第13話
翌日の朝、さっそく王子の剣の稽古の様子を見に行く。中庭には指導役のアランがひとりで立っていた。王子の姿は見えない。
「ご苦労様です。アラン」
声をかけると、アランはこちらに気づき、慌ててひざまずいた。
「おはようございます! 王子妃様」
「エミリーでいいわ。ギュスターヴ王子はどちらに?」
「はッ! エミリー様。王子殿下は、その⋯⋯ 休憩に行かれまして……」
「休憩? 何を言ってるの? 稽古は、まだ始まったばかりでしょう? 何サボってるのよ! あのバカ王子!」
手を2回打ち鳴らす。背後にサッと黒服の男が現れた。
「お呼びでしょうか? エミリー様」
「王子を捕まえて来なさい。すぐに、ここに連れて来るのよ!」
「はッ! 承知しました」
黒服の男は、サッと姿を消した。アランの方へ向き直る。
「アラン。私が何故、あなたを王子の指導役に任命したかお分かり?」
「いえ。私は下級騎士ですし、本来ならばこのような大役は恐れおおいことです」
「そうよ。下級騎士だから任命したの。王子ではなく、私があなたを取り立てたのよ。だから、王子のためではなく、私のために働きなさい。王子が何を言おうと気にしなくていいわ。私の言うことに従うのよ! 分かった?」
アランは慌てて顔を伏せた。
「はッ! エミリー様の仰せのままに!」
それから、しばらくして黒服の男が王子を連行して来た。王子は「離せ! 僕を誰だと思ってるんだ!」と叫んでいるが、黒服の男は知らんぷりをしている。
黒服の男は、私の専属の隠密だ。相手が王子でも容赦はしない。
「さあ、王子。剣の稽古を再会しましょう。アラン! 殺す気でやりなさい!」
「はッ! エミリー様の仰せのとおり」
剣の稽古が始まった。アランが木剣を振るう。王子は受けとめ切れず、木剣が脇腹に突き刺さる。
「げほ!」と王子が声を漏らす。
「まだまだよ。アラン! 手加減するんじゃないわよ!」
稽古というより一方的な展開となった。もはや、王子は生きたサンドバッグである。アランが次々と剣を打ち込んでいく。
「ぐほ!」
「まだまだよ。アラン! 徹底的にやりなさい!」
「はッ! エミリー様」
これで、アランは王子ではなく、私に忠誠を誓う部下となった。
王子は、ボロ雑巾のように地面に倒れている。
「このくらいでいいわ。王子。もうサボったりしたらダメよ。アラン。今後も厳しく指導するのよ。少々手荒なまねをしてもかまわないわ」
「分かりました。エミリー様。厳しく指導いたします」
それから、王子の性根を叩き直すべく、地獄の特訓が始まった。
アランは、相手が王子でも忖度することなく厳しく指導する。王子が口答えをしようものなら、木剣で叩きつけた。
厳しい指導の甲斐があってか、王子の剣の腕も徐々に上がってきた。
また、厳しいパワハラに耐えたためか根性もついてきたように思える。
「くそ。僕は王子なのに……」
王子の目つきは、以前とは変わって鋭いものとなった。
気のせいか、性格も荒んできたような気がするが。
だが、ポンコツ王子改造計画はまだまだ始まったばかりなのだ。
ブクマや評価、感想をいただけると作者が泣いて喜びます。




