第14話
ある日の午後、王子と私の元に、ガルベス将軍が報告にやって来た。
「申し上げます。王都の北の地に、魔物の群れが現れました。いかがいたしましょう?」
王子は、神妙な面持ちになる。
「辺境の地でもないのに魔物が現れるとは。めずらしいこともあるもんだな」
「大した数ではありませんので、1000人の兵で討伐できるでしょう」
「よし。ガルベス将軍。魔物の討伐を命じる。退治して参れ」
王子がガルベス将軍に命じたその時、私は慌てて声を上げた。
「お待ちください、王子。今回の魔物の討伐は、王子自ら指揮をお執りください!」
「ええーッ!? 僕が指揮を?」
露骨に嫌そうな顔をする王子。このバカ王子め!
これは、王子の評判を上げるまたとない機会なのだ。この日のために、厳しい剣の稽古をさせてきたといってもいい。ここで、王子に魔物を討伐させ、国民の評判を上げねばならない。
「はい、王子。日頃の鍛練の成果を今こそ見せる時です」
「いや、本物の魔物と戦うのは、さすがにちょっと……」
「ちょっと何ですか? いいですか。王子は前線で指揮を執るだけでいいのです。戦うのは兵士に任せればいいわ」
「分かったよ。エミリー。君が、そこまで言うならやってみるよ」
王子が重い腰をようやく上げた。ガルベス将軍に向かって命令する。
「討伐部隊をただちに編成しなさい。指揮を執るのは王子よ。私も副官としてサポートするわ」
「はッ! 承知しました」
翌日、北の地に向けて魔物討伐軍が出撃する。兵士の数は、およそ1,000名だ。
「行くぞ!」
馬上から王子が号令をかけると兵士たちは歩き出した。鎧姿の王子も、馬子にも衣装といった感じで、なかなか様になっている。
私とアランも馬に乗って王子に続いた。ガルベス将軍は、今回は留守番だ。
出撃した次の日、魔物の群れと対峙した。
「よし! 全軍突撃ィーッ!」
王子が叫びながら突撃の合図を送る。兵士たちは魔物に向かって走り出した。
「うむ。後は、後ろから見とけばいいだけだな」
ぼーっとしている王子に声をかける。
「何してるんですか! 王子! 最前線まで行きますよ!」
「冗談だろ? 最前線に出たら危ないじゃないか!」
「指揮官が前に出なくてどうするのです! ほら、行きますよ!」
そう言って王子を無理矢理、最前線まで連れて行った。最前線では魔物と兵士たちが激しい戦いを繰り広げていた。王子はオロオロしている。
その時、魔物の一団がこちらに向かって突撃して来た。ものすごい勢いだ。
「いかん! そっちに行ったぞ!」
「王子様と王子妃様を守れ!」
口々に叫ぶ兵士たち。しかし、魔物の一団は兵士たちを跳ね飛ばしながら、こちらにまっすぐ向かってくる。
私の前にアランが立って、剣をかまえる。
「エミリー様。私がお守りいたします。後ろへお下がりください」
「私はいいから、王子を守りなさい! アラン!」
アランは、こちらを振り返ると首を横に振った。
「申し訳ありません。あなたをお守りします。エミリー様」
アランは、その場から動かない。フリーになった王子の元に魔物たちが迫る。
「逃げてーッ! 王子ィーッ!」
力いっぱい叫んだ。鋭い牙と爪を持った魔物たちが王子のほぼ眼前にまで迫っていた。
嫌よ! 逃げて! バカ王子!
続きが気になる方、ブクマや評価をお願いします。
感想もお待ちしております。




