ木に登るというが、空を飛んで行きそうな勢いだ。
「それはおやめください、王子。辺境の地の管轄は、あくまで辺境伯。我々が手出しをすべきではありません」
「こないだは、援軍を出したじゃないか?」
「あれは、魔物の大量発生という不測の事態だからです。辺境伯に求められて援軍を出したに過ぎません」
王子は聞く耳を持たないといった強い態度に出る。
「とにかく、僕は決めたぞ! 辺境の地に兵を出す。辺境伯には任せておけない。僕が魔物を倒すんだ!」
これは内紛になりかねない。危険な状態だ。
次回は、再び辺境の地へ?
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